入れ替わりノート

クラスメイトの違和感

翌朝、教室に入った歩美（中身は隆司）は、机にカバンを置くと、周りの視線に気づいた。  
（え？なんだ？なんかみんな俺を見てないか？）  

隆司としては、至って普通に振る舞っているつもりだったが、実際の歩美の体の仕草一つ一つが微妙に違和感を醸し出していた。

「北原さん、なんか今日…ちょっと雰囲気違わない？」  
隣の席の美咲が首をかしげながら声をかけた。  

「え、そうかな？普通だけど？」  
隆司はわざと高めの声を出して歩美らしさを演じようとしたが、それが逆に不自然さを増していた。  

「いや、なんていうか…声もそうだけど、動きがちょっと…ガサツっていうか…？」  
美咲の指摘に他のクラスメイトも耳を傾け始めた。  

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ホームルームが始まるとさらに問題が発生した。  
担任の先生がクラス全員に向けて、今日のスケジュールを説明している最中、歩美（隆司）が机に肘をつきながら頬杖をついていたのだ。  

普段の歩美なら絶対にしない態度に、周りの女子がざわざわし始める。  
「ねえ、北原さんって、あんな座り方する人だったっけ？」  
「いや、初めて見た。なんか男子みたい…。」  

さらに、休み時間には友達と話す際の言葉遣いが問題に。  

「おい、次の授業、何だっけ？」  
歩美（隆司）は、無意識に男子っぽい話し方をしてしまった。  

「お、おい？」  
クラスメイトの奈緒が驚いた表情で聞き返す。  
「北原さん、いつからそんな男の子みたいな口調になったの？」  

「あっ、いや、その…冗談だよ！ほら、たまにはこういうのもアリかなって！」  
隆司は焦って言い訳するが、奈緒は怪訝そうな顔をしたままだった。  

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昼休みにはさらに奇妙な事件が起きた。  
歩美（隆司）が男子たちの集団に混ざり、彼らの会話に入っていったのだ。  

「なあ、昨日のサッカーの試合見た？」  
「え、北原がサッカー？珍しいな。」  

男子たちは目を丸くしながら歩美の話を聞いた。  

「いや、ちょっと興味あってさ…昨日のゴールシーンとかすごかったろ？」  
話しているうちに隆司は自分が歩美の体であることを忘れかけていた。  

しかし、その姿を見た女子たちは口々に言い合った。  
「ねえ、北原さん、男子と話してるの珍しくない？」  
「しかもサッカーの話なんて…。」  

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午後の授業中、ついに美咲が放課後に歩美（隆司）を呼び止めた。  
「ねえ、本当にどうしちゃったの？今日は全然北原さんらしくないよ。」  

「え、そんなことないって。」  
「でも、みんな感じてる。動きも話し方もいつもと違うって…。何か悩みでもあるんじゃないの？」  

美咲の真剣な目に、隆司は一瞬答えに詰まった。  
（くそ、バレるわけにはいかない…。でも、何か適当な理由を考えないと。）  

「ごめん、ちょっと寝不足でボーッとしてるだけかも。」  
「寝不足…？うーん、そういうことならいいんだけど…。」  
美咲は納得したような、まだ半信半疑なような顔で頷いた。  

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その日の放課後、歩美（隆司）は急いで隆司（朋美）を探し出すと、開口一番こう言った。  
「おい、朋美、俺の体でおかしい事をしていないだろうな？」  

「そっちこそ！クラスであんたが変だって噂になってたんだから！」  

二人は顔を見合わせて溜息をついた。  

「早く元に戻らないとマズいな…。マジでヤバい。」  
「ほんと、それ。」  

二人は再びノートを手に入れる方法を真剣に考え始めた。  

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