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目覚めの違和感
しおりを挟む田中健太は、目を覚ました瞬間に違和感を覚えた。
「……ん?」
見慣れない天井。白くて清潔だが、どこか柔らかい印象を受ける。
寝ぼけた頭でゆっくりと状況を整理しようとするが、何かが決定的におかしい。
手を動かすと、自分のものではない細くしなやかな腕が視界に入る。驚いて上半身を起こすと、さらりと肩に落ちる長い髪の毛が頬をかすめた。
「えっ?」
慌てて周囲を見回すと、そこは自分の部屋ではなかった。
ベッドのそばには女の子らしいデザインの学習机があり、壁にはアイドルのポスター。クローゼットの扉が半開きになっており、中にはスカートやブラウスが整然と並んでいる。
頭が混乱する中、視線がふと横に置かれたスマートフォンの画面に移る。そこには、ロック画面に映る見知らぬ少女の姿――
「えっ、これ……俺?」
反射的にスマホのカメラを起動して、自分の顔を確認する。
画面の中には、黒髪のストレートがよく似合う、可愛らしい女子高校生の姿が映っていた。
「……いやいや、嘘だろ?」
声が高い。
顔が違う。
手も足も、自分のものじゃない。
混乱しながらも、スマホのロックを解除しようとして、自然に指が動く。そこに表示された名前――**田中美紀**。
「……誰だよ、美紀って……?」
違和感と困惑に包まれたまま、田中健太――いや、今の"田中美紀"は、全く知らないはずの世界に放り込まれたことを理解し始めていた。
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