Missing you

廣瀬純七

文字の大きさ
48 / 48

なりすます二人

しおりを挟む

シャトルバスで楊貴館に戻り着替えを済ませて、達也の体になった美咲が車の運転席に座り、エンジンをかけた。助手席には、美咲の体になった達也が座っている。二人ともまだ体の違和感に慣れていないが、ひとまず美咲の家に帰ることを決めていた。

「こんな状況、どう説明すればいいんだろう?」  
達也(美咲の体)は腕を組んで深く考え込む。

「それが問題だよね…。私の両親、こんな話をしたら絶対信じないよ。」  
美咲(達也の体)は苦笑いを浮かべながら、ハンドルを握ったまま答えた。運転はスムーズで、見た目には普段と変わらないように見える。しかし、美咲の体に入った達也は助手席からその様子を見て不安になった。

「ちょっと待て、美咲。本当に大丈夫なのか?俺の体で運転するの、初めてだろ?」  
「大丈夫だよ。達也の体はちょっと大きいけど、基本的な感覚は同じだから。それに、運転はお祖父ちゃんに鍛えられてるからね!」  
美咲はそう言って、得意げに微笑んだ。

「…頼むから事故だけは起こさないでくれよ。」  
達也はため息をつきながら、シートベルトを締め直した。

---

### 家に着く前の迷い

車内は次第に静かになり、二人とも言葉を交わさず考え込んでいた。美咲の家に着いたら、どうするべきか。両親に事実を伝えるべきか、それとも黙ってやり過ごすべきか。二人とも答えが見つからないまま時間だけが過ぎていく。

「ねえ、達也。」  
美咲(達也の体)がぽつりと口を開いた。

「ん?」  
「両親にこのこと、話した方がいいのかな…。それとも黙ってた方がいい?」  

達也(美咲の体)はしばらく考え込んだ後、首を振った。  
「いや、話さない方がいいと思う。急に体が入れ替わったなんて言ったら、絶対パニックになるだろうし、俺たちだってパニック中なんだし、下手したら病院送りにされるかもしれないぞ。」  

「確かに…。うちの母なんて心配性だから、何かお祓いとかに連れて行かれそうだよね。」  
美咲は苦笑いを浮かべた。

「そうだな。だから、とりあえず俺が美咲の振りをして、お前が俺の振りをする。これで行こう。」  
達也は毅然とした口調で言った。

「え、本気でやるの?私、達也の振りなんてできるかな…。」  
美咲は心配そうに言ったが、達也は肩をすくめて笑った。  

「お互い様だろ。俺だって美咲の振りをしなきゃいけないんだし、なんとかなるさ。」  

---

### 家に到着

車は美咲の家の駐車場に到着した。美咲(達也の体)がエンジンを切り、二人は車から降りた。夕暮れの空が赤く染まり、家の窓から漏れる暖かい光が二人を出迎える。

「行くぞ、達也。」  
美咲(達也の体)が言うと、達也(美咲の体)は頷いた。ドアを開けると、台所から美咲の母・孝子が顔を出した。

「あら、美咲、達也君。おかえりなさい!マラソンどうだったの?」  
孝子は満面の笑みで二人を出迎えた。

「すっごく疲れたよ…でも楽しかったわ!」  
達也(美咲の体)は美咲のように笑顔で答えた。

「うん、なかなかいいコースだったよね。美咲!」  
美咲(達也の体)は少し低い声で答えたが、緊張のせいかどこかぎこちない。

「そう、よかったわ!じゃあ、二人ともゆっくり休んで後でお風呂に入ってね。」  
孝子は特に違和感を感じる様子もなく、再び台所に戻った。

---

### 二人だけの会話

部屋に戻ると、二人はほっと一息ついた。  
「なんとかバレなかったね。」  
美咲(達也の体)が言う。

「そりゃあな。俺たちがあんなことになったなんて、普通は想像もしないだろう。」  
達也(美咲の体)はベッドに腰掛けながら答えた。

「でも、これからずっとこのまま過ごすのは大変そうだね…。」  
「そのうち戻るだろ。戻らなかったら、その時考えればいい。」  
達也は軽く笑ったが、その笑顔の裏には不安が隠されていた。

こうして二人は、入れ替わったままでの日常を乗り切る覚悟を決めたのだった。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

2025.01.25 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2025.01.25 廣瀬純七

ご感想誠にありがとうございます。今後の展開を楽しみにして下さい。

解除

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。