パラレルワールド

廣瀬純七

文字の大きさ
28 / 39

授業後の誘い

しおりを挟む

昼休みのチャイムが鳴り、授業が終わると、結衣がすぐに俺の机の横に寄ってきた。  

「ねえ、美紀、一緒にトイレ行こ?」  

「えっ……?」  

一瞬、言葉を詰まらせる。  

(や、やばい……またこの展開か……!)  

俺は美紀の体で過ごすことに少しずつ慣れてきたとはいえ、やっぱり"女子トイレ"はハードルが高い。  

(前にも行ったけど、やっぱり慣れねぇよ……)  

「どうしたの?」  

「え、あ、うん……行く……!」  

変に断るのも不自然だと思い、俺はなんとか返事をした。  

「よし、じゃあ行こっ!」  

結衣は明るく笑いながら俺の腕を引いた。  

(うぉぉ……! これは逃げられない……!)  

周りの女子たちも、普通に連れ立ってトイレに向かっている。  

(ここで俺だけ行かないってのもおかしいよな……落ち着け、俺は今"美紀"なんだから……!)  

そう自分に言い聞かせながら、俺は結衣に連れられて女子トイレへと向かった。

### **第31章:女子トイレの緊張**  

結衣に腕を引かれながら、俺は女子トイレの入り口の前で足を止めた。  

(またここに来ることになるとはな……)  

前回、結衣に誘われて仕方なく入った時も心臓がバクバクだったが、やはり慣れるものではない。  
しかし、結衣はそんな俺の心境など気にすることもなく、ひょいっと中に入っていく。  

「ほら、美紀、早く!」  

「お、おう……」  

(いや、おうじゃねえ……俺は美紀じゃねえんだよ!!)  

心の中でツッコミを入れながらも、俺はできるだけ自然に振る舞おうと意識しながら、そろりと女子トイレへ足を踏み入れた。  

中にはすでに何人かの女子がいて、手を洗っている子もいれば、鏡の前で髪を直している子もいる。  
みんな当たり前のように過ごしていて、俺のことなど特に気にしていない。  

(よ、よし……バレてない……!)  

結衣は個室に入っていったが、俺はとりあえず手を洗うふりをして鏡の前に立つ。  

(くそ……やっぱり落ち着かねぇ……)  

手を洗っているふりをしながら、周りをさりげなく観察する。  
改めて思うが、やっぱり男子トイレとは雰囲気が違う。  

石鹸の匂いも違うし、なんか全体的に清潔感があって、可愛いハンドソープのボトルとかまで置いてある。  

(こういう細かいところも、やっぱり女子トイレって感じだよな……)  

そんなことを考えていると、個室から結衣が出てきた。  

「ふぅ、すっきりした! 美紀もちゃんとしなくていいの?」  

「えっ!? あ、いや……私は大丈夫!」  

俺は慌てて手を振った。  

「そっか! じゃあ、行こっか!」  

結衣が特に疑問も持たずに先に出て行ったので、俺も慌てて後に続いた。  

(あ、危なかった……!)  

女子トイレの空気感に慣れるのは、まだまだ時間がかかりそうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

処理中です...