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違和感の正体
しおりを挟む昼休み。
俺は教室の自分の席に座りながら、まだ頭の中で考えを巡らせていた。
(この世界は"田中健太"と"田中美紀"が双子の兄妹として存在してる……)
さっきまで自分の中で整理した結論を反芻しながら、ため息をつく。
昨日とは違う世界にいるのに、クラスメイトたちは何も疑問に思っていない。
まるで最初から俺と健太(兄)が"そういう関係"だったかのように、この世界は成り立っている。
(……けど、もし誰かが違和感に気づいたら?)
そんなことを考えていた時、目の前に結衣が現れた。
「美紀、お昼一緒に食べよー!」
「お、おう……」
自然に返事をしながらも、内心ビクビクする。
結衣の中では、俺は"昨日までずっと一緒に過ごしてきた双子の妹"のはず。
下手なことを言うとボロが出るかもしれない。
そんなことを考えていると――
「……あれ?」
結衣が、じーっと俺の顔を見つめてきた。
(な、なんだよ……)
「今日の美紀、なんか雰囲気が少し違う感じなんだけど?」
「……!」
ドキッとする。
(バレたか!?)
俺の焦りをよそに、結衣は首をかしげながら続けた。
「うーん、なんか……ちょっと男っぽいっていうか、仕草とか話し方が違うような気がするんだよねぇ……」
(くっ……やっぱり、何か違和感を持たれてる……!)
とはいえ、俺が正直に「昨日までは男で田中健太だったんだよ!」なんて言えるわけがない。
ここは誤魔化すしかない。
「そ、そう? 気のせいよ!」
俺はなるべく明るく笑って見せた。
すると、結衣は「うーん……?」と納得しきれない表情をしながらも、
「そうか、気のせいだよね!」
と呟き、俺の隣に座った。
(……ふぅ、危ねぇ……)
俺は内心冷や汗をかきながらも、どうにかこの状況を乗り切ったのだった。
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