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バレるわけにはいかない!
しおりを挟む新川結衣に腕を引かれながら、一緒に登校する。
いつも通り――のはずなのに、俺にとってはまるで違う世界だ。
「はぁ……マジでどうなってんだよ……」
スカートの違和感、ブラの締めつけ、そして"田中美紀"として扱われる現実。
全部がまだ慣れなくて、つい考え込んでしまう。
そんな俺の様子を見て、結衣が首をかしげた。
「……あれ?」
「ん? ど、どうした?」
「今日の美紀、なんかちょっと男子っぽくない?」
「……は?」
一瞬、心臓が跳ねた。
「なんかさ、歩き方とか、話し方とか……うーん、気のせいかなぁ?」
結衣が俺の顔をじーっと覗き込む。
めちゃくちゃ鋭い。さすが幼馴染、ちょっとした違いにも気づいてしまうのか。
「え、えっと……そ、それは気のせいよ!」
慌てて、俺は女の子っぽく聞こえるように語尾を伸ばしてみた。
「……ほんと?」
「ほ、ほんとほんと! ぜんっぜんいつも通りよ!」
「うーん……」
結衣はまだ納得していない顔で俺を見つめていたが、やがてニヤッと笑った。
「そっかぁ、ならいいんだけど。でもさ、美紀が男子っぽくなるの、ちょっと面白いかも?」
「お、面白くないわよっ!」
「えへへ、冗談冗談! じゃ、宿題よろしくね!」
結衣は軽く俺の肩を叩き、先を歩いていく。
「……危なかった……」
まさか、こんなにすぐバレかけるとは。
"田中美紀"として生きるの、想像以上に難しそうだ……。
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