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親友のすれ違い
しおりを挟む学校が終わり、愛と明菜はいつものように一緒に帰り道を歩いていた。道端には春の花が咲き始めていて、爽やかな風が吹いていた。けれど、今日の二人の間にはなんとなくぎこちない空気が流れていた。
原因は放課後の掃除当番だった。二人は同じ班で、教室の掃除をしていたが、些細な意見の違いがあった。
「明菜ちゃん、黒板を消すときは、もっと丁寧に消さなきゃダメだよ。粉が残ってたらまた先生に怒られちゃうよ。」
「そんなに丁寧にやらなくてもいいって。どうせ明日また書くんだからさ。」
愛の真面目な指摘に、明菜は少しイラっとして反論してしまった。結局、その場では軽く言い合いになり、なんとか掃除を終わらせたものの、帰り道の雰囲気は明らかに気まずいものになっていた。
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### 「小さな亀裂」
「愛ちゃん、まだ怒ってるの?」
明菜が先に口を開いたが、愛はぷいっと横を向いたまま。
「別に怒ってないよ。ただ、明菜ちゃんってたまに雑だよね。ちゃんとやるべきことをやらないと、みんなが迷惑するんだから。」
「そんな言い方しなくてもいいじゃん! 私だってちゃんとやったし、そこまで問題なかったでしょ?」
「でも、ちゃんとできるなら、ちゃんとやった方がいいじゃない!」
愛の真剣な声に、明菜もムキになってしまう。
「愛ちゃんって、いつもそうだよね。細かいことばっかり気にして、ちょっとぐらい大目に見たらいいじゃん!」
その言葉に、愛の目がカッと見開かれた。
「明菜ちゃん、それってどういう意味?」
「あ、いや、別にそんな深い意味じゃ……。」
けれど、愛はその言葉を聞かず、少し早足で歩き始めた。
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### 「一人きりの帰り道」
気まずい空気のまま、愛は途中で「じゃあね」とだけ言い残し、自分の家の方に向かって行ってしまった。
残された明菜は、一人でゆっくりと歩きながら、胸の中にモヤモヤした感情が渦巻いているのを感じた。
「私、言い過ぎたかな……。」
愛の言葉を思い返すと、確かに彼女の言い分も正しいと感じる。掃除当番だって、みんなで協力してやるものだ。それを「適当でいい」と済ませようとした自分は、少し無責任だったかもしれない。
でも、愛の厳しい言い方に反発したくなったのも本当だった。
「愛ちゃんは、いつも正しいことを言うけど、たまにそれが辛いんだよ……。」
明菜はため息をつきながら、自分の家に帰り着いた。
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### 「素直になれない夜」
家に帰った明菜はランドセルを置き、自分の部屋のベッドに寝転んだ。天井を見つめながら、愛との会話を何度も頭の中で繰り返す。
「私が悪いのかな……。でも、愛ちゃんだって、あんな言い方しなくてもよかったのに。」
素直に謝るべきだとわかっているのに、それがなかなかできない。親友だからこそ、こんな些細なことで喧嘩するのは辛かった。
その夜、明菜はなかなか眠れなかった。
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### 「翌日の再会」
次の日の朝、明菜は重い気持ちで学校に向かった。愛と顔を合わせるのが少し怖かったが、同じクラスの同じ机の並びに座る以上、避けるわけにもいかない。
教室に入ると、愛は既に席についていた。明菜の姿を見ると、一瞬だけ目を合わせたが、すぐに顔をそらしてしまった。
「まだ怒ってるのかな……。」
明菜がそう思いながら自分の席に座ったとき、不意に背中をトントンと叩かれた。振り向くと、そこには愛が立っていた。
「明菜ちゃん……昨日はごめんね。」
その一言に、明菜の胸の中に溜まっていたものが一気に崩れ落ちた。
「愛ちゃん、私の方こそごめん! 私、ちゃんとやらなかったのに、言い返してばっかりで……。」
二人はお互いに言葉を重ね、笑顔で握手を交わした。
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### 「友情の絆」
休み時間、明菜と愛はいつものように一緒に話し、笑い合った。
「ねえ、次の掃除当番のときは、私がちゃんとやるからさ!」
「うん、でも明菜ちゃんが困ったら、私が手伝うから安心してね!」
二人はこれまで以上に絆が深まったように感じた。小さな喧嘩を乗り越えたことで、明菜は愛の真剣さを理解し、愛は明菜の気持ちを大切に思うようになった。
「やっぱり愛ちゃんは大事な親友だよ。」
「私も、明菜ちゃんが大好きだよ!」
教室に響く二人の笑い声が、他のクラスメイトにも自然と伝わり、周りの空気を明るくしていた。
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