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パラレルワールドの告白
しおりを挟む放課後。いつものように結衣と並んで歩きながら、俺はずっと迷っていた。
(この話、結衣にしても大丈夫か……?)
どう考えても普通の人なら信じないだろう。
でも、昨日の結衣の「昨日の健太、ちょっと女子みたいだったよね!」という言葉が気になっていた。
まるで、昨日の俺が"美紀"だったことを薄々感じていたような口ぶりだった。
(だったら……話してみる価値はあるかもしれない)
俺は意を決して、歩きながら口を開いた。
「なあ、結衣」
「ん? どうしたの?」
「ちょっと、信じられないような話をするかもしれないけど……聞いてくれるか?」
結衣は不思議そうな顔をしながら「何? なんか面白い話?」と軽く笑う。
「……実は、昨日の俺は"俺"じゃなかったんだ」
「え?」
「昨日のこの世界の俺は、パラレルワールドの"田中美紀"っていう名前の女の子が俺になっていて……逆に、俺はその世界で"田中美紀"になっていたんだ」
結衣は一瞬、足を止めた。
「……え?」
「つまり、俺と"田中美紀"は入れ替わっていたってことだ」
結衣はじっと俺の顔を見つめる。
「え、ちょっと待って? それって、つまり……健太は昨日、本当は女の子だったってこと?」
「そうなるな」
「うっそでしょ!? そんなことあり得るの!?」
「俺も最初は夢か何かだと思った。でも、目が覚めても"田中美紀"のままで、結衣もいたし、俺の"家族"もいた。でも、俺の存在はなくて、代わりに"田中美紀"として生活していたんだ」
結衣は呆然とした表情を浮かべたまま、言葉を失っている。
「だから、昨日の俺の様子がちょっと変だったのは、"田中美紀"が俺として過ごしていたからなんだと思う」
「…………」
沈黙が続いた。
(やっぱり、こんな話、信じられないよな……)
そう思っていた矢先、結衣はゆっくり口を開いた。
「……なんか、それ、面白いね!」
「え?」
「だって昨日の健太、本当にちょっと女の子っぽかったし……まさかそんなことが起きてたなんて!」
「……信じるのか?」
「うーん、まだ半分くらい信じられないけど……健太が本気で言ってるのは分かるから、面白いなって思った!」
結衣はニッと笑った。
「じゃあさ、その"田中美紀"って子も、向こうの世界で戸惑ってたのかな?」
「たぶん、俺と同じくらい戸惑ってたと思う」
「ふふっ、なんかちょっと会ってみたくなっちゃったな、その"田中美紀"って子!」
俺は結衣の反応を見て、ホッと息をついた。
(話してよかったのかもしれない……)
俺が経験した"異世界"の話を、結衣はただ笑いながら受け止めてくれた。
信じるかどうかは別として、こうやって話を聞いてくれるだけでも、俺は少し安心できた。
「……もしかしたら、また入れ替わることがあるかもしれないしな」
俺がポツリと呟くと、結衣は目を輝かせた。
「その時はまた教えてよ! なんか、面白いことが起こりそうだし!」
俺は苦笑しながら、結衣と並んで歩き続けた。
この世界の秘密は、まだ解明できていない。
でも、少なくとも俺には"話せる相手"がいる――それだけで、少し心が軽くなった気がした。
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