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都からの通達
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「ここには豊かな鉄が埋まっていそうですね」
山の中を流れる川の砂を見ていた呉羽は言った。
科野の国を豊かにするため、力寿丸との生活を少しでも良くするために山の中からとれる物を見つけようとしていた。
クマやイノシシなどの獲物も多かったが、鉱物や植物も豊富にあり種類も多く、都に持って行けば高く売れる物もあった。
それらを少しでも見つけようと呉羽は山の中に入った。
「珍しいな」
その様子を見ていた力寿丸が呟いた。
「何がですか?」
「普通、姫君というのは屋敷の中にこもっているかと思ったんだが、外に積極的に出てくるなんて」
「あははっ、昔の姫君はそうかもしれませんが、外に出て行く方々もいますよ。虫好きで日がな一日虫を観察される方もいます」
「奇特だな」
「でも物をよく知っていて、いろいろなことを教えてくれますよ」
呉羽はそう言うとひょいと岩を上って向こう側へ行く。
姿が見えなくなるのを心配した力寿丸も追いかけて、跳躍し岩の上に上る。
「うーん、この下に何かありそうですね」
すると呉羽が大岩の下をのぞき込んでいた。
力寿丸自身が担ぎ上げるには少し骨の折れる大岩だった。
「どれ、除けてみようか」
しかし、呉羽の前で良いところを見せようと岩を覗くことを言いだした。
「一寸どけましょう」
だが、呉羽は力寿丸の言葉を聞き逃し、近くにあった大きな流木を手にすると大岩の下に突っ込み石をてまえに置くと流木の端を持って力を込めた。
「よいしょ」
流木に押し上げられた大岩は転がり、川の方へ転がっていった。
「……以外と力持ちなんだな」
呉羽が事もなげに自分自身さえ手こずる大岩を動かす様子を見て力寿丸は戦慄した。
「いえ梃子の原理を利用して動かしただけです。誰でも何倍もの力を出せます」
「そうなのか?」
「はい、力寿丸さまでしたら私の何倍、何十倍もの大きな岩を動かすことが出来るでしょう」
嬉しそうに呉羽が言ったとき、国府から国司がやってきた。
「呉羽様!」
山道を駆け抜けて来た国司は息を荒らげながら、手紙を持って伝えた。
「都より通達があります」
「この水無瀬の周辺に都を移す?」
国司を連れて力寿丸の洞穴に行くと都からの通達を伝えられ、呉羽は驚いた。
「どうして、此処が都に」
「占いの結果、ここが都に最適という結果が出ました。ここは今の都から鬼門の位置に辺り、国の中心を守護する重要な場所。また風水がよく、四方を山に囲まれ川が流れ気の循環が良いので、都が栄える条件に当てはまると」
「そんな、大陸の風水をそのまま使うなんて」
大陸の風水では北東を鬼門としているが、これは北東の騎馬民族が襲来して来た時、北東に玄関を配置すると危険だという経験から伝えられている。
そのような脅威の無いこの国で、当てはめるのは愚かしい。
「このような山の中に都を作るなど無謀です。人々を収容できませんし、物資も調達できません」
「しかし、都からの通達で」
「立ち退けと」
それまで黙っていた力寿丸が、国司に尋ねた。
「は、はい……」
「一度ならず二度までも追い出そうとするのか」
国府周辺が縄張りであったことを認められ、補償を受け、国府に屋敷を与えられた力寿丸だったが、山の中の生活が性に合っていた。
呉羽に屋敷を渡したが力寿丸の元を離れたくないと付いてきた。
そこを追い払われるのは、腹に据えかねた。
「この山には他にも住んでいる者達、お前達の言う化け物や化外がいるが、彼らも立ち退けと」
「は、はい」
「断じて立ち退かないぞ」
国司の返答に力寿丸は強い口調で拒絶した。
「ならば腕ずくでも行います」
「おう、良いだろう。相手になってやる」
山の中を流れる川の砂を見ていた呉羽は言った。
科野の国を豊かにするため、力寿丸との生活を少しでも良くするために山の中からとれる物を見つけようとしていた。
クマやイノシシなどの獲物も多かったが、鉱物や植物も豊富にあり種類も多く、都に持って行けば高く売れる物もあった。
それらを少しでも見つけようと呉羽は山の中に入った。
「珍しいな」
その様子を見ていた力寿丸が呟いた。
「何がですか?」
「普通、姫君というのは屋敷の中にこもっているかと思ったんだが、外に積極的に出てくるなんて」
「あははっ、昔の姫君はそうかもしれませんが、外に出て行く方々もいますよ。虫好きで日がな一日虫を観察される方もいます」
「奇特だな」
「でも物をよく知っていて、いろいろなことを教えてくれますよ」
呉羽はそう言うとひょいと岩を上って向こう側へ行く。
姿が見えなくなるのを心配した力寿丸も追いかけて、跳躍し岩の上に上る。
「うーん、この下に何かありそうですね」
すると呉羽が大岩の下をのぞき込んでいた。
力寿丸自身が担ぎ上げるには少し骨の折れる大岩だった。
「どれ、除けてみようか」
しかし、呉羽の前で良いところを見せようと岩を覗くことを言いだした。
「一寸どけましょう」
だが、呉羽は力寿丸の言葉を聞き逃し、近くにあった大きな流木を手にすると大岩の下に突っ込み石をてまえに置くと流木の端を持って力を込めた。
「よいしょ」
流木に押し上げられた大岩は転がり、川の方へ転がっていった。
「……以外と力持ちなんだな」
呉羽が事もなげに自分自身さえ手こずる大岩を動かす様子を見て力寿丸は戦慄した。
「いえ梃子の原理を利用して動かしただけです。誰でも何倍もの力を出せます」
「そうなのか?」
「はい、力寿丸さまでしたら私の何倍、何十倍もの大きな岩を動かすことが出来るでしょう」
嬉しそうに呉羽が言ったとき、国府から国司がやってきた。
「呉羽様!」
山道を駆け抜けて来た国司は息を荒らげながら、手紙を持って伝えた。
「都より通達があります」
「この水無瀬の周辺に都を移す?」
国司を連れて力寿丸の洞穴に行くと都からの通達を伝えられ、呉羽は驚いた。
「どうして、此処が都に」
「占いの結果、ここが都に最適という結果が出ました。ここは今の都から鬼門の位置に辺り、国の中心を守護する重要な場所。また風水がよく、四方を山に囲まれ川が流れ気の循環が良いので、都が栄える条件に当てはまると」
「そんな、大陸の風水をそのまま使うなんて」
大陸の風水では北東を鬼門としているが、これは北東の騎馬民族が襲来して来た時、北東に玄関を配置すると危険だという経験から伝えられている。
そのような脅威の無いこの国で、当てはめるのは愚かしい。
「このような山の中に都を作るなど無謀です。人々を収容できませんし、物資も調達できません」
「しかし、都からの通達で」
「立ち退けと」
それまで黙っていた力寿丸が、国司に尋ねた。
「は、はい……」
「一度ならず二度までも追い出そうとするのか」
国府周辺が縄張りであったことを認められ、補償を受け、国府に屋敷を与えられた力寿丸だったが、山の中の生活が性に合っていた。
呉羽に屋敷を渡したが力寿丸の元を離れたくないと付いてきた。
そこを追い払われるのは、腹に据えかねた。
「この山には他にも住んでいる者達、お前達の言う化け物や化外がいるが、彼らも立ち退けと」
「は、はい」
「断じて立ち退かないぞ」
国司の返答に力寿丸は強い口調で拒絶した。
「ならば腕ずくでも行います」
「おう、良いだろう。相手になってやる」
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