美咲の初体験

廣瀬純七

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ビキニの初体験

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「マジで行くのか……?」

拓也は鏡の前に立ち、自分――つまり美咲の体を見つめながら、深いため息をついた。彼は今、美咲の体に入っているが、今日は彼女の女友達と一緒にプールに行くことになっていた。事情を知っている美咲は、「せっかくだから楽しんで」と言ったが、彼としては楽しめる気が全くしなかった。

目の前に広がるのは、色鮮やかなビキニ。美咲の体に合うように選ばれた水着だったが、それを自分で着ることになるとは思いもよらなかった。

「これ……俺が着るのか……?」

躊躇しながらも、仕方なく拓也はビキニに手を伸ばした。慣れない手つきでなんとか着用し、鏡に映る姿を確認する。そこにはスレンダーな女性――美咲の姿が、ビキニを身にまとって立っていた。

「……うーん」

まったく落ち着かない。自分の中身は男性なのに、外見は完全に女性だ。しかも、こんな肌を露出する格好でプールに行くなんて、今まで経験したことがなかった。

仕方なく準備を終えた拓也は、集合場所のプールへ向かうことにした。プールサイドに着くと、すでに美咲の女友達が待っていた。彼女たちは笑顔で「美咲」に――つまり、拓也に手を振っている。

「美咲、こっちこっち!」

「お待たせ~」と、なるべく自然に振る舞おうとするが、心の中は焦りでいっぱいだ。女友達は何の疑いもなく、彼を「美咲」として接してくる。その様子が妙に不安をかきたてた。

「似合ってるじゃん、その水着!やっぱり美咲はスタイルいいよね~」

友達が褒めてくれるが、拓也としてはむしろ複雑な気持ちだった。だが、ここで不自然に振る舞うわけにもいかず、ぎこちなく笑って返す。

「ありがと……ね」

女友達たちはお互いにワイワイと話しながらプールに向かっていく。拓也もそれに続くが、どうにも水着姿で周囲の視線を感じるのが恥ずかしく、背中がそわそわして落ち着かない。

「美咲、早く早く!」

呼ばれて、しぶしぶプールに足を踏み入れる。冷たい水が肌に触れると、少しは落ち着いた気がしたが、相変わらず心の中は戸惑いでいっぱいだ。プールの中で、友達たちが水を掛け合ってはしゃいでいる姿を見て、彼はますます気後れした。

「楽しもうよ、美咲!なんか、元気ないけど?」

一人の友達が不思議そうに聞いてきた。もちろん、元気がないのは当たり前だ。今は美咲の体にいる自分が、どう楽しんでいいかわからないのだから。しかし、彼は笑顔を作り、適当にごまかした。

「あ、うん、ちょっと疲れてるだけ。すぐに元気になるよ」

そう言って、軽く手を振ったものの、友達たちは特に深く考えずに遊びに戻った。

「こういうの、女の子はよくやるんだな……」

彼は、プールで水を掛け合ったり、写真を撮ったりする彼女たちの様子を見ながら、自分が全く別の世界にいるような感覚に陥った。普段は全く縁のないこんな状況に、どう対応すればいいのか全くわからない。

それでも、なんとか周囲に溶け込もうと努力し、少しずつ水に慣れてきた拓也は、ふと一つの気づきが頭をよぎった。

「……俺、今、女の体で楽しんでる……?」

美咲の体で感じる水の冷たさや、体の動きの軽さ、そして友達たちとの何気ない会話――いつもとは違う感覚に、少しずつ自分も慣れてきていることに気づいた。最初は戸惑っていたが、この状況を楽しむ余裕が出てきたのかもしれない。

「悪くない……かも?」

拓也はプールサイドで笑っている友達たちに目を向け、次第に自分も笑顔を浮かべるようになった。
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