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授業後の誘い
しおりを挟む昼休みのチャイムが鳴り、授業が終わると、結衣がすぐに俺の机の横に寄ってきた。
「ねえ、美紀、一緒にトイレ行こ?」
「えっ……?」
一瞬、言葉を詰まらせる。
(や、やばい……またこの展開か……!)
俺は美紀の体で過ごすことに少しずつ慣れてきたとはいえ、やっぱり"女子トイレ"はハードルが高い。
(前にも行ったけど、やっぱり慣れねぇよ……)
「どうしたの?」
「え、あ、うん……行く……!」
変に断るのも不自然だと思い、俺はなんとか返事をした。
「よし、じゃあ行こっ!」
結衣は明るく笑いながら俺の腕を引いた。
(うぉぉ……! これは逃げられない……!)
周りの女子たちも、普通に連れ立ってトイレに向かっている。
(ここで俺だけ行かないってのもおかしいよな……落ち着け、俺は今"美紀"なんだから……!)
そう自分に言い聞かせながら、俺は結衣に連れられて女子トイレへと向かった。
### **第31章:女子トイレの緊張**
結衣に腕を引かれながら、俺は女子トイレの入り口の前で足を止めた。
(またここに来ることになるとはな……)
前回、結衣に誘われて仕方なく入った時も心臓がバクバクだったが、やはり慣れるものではない。
しかし、結衣はそんな俺の心境など気にすることもなく、ひょいっと中に入っていく。
「ほら、美紀、早く!」
「お、おう……」
(いや、おうじゃねえ……俺は美紀じゃねえんだよ!!)
心の中でツッコミを入れながらも、俺はできるだけ自然に振る舞おうと意識しながら、そろりと女子トイレへ足を踏み入れた。
中にはすでに何人かの女子がいて、手を洗っている子もいれば、鏡の前で髪を直している子もいる。
みんな当たり前のように過ごしていて、俺のことなど特に気にしていない。
(よ、よし……バレてない……!)
結衣は個室に入っていったが、俺はとりあえず手を洗うふりをして鏡の前に立つ。
(くそ……やっぱり落ち着かねぇ……)
手を洗っているふりをしながら、周りをさりげなく観察する。
改めて思うが、やっぱり男子トイレとは雰囲気が違う。
石鹸の匂いも違うし、なんか全体的に清潔感があって、可愛いハンドソープのボトルとかまで置いてある。
(こういう細かいところも、やっぱり女子トイレって感じだよな……)
そんなことを考えていると、個室から結衣が出てきた。
「ふぅ、すっきりした! 美紀もちゃんとしなくていいの?」
「えっ!? あ、いや……私は大丈夫!」
俺は慌てて手を振った。
「そっか! じゃあ、行こっか!」
結衣が特に疑問も持たずに先に出て行ったので、俺も慌てて後に続いた。
(あ、危なかった……!)
女子トイレの空気感に慣れるのは、まだまだ時間がかかりそうだった。
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