男の子になる方法

廣瀬純七

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「くっ……恵理、面白すぎる。じゃあ、俺のこともそう思ってた時期があるの?」

「達也くんと会ったのは大学に入ってからだから、さすがにそれはないけど……」

恵理はいたずらっぽく目を細めて、達也の顔をじっと見つめました。

「でも、今の話を聞いた後だと、達也くんも実はお母さんの言うことをすっごくよく聞く、いい子だったんじゃないかなって思えてきちゃった」

「やめてよ、俺は生まれた時から男だって!」

「あはは、お兄ちゃんと同じこと言ってる! ほら、やっぱり恥ずかしいんだ?」「違うってば!」

二人の楽しそうな笑い声が、午後のカフェに明るく響き渡りました。恵理の家族の、少し風変わりで温かい嘘は、今では二人の大切な笑い話の一つになったようです。

達也は笑いすぎて涙を拭いながら、ふと疑問を口にしました。

「でもさ、恵理。お母さんのその理論だと、世の中の男の人はみんな『元・女の子』ってことになっちゃうよね? 逆に、ずっと言うことを聞き続けた女の子はどうなるって言ってたの?」

恵理は待ってましたと言わんばかりに、人差し指を立てました。

「それも聞いた! お母さん曰く、『女の子がさらに言うことを聞き続けると、お姫様になれるのよ』だって。でも、私はお兄ちゃんたちみたいに何かが生えてくる方が、魔法っぽくてカッコいいと思ってたから、『お姫様なんていらない! おちんちんがいい!』って泣いて抗議したらしいよ」

「ははは! 最高の子供だな、恵理は」

「でしょ? そしたらお母さん、困った顔して『恵理はわがままだから、お姫様も無理そうねぇ』って溜息ついてたんだって。ひどくない?」

二人がそんな話で盛り上がっていると、恵理のスマホが震えました。画面を見ると、長男の「直貴」からのLINEです。

「あ、噂をすればお兄ちゃんからだ。……ぷっ、見てこれ」

恵理が差し出した画面には、実家のリビングでくつろぐお兄さんの写真と、その横で「女の子用のフリフリのエプロン」を無理やり当てられているお兄さんの姿、そしてお母さんの楽しそうな笑顔が写っていました。

メッセージには一言、『助けてくれ。母さんがまた「直子ちゃんに戻りなさい」ってうるさい』と入っています。

「お兄さん、今でも戦ってるんだね……」達也は同情を禁じ得ませんでしたが、写真はあまりにもシュールでした。
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