Missing you

廣瀬純七

文字の大きさ
47 / 48

達也になった美咲

しおりを挟む
むかつくダブルマラソンのゴールをした後、達也と美咲は、手を取り合いながらその場に倒れこんだ。グラウンドの柔らかい芝生が疲れ切った体を包み込み、二人は動くこともままならない。

「はぁ…やっと終わった…本当にキツかったな。」  
達也が天を仰ぎながらぼそっとつぶやく。  

「うん…でも楽しかったよね。」  
美咲も隣で同じように横たわりながら答えた。目を閉じた美咲の顔には、どこか満足げな笑みが浮かんでいる。

しばらくそのまま芝生の上で横になっていると、達也はふと体の違和感に気づいた。体中が痛いのはいつものマラソン後のことだが、どうも手足の感覚が変だ。妙に軽く、そして…どこか自分の体じゃない感じがする。

「なんか変だな…」  
達也は呟きながら体を起こそうとした。その瞬間、長い髪が顔にかかってきた。

「え?」  

達也は自分の髪を触る。短いはずの髪が、驚くほど長い。視界の端に見える手も、自分のゴツゴツした手ではなく、細くて女性らしい指だ。

「な、なにこれ!?」  
達也はパニックになりながら美咲を見た。すると、美咲も驚いた表情で自分の体を見つめている。

「え、ちょっと待って!達也、私の声が…」  
美咲が口を開く。しかし、その声は達也の声そのものだった。

「美咲…?もしかして…俺たち、入れ替わってる!?」  
達也は自分の体――いや、美咲の体を見下ろしながら叫んだ。

---

### 入れ替わりの確認

二人は慌てて立ち上がり、それぞれの体を確かめ始めた。達也の中に入った美咲は、自分の声が低く男らしいことに戸惑い、逆に美咲の中に入った達也は、自分の声が高く女性らしいことに気づいてさらに混乱した。

「これ…どうなってるの!?」  
美咲が達也の顔――つまり自分の顔を指さして言う。

「そんなこと、俺が聞きたいよ!マラソン走り終わって寝転んでただけだろ?」  
達也も美咲の顔――つまり自分の顔を指さして反論した。

グラウンドには他のランナーたちも倒れこんでいるが、誰も二人の異変には気づいていない。どうやらこの入れ替わりは、二人だけの現象らしい。

「ちょっと、何か原因を探さないと…。」  
美咲が自分の体――つまり達也の体のポケットからスマホを取り出そうとした。しかし、ポケットに手を突っ込んだ瞬間、彼女は動きを止めた。

「え、これって…」  
スマホに手を触れる代わりに、ポケットから出てきたのは汗で濡れたお守りだった。それは、マラソン前日に美咲が達也に「安全祈願だから」と渡したものだ。

「お守りのせい…?」  
達也が疑問の声を上げる。

「そんなはずないでしょ!ただの交通安全のお守りだよ?」  
美咲は頭を振る。しかし、二人の中に共通して浮かんだのは、「なにかこのマラソンの途中で、奇妙な力が働いたのではないか」という直感だった。

---

### 解決の糸口を探して

二人はそのままグラウンドを後にし、近くの休憩所で話し合うことにした。美咲の体になった達也が、普段より明らかに軽い体重に戸惑いながら歩く一方で、達也の体になった美咲は筋肉の重さに苦戦している様子だった。

「ちょっと、これ本当に慣れないんだけど…こんな体でよく走れたね。」  
美咲が肩を回しながら言う。

「そっちこそ、こんな軽い体でマラソン走ったのかよ。…でも、不思議とキツくなかったんだよな。」  
達也が美咲の体を見下ろしながら言った。

「ねえ、これってさ…もしかしてお祖父ちゃんが言ってた“むかつく坂を楽しめ”って言葉に関係してるのかな?」  
美咲がふと呟く。その言葉に、達也は驚いて美咲を見る。

「どういうこと?」  

「いや、なんとなくだけど、お祖父ちゃんがいつも言ってたの。“困難を楽しめば新しい景色が見える”って。」  
美咲の言葉に、達也はしばらく考え込む。そして、ふっと笑った。

「まあ、確かにこんな体験、普通じゃできないよな。」  
「そうだよね、これも…ちょっと楽しんでみようか。」  

二人はとりあえず、自分たちの状況を受け入れることにした。  

---

この後、二人は「体が入れ替わったままでの日常」をどう過ごしていくのか、新たな試練が始まる…。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...