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トイレの勘違い
しおりを挟む放課後、愛と明菜は教室を出て、ランドセルを背負ったまま下駄箱に向かって歩いていた。校庭から聞こえる野球部の掛け声や友達同士の笑い声が心地よく響く。
「明菜ちゃん、帰る前にトイレ行こう!」
「うん、いいよ!」
二人は一緒に廊下を進み、トイレの入り口に到着した。何気なく前を歩いていた明菜は、そのまま男子トイレに入ろうとした――その瞬間、後ろから愛の声が響く。
「ちょ、ちょっと待って! 明菜ちゃん! そっちは男子トイレだよ!」
ハッと気づいた明菜は立ち止まり、自分が向かっていたドアを見た。「男子」と書かれたプレートが目に入り、慌てて顔を赤らめる。
「あ、あはは……ごめん、間違えちゃった!」
「もう、明菜ちゃんったら、しっかりしてよね!」
愛は腕を組みながら笑い、少し得意げな顔で明菜をからかう。
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### 「秘密の好奇心」
二人は女子トイレに入り、鏡の前で軽く髪を整えた。すると、愛が少し小声で呟くように言った。
「でもさ、明菜ちゃんが男子トイレに間違えて入ろうとするのを見て、ちょっとだけ思ったんだけど……。」
「え、何?」
愛は鏡に映る明菜と目を合わせて、口元を隠すようにしてクスクス笑った。
「私もさ、男子トイレってどんな感じなのかなって、ちょっと興味あるよね!」
その言葉に、明菜はびっくりして目を丸くした。
「え、愛ちゃん、男子トイレに興味あるの?」
「だって、女子トイレはどこもだいたい同じでしょ? 鏡とか綺麗な洗面台とか。男子トイレにはさ、小便器とかあるんでしょ? なんか、見たことないから不思議じゃない?」
愛の好奇心に満ちた表情を見て、明菜は思わず吹き出してしまった。
「愛ちゃん、なんか変なこと言うね!」
「えー、でもそう思うでしょ? 明菜ちゃんも、一瞬男子トイレに入ろうとしたってことは、もしかして興味あったんじゃない?」
「そ、それは違うってば! 本当に間違えただけ!」
赤くなりながら手を振る明菜に、愛は楽しそうに笑い続けていた。
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### 「秘密の約束」
トイレを出て、二人はまた歩き始めた。愛がふと立ち止まり、明菜に向かって小さな声で言う。
「でもさ、もし誰にもバレないんだったら、一緒に男子トイレちょっと覗いてみたいな……。」
「えっ、やめようよ! 怒られたらどうするの!」
「大丈夫だよー。先生が来たら、私が『間違えました!』って笑顔でごまかすから!」
明菜は呆れつつも、その無邪気な提案に少しだけ笑ってしまった。
「ほんと、愛ちゃんって大胆すぎ!」
「でしょ? でも、秘密にしておいてね!」
愛は人差し指を唇に当てるポーズを取り、いたずらっぽくウインクした。その仕草に、明菜はまた笑いをこらえきれなかった。
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### 「友情の瞬間」
二人はそのまま学校を後にし、笑いながら帰り道を歩いた。愛と一緒にいると、不思議と心が軽くなる。
「愛ちゃん、ほんとにありがとう。なんか、いつも元気もらってる気がする。」
「え、どうしたの急に! そんなの当たり前だよ、だって私は明菜ちゃんの親友なんだから!」
愛は明るく答え、明菜の手を軽く引いた。その力強い言葉に、明菜は心の中でこう呟いた。
「この世界で斎藤明菜として生きるのも悪くないな……。」
明菜は自分が今ここにいることを、少しずつ受け入れ始めていた。
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