パラレルワールド

廣瀬純七

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水泳部の練習

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放課後。  
俺は結衣と一緒に水泳部の練習に向かっていた。  

(よりによって水泳部かよ……)  

朝から何となく嫌な予感はしていたが、まさか本当に"美紀"が水泳部だったとは……。  
しかも結衣まで一緒にいるということは、俺はこれまで普通に部活動をこなしていたはずだ。  

(いや、待て……俺、泳ぐのは嫌いじゃないけど、"女子"として泳ぐのは別問題だろ……!?)  

そんなことを考えている間に、更衣室に到着してしまった。  

「ほら、美紀、着替えよ!」  

「……あ、あぁ……」  

結衣の元気な声に返事をしながら、俺は仕方なくロッカーの前に立つ。  
結衣はさっさと制服を脱ぎ始めて、競泳水着に着替え始めた。  

(や、やばい……! これ、どうすりゃいいんだ!?)  

とはいえ、ここでモタモタしていたら逆に怪しまれる。  
俺はなるべく意識しないようにしながら、自分のロッカーを開けた。  

中には、折りたたまれた競泳水着がきちんと置かれている。  
紺色のシンプルなデザインで、名前が刺繍されているのを見て少しゾッとする。  

("田中美紀"って、しっかり書かれてる……)  

逃げ場はない。  

俺はなるべく余計なことを考えないようにしながら、ぎこちない手つきで制服を脱ぎ、競泳水着に袖を通した。  

(うわ……思ったよりピッタリしてる……)  

女子の競泳水着は締め付けが強く、体にぴったりフィットする。  
動きやすい設計にはなっているけど、俺にとっては違和感しかない。  

「美紀、準備できた?」  

結衣が声をかけてくる。  

「……う、うん……」  

なんとか返事をしながら、俺はプールサイドに向かった。  

***  

「よーし、今日のメニューは50m×10本! しっかりフォームを意識して泳ぐこと!」  

先輩の号令がかかり、部員たちが次々と水に飛び込んでいく。  
俺も流れに乗るようにして、スタート地点に立った。  

(……泳ぐしかない、か)  

スタートの合図とともに、水の中へ飛び込む。  

(――っ!)  

思ったよりスムーズに体が動く。  
クロールのフォームも自然に取れているし、息継ぎも問題ない。  

(そっか……この体は"美紀"の体だから、泳ぐのも慣れてるんだ……)  

そう気づくと、少しだけ気が楽になった。  
俺はなるべく余計なことを考えないようにしながら、次のターンへ向かって手を伸ばした。  

(まさかこんな形で水泳をすることになるとは思わなかったけど……やるしかねぇよな……)  

水しぶきを上げながら、俺は泳ぎ続けた。
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