入れ替わりのモニター

廣瀬純七

文字の大きさ
27 / 32

園児からのプロポーズ

しおりを挟む
昼下がりの保育園。お昼ごはんを食べ終えた園児たちは、お昼寝の時間に入るころだった。  
しかし、一人だけ元気いっぱいに飛び回る男の子がいた。  

「ユウキ、もうお昼寝の時間だよ」  

沙織の体の拓也が優しく声をかけるが、ユウキは腕を組んで「俺は寝ない!」と頑なな表情を見せた。  

(はぁ……またか)  

ユウキはこのクラスでも特にやんちゃな園児で、元気があり余っている。  
みんなが布団に入っても、一人だけじっとしていられないのだ。  

「ユウキ、お昼寝しないと午後から元気に遊べないよ?」  

「いいもん! 俺、沙織先生と結婚するから、昼寝なんてしない!」  

「……え?」  

予想外の言葉に、沙織の体の拓也は思わず固まる。  
ユウキは得意げな顔で胸を張り、「だから俺、大人になったら沙織先生と結婚するんだ!」と繰り返した。  

「えーっと……それはまた急な話だね?」  

「だって、沙織先生、かわいいもん!」  

(くっ……まさかこんな形で求婚されるとは)  

困惑しつつも、園児の純粋な気持ちを無下にするわけにはいかない。  
沙織の体の拓也は優しく微笑んで、しゃがみこんだ。  

「ありがとう。でも、結婚はもう少し大きくなってから考えようね?」  

「じゃあ、俺が大きくなったら結婚してくれる?」  

「そのときユウキが立派な大人になってたら……うーん、考えてもいいよ?」  

適当に流そうとしたが、ユウキは満面の笑みで「やったー!」と大喜び。  

(こ、これはどう収拾をつければいいんだ……)  

とりあえず、お昼寝をさせなければならない。  

「それじゃあ、元気に大きくなるために、まずはちゃんと寝ようね!」  

「……じゃあ、沙織先生がトントンしてくれたら寝る!」  

「はいはい、わかったよ」  

布団に入ったユウキの背中を優しくトントンすると、数分もしないうちに寝息を立て始めた。  

(ふぅ……)  

やっと静かになった教室を見渡しながら、沙織の体の拓也は苦笑した。  

(俺、今プロポーズされたよな……しかも園児に)  

子どもの素直な言葉に、思わず頬が緩んでしまうのだった。  

—— 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リアルメイドドール

廣瀬純七
SF
リアルなメイドドールが届いた西山健太の不思議な共同生活の話

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

恋愛リベンジャーズ

廣瀬純七
SF
過去に戻って恋愛をやり直そうとした男が恋愛する相手の女性になってしまった物語

未来への転送

廣瀬純七
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

高校生とUFO

廣瀬純七
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

処理中です...