転校性

廣瀬純七

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緊急事態

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学校が終わり、悠斗(真奈の体)と真奈(悠斗の体)は一緒に帰り道を歩いていた。今日はお互いの体で一日を過ごし、いろいろな困難を乗り越えたが、その中で最も厄介だった問題がついに限界に近づいていた。

「ねぇ、悠斗、私もう無理かも…」真奈(悠斗の体)が顔をしかめながら呟いた。

「え?どうした?」悠斗(真奈の体)は、彼女が急に歩くスピードを落としたのに気づき、心配そうに顔を覗き込んだ。

「トイレ…もう我慢できない!」真奈は半ばパニックになりながら、男の体でそんなことを言う自分にすら違和感を覚えていた。朝から男子トイレに入るのを避けてきたため、結局ずっとトイレを我慢していたのだ。

「俺だって同じだよ!女子トイレに入るわけにいかないし、もう限界だ…!」悠斗も同様に、朝から女子トイレを避けていたため、もう我慢の限界だった。

二人は立ち止まり、しばらく悩んでいたが、どちらも解決策がないことに気づいた。

「どうする?もうここらへん、近くに家もないし…」真奈が焦った表情で悠斗を見つめる。

「公園!公園にトイレがあるだろ!あそこに行こう!」悠斗は突然思い出したかのように叫んだ。

「あ、そうか!公園なら男子も女子もトイレがあるし、なんとかなるかも…!」真奈は希望が見えたように答えた。

二人は急いで公園に向かって駆け出した。もう時間がない。お互いの体に入っているという奇妙な状況にもかかわらず、トイレに向かう焦りがそれを忘れさせていた。

公園に着くと、目の前に見えたのは古びた公衆トイレ。二人は立ち止まり、息を整えたが、次に直面する問題がすぐに頭に浮かんだ。

「えっと…俺はどっちに入るべきなんだ?」悠斗(真奈の体)が戸惑いながら言った。

「私だって同じよ!男子トイレに入るのは気が引ける…でも、このままじゃ絶対無理!」真奈は焦燥感に駆られ、ぐっと拳を握りしめた。

お互いに見つめ合ったが、もはや選択肢はなかった。

「お前はその体で男子トイレに行けよ!体は悠斗なんだから、問題ないだろ!」悠斗は必死に提案した。

「それは分かってるけど、気持ち的には私、まだ女なのよ…でも、もう選んでる余裕なんてない!」真奈は心の葛藤を乗り越え、覚悟を決めた。

「よし、俺も女子トイレに行く!この体なら堂々と入れるはずだ!」悠斗も自分に言い聞かせるように宣言した。

二人はそれぞれのトイレに向かって駆け込んだ。

### 真奈(悠斗の体)の男子トイレ体験

真奈は、男子トイレに入るのが初めてで、強烈な違和感と緊張感を覚えていた。トイレの中にはすでに何人かの男子がいて、無造作に用を足していた光景が広がっていた。

「これが男子トイレなのね…」と心の中で呟きつつ、真奈はなんとか平静を保とうとした。

「大丈夫、私は悠斗なんだから…悠斗なんだから…」自分に言い聞かせながら、彼女は周りを気にせずに個室へ駆け込んだ。個室に入ると、ようやくほっと一息つけたものの、今度は悠斗の体で用を足す方法に戸惑いが生じた。

「えっと、男ってどうやって…?」  
一瞬混乱したが、なんとか体の感覚を頼りに無事に用を足すことができた。

「はぁ、やっと落ち着いた…」個室の中で真奈は心から安堵した。

### 悠斗(真奈の体)の女子トイレ体験

一方、悠斗は女子トイレのドアをくぐる瞬間、強烈な緊張感に襲われていた。目の前に広がる清潔感のある空間と、パステルカラーの壁に、男子トイレとはまったく違う世界が広がっていた。

「これが女子トイレか…」彼は場違いな気分になりながらも、周りを見渡して誰もいないことを確認し、個室に急いで入った。

「ふぅ…入ってしまえばどうってことないな」そう自分に言い聞かせながら、悠斗はなんとか真奈の体で用を足す方法を探った。

「座ってやるんだよな、確か…」彼は戸惑いながらも、無事にトイレを済ませることができた。しかし、真奈の体で行う一連の動作にはまだ慣れておらず、少しぎこちなさを感じていた。

「よし、これでなんとか生き延びた…」

### トイレを出た二人

トイレを出て、公園の入り口で再び合流した二人は、顔を見合わせて一息ついた。

「なんとか無事に済んだな…」悠斗(真奈の体)がホッとした顔で言った。

「ほんとよ…男子トイレって、あんなに無造作なんだって、初めて知ったわ」真奈(悠斗の体)はまだ緊張が解けていない様子で肩をすくめた。

「女子トイレも、なんか…男子トイレとは全然違う世界だったな。座ってやるのも最初はちょっと戸惑ったけど、まあ慣れればどうってことないかも」

二人は、どこかしらお互いの体で体験したことに対して共感を覚えながらも、早く元の体に戻りたいという思いを強くした。

「次はこんなことにならないように、早く元に戻る方法を見つけないと…」真奈がため息をつく。

「そうだな。けど、今日はとにかく無事に乗り越えられてよかったよ」悠斗もそう言って頷いた。

そのまま二人は歩き出し、まだ慣れないお互いの体で奇妙な日常を続けるために、帰り道を再び歩き始めた。
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