妊娠中の妻と入れ替わった夫

廣瀬純七

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なぜ体が入れ替わったのか

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### 🕊【産後、落ち着いたある午後】

結衣と赤ちゃんがお昼寝中。  
カーテンから差し込む柔らかな陽だまりの中、  
健一と美奈は、珍しく静かなティータイムを過ごしていた。

美奈「ねぇ、健一。……私、最近よく考えるの」

健一「ん?」

美奈「“なんで、私たちの体……入れ替わったんだろう”って」

健一は、しばらく目を閉じて考えたあと――

健一「……ずっと、偶然だと思ってた。  
でも今になって思うと、**『何かに選ばれた』っていう感覚がある。**」

美奈「選ばれた……?」

---

### 🌌【“あの日の夜”、思い出の断片】

健一「あの夜――入れ替わった日の夢、覚えてる?」

美奈「えっ……夢?」

健一「俺は、白い部屋にいた。  
誰もいないはずなのに……どこか、優しい声がしたんだ」

 ――“あなたは、命の形を知る機会を得ました”――  
 ――“互いの立場を生きることで、家族になるために必要な絆を育ててください”――

美奈は目を見開いた。

美奈「……私も……同じ夢、見た。  
あの時はぼんやりしてたけど、たしかに聞こえた。あの声……」

二人の間に、静かな風が通り抜ける。

健一「……もしかして、あれは“誰か”の計らいだったのかもな」

---

### 🌀【“形”じゃない、“想い”の共有】

美奈「私たち、体が入れ替わったからこそわかったよね。  
妊娠の重さも、育児のしんどさも、“支える側”の寂しさも、全部」

健一「うん。“俺だけが働いてる”って思ってた時期、ちょっと恥ずかしいわ」

美奈「“子どもを産む”って、どれだけ孤独で尊いか……あなたが私の体で産んでくれたことで、私はそれを知った」

健一はそっと、美奈の手を握った。

健一「入れ替わった理由が“神様のいたずら”でも、“奇跡”でも――  
俺は、**今の俺たちで良かった**って思えるよ」

---

### 🌸【そして、家族は“いま”を生きていく】

その日の夕方。  
子どもたちが起きて、わいわい騒ぎ始める。

「ママ~!ぱぱ~!おなかすいた~!」  
「おぎゃ~~!!」

健一「よっしゃ、パパが離乳食つくるぞー!」  
美奈「ママはオムツと格闘します!」

ふたりの動きは、どこかシンクロしていた。

きっともう、「どっちがどっち」じゃない。  
ふたりで、いのちを育てていく。  
それだけは、体がどうであれ、変わらない。

---

### ✨【後日談】  
美奈「ねぇ、健一……もしもまた、入れ替わったら?」  
健一「その時は……もう、慣れてるしな」  
美奈「“産むの私ね”って決めつけないでよ」  
健一「いや、そこは話し合おう。ジャンケンでもいい」  
美奈「ジャンケンで出産決める夫婦、私たちだけよ……」

ふたりは笑いながら、再び手を取り合った。

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## こうして物語は、“日常”へと還る。  
## それがきっと、いちばんの奇跡――。

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