妊娠中の妻と入れ替わった夫

廣瀬純七

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本当は、私が妊娠して産みたかった

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【あれから一年後】

結衣が元気に保育園へ通うようになった頃――  
ふたりの間に、また一つの奇跡が訪れていた。

「……妊娠、してるね。おめでとうございます」  
産婦人科の先生が穏やかに言ったその言葉に、  
田中健一(※見た目:優しげママ/中身:夫)は顔をこわばらせた。

健一「……また……俺の体の中で、命が……」

そう。  
**二人は、体が入れ替わったまま――二人目を授かった。**

---

### 🏡【夜のリビング、沈黙の中で】

家に帰ってから、美奈(見た目:夫/中身:妻)はずっと黙っていた。  
ご飯を作りながら、何度もちらちらと健一のお腹を見る。

健一「……あの、美奈。嬉しくない……のか?」

美奈「……ううん。嬉しいよ。すごく……嬉しい。だけど……」

一呼吸置いて、  
静かに、でも確かに、美奈は言った。

「**本当は、私が妊娠して、産みたかったの。**」

---

### 💔【“あの時は任せるしかなかった”――今だから言える本音】

美奈「一人目の時は、体のこともあって、“任せるしかなかった”。  
でも……あなたが命を宿して、産んで、結衣を育てて……  
私の心のどこかでずっと思ってた。**“私も、経験したかった”って。**」

健一は何も言えず、手を握った。

美奈「妊娠のつらさも、胎動の感動も……陣痛も、出産も。  
全部“私の体”だったのに、全部あなたが体験した」

声が震える。

美奈「**私は……母親になったけど、“産んでいない母親”なんだって、時々思っちゃうの。**  
この気持ち、誰にも言えなかったけど……ずっと、あったの」

---

### 🤝【その想いごと、受け止める】

健一はしばらく黙っていた。  
でも、ぽつりと言った。

健一「……ごめん。そうだよな。  
でも、俺にとって“父親”って実感がわいたのは――  
この体で結衣を産んで、“あなたが母親として隣にいてくれた”からなんだ」

美奈は顔を上げる。

健一「**俺たちは、形がバラバラでも、ちゃんと家族になれた。**  
今回も、俺が産むことになるかもしれない。でも……次はずっと、あなたと一緒に“産む”よ」

---

### 🕊【ふたりで迎える命】

その夜、美奈は健一のお腹にそっと手をあてた。

美奈「……今回も一緒に頑張ろうね、赤ちゃん。  
あなたがパパの体にいるのは、ちょっと不思議だけど――  
**ママもここにいるから、大丈夫だよ**」

健一は微笑みながら言った。

「それ、俺の体だけどな」

美奈「うるさい。今だけは、ママの時間よ」

二人は肩を寄せ、笑いながら、  
再び始まる“家族の冒険”を迎えた。

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