タクミのバレーボール

廣瀬純七

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女子として登校

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タクミは、何故かハンガーに掛けてあった女子の制服に着替え、鏡の前で自分の姿を確認した。スカートとブラウスに身を包んだ自分の姿は、鏡に映っているにもかかわらず、まるで別人のように見える。慣れない服装に違和感があるものの、今日は何とかして学校に行かなければならない。心臓がドキドキと早鐘のように鳴っているのを感じながら、タクミは家を出た。

通学路に出ると、通りを歩く人々の視線が気になる。これまではただの「男子高校生のタクミ」として周りに溶け込んでいたはずが、今日はまるで注目の的のようだ。周囲の人たちが何気なく自分に視線を送るたび、タクミは自分が女の子の姿でいることを再認識してしまう。

「はぁ、落ち着け…別に普通にしていれば誰も気づかないはずだ…」

そう自分に言い聞かせながら、学校の門をくぐる。しかし、いつもの仲の良い友人であるケンジがちょうど門の前で立ち話をしているのを見かけ、思わず息を飲む。いつもなら気軽に「おはよう!」と声をかけるところだが、今日はその場で引き返したくなる。

ケンジがタクミの存在に気づくと、見知らぬ女の子が立ちすくんでいると思ったのか、首をかしげて近づいてきた。

「お、君は新入生か?なんか見ない顔だな。」

タクミは動揺を抑えつつ、かろうじて小さな声で返す。

「あ、いや…その…」

ケンジの顔を見ると、普段とは違う視線で自分を見ているのがわかる。友人としてではなく、ただの「女の子」として見られていることが、なんだか妙に気恥ずかしかった。タクミはつい目をそらし、何とかその場を切り抜けるべく、早足で校舎の中に入った。

ホームルームが始まる教室に着くと、周囲の視線が再びタクミに向けられる。女子生徒たちが興味津々に小声で話しているのが聞こえ、男子生徒たちもチラチラとこちらを見ているのがわかる。タクミはそっと席について、普段通りに振る舞おうと努力するが、やはり慣れないスカートが気になって仕方がない。

そのとき、女子バレー部のキャプテンであるサクラがタクミの隣に座り、にこっと笑いかけてきた。

「おはよう!私、バレー部のサクラ。君、今日から転入したんだよね?クラスメイトのよしみで、もしよければ色々案内するよ!」

「えっ…あ、ありがとう。助かるよ。」

サクラの明るい笑顔に、タクミは少しだけ緊張がほぐれたような気がした。それと同時に、「女の子の友達」というものに初めて囲まれることへの期待感もわずかに生まれてきた。

この日、タクミは「佐藤タクミ」ではなく「新しい女子生徒」としての生活をスタートさせることとなる。彼の一日は、戸惑いや驚き、そして新たな発見の連続だった。
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