美奈子と健一

廣瀬純七

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緊急事態の二人

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トイレ問題は切実だった

「う、うぅ……限界……」

お昼休み。
健一(美奈子)は、教室の後ろで両足をそわそわさせながら身をよじっていた。お弁当を食べたあと、急に強烈な“生理的欲求”が襲ってきたのだ。

(これ、やばい。男子トイレとか無理。無理だってば……っ!!)

一方、窓際の席では、美奈子(中身は健一)も苦悶の表情で机に突っ伏していた。

(やっべ……女子の体ってなんでこんな急に来るんだよ!? でも女子トイレとか……仕組みわかんない……!!)

二人の視線が、バチッと合った。

「……健一」

「……美奈子」

同時に立ち上がり、無言のまま教室を出る。

「急がないと、マジで……」

「うん、私も、もう限界……!」

廊下の角を曲がった瞬間、二人は声を合わせて叫んだ。

「じゃあ、またあとで!!」

健一(美奈子)は男子トイレへ。
美奈子(健一)は女子トイレへ。
二人とも、顔を真っ赤にしながら、全力で駆け込んでいった。



――数分後。

廊下の自販機の前で、二人は無言で缶ジュースを手に持ちながら再会していた。
沈黙の中、先に口を開いたのは健一(美奈子)だった。

「男子トイレ……ヤバかったよ…あんなに開放的で……音とか……男子……」

美奈子(健一)は健一の体の美奈子を見て真剣な顔でうなずいた。

「女子トイレもヤバかった……落ち着きすぎてて逆に緊張した。てか、鏡の前で前髪直す女子多すぎて、個室入るタイミングすら分かんねぇし……」

二人は同時に、深いため息を吐いた。

「……私たち、こんなことで一日一日乗り越えられるのかな……」

「いや、今日これ乗り切れたなら、もう怖いもんないだろ」

缶を軽くぶつけ合い、冗談半分の乾杯。

だがその裏には、“相手の体で生きる”という現実が、思った以上に過酷だという自覚が芽生え始めていた。

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