取れてしまったアレ

新しい関係

美咲に自分の話を信じてもらえなかったあの日から、すべてが少しずつ変わっていった。ペニスが消え、恋人だと思っていた美咲に「ただの友達」と言われた瞬間、現実が自分の足元から崩れ落ちるような感覚を味わった。しかし、どれだけ嘆いても過去に戻ることはできない。病院でも誰からも信じてもらえず、家族ですら「もともと女性だった」と言われる中で、仕方なく、今の現実を受け入れるしかなかった。

それでも、美咲との関係を完全に絶つことは考えなかった。恋人ではなくなったとしても、彼女との時間は自分にとってかけがえのないものだったからだ。それに、美咲はいつも笑顔で明るく、何か特別な存在に思えていた。恋愛の感情がなくなったわけではないが、それを押し込めてでも、彼女との友達としての関係を続ける方が、自分にとっても心の支えになるのだと感じた。

それから数日後、美咲から再び連絡が来た。

「元気？この間の話は面白かったけど、大丈夫だった？」

「まあ、なんとかね。」

軽く答えたものの、あの出来事はまだ心のどこかに引っかかっていた。だが、そんな気持ちを隠して、これからの自分たちの関係を築いていこうと決めた。美咲とはこれから、仲の良い女友達として付き合っていく。それも悪くないと、徐々に自分を納得させていった。

ある日、再び美咲とカフェで会うことになった。彼女はいつものように笑顔で、自分にとって居心地の良い空気を作ってくれた。

「この間のことだけど、もう気にしてないよね？」美咲が尋ねた。

「まあ、そうだね。考えてもしょうがないし、今のままでいいかなって思ってるよ。」

「そっか、それなら良かった。私も、あんたと一緒にいると楽しいし、友達としてこれからもよろしくね！」

彼女の言葉に少し心が軽くなった気がした。恋人ではなくなっても、美咲との時間は特別なままだ。それに、彼女も友達として一緒にいることを望んでいる。それなら、それでいいんじゃないかと、自然に思えるようになった。

それからの日々は、少しずつ穏やかになっていった。美咲とは頻繁に会って、映画を見たり、ショッピングに行ったり、何でもない日常の話をしたりする。恋人同士ではなくなったけれど、その代わりに深い友情が芽生えてきたような気がした。

ある日、美咲が突然、こんなことを言った。

「なんか、私たちって本当の親友みたいだよね。あんた、いつも私を笑わせてくれるし、何でも話せるし。恋愛とかじゃなくても、こういう関係っていいよね。」

彼女の言葉を聞いて、胸が温かくなった。かつて恋人として接していた時のドキドキとは違う、心の奥底で感じる安心感。自分が求めていたのは、こういう形のつながりだったのかもしれない。

「そうだね、なんか今の関係、すごく楽だし心地いいよ。これからもこんな感じでいこう。」

そう言うと、美咲はにっこりと笑った。その笑顔を見た瞬間、自分の中で何かが完全に吹っ切れた気がした。恋人ではなくても、これでいい。むしろ、今の自分たちの関係の方が自然で、お互いにとって幸せなんだろう。

それからも、美咲とは変わらず一緒にいる時間を楽しんだ。恋愛の感情が消えたわけではないけれど、それを超えて、彼女との友情がより強くなったことに気づいた。ペニスがなくなり、何もかもが変わってしまったかのように思えたあの日から、こうして新しい現実に順応していく自分を、少し誇らしくも思えた。

美咲との関係は、ただの「女友達」という枠を超えて、自分にとってかけがえのない大切な存在へと変わっていった。