パラレルワールド

廣瀬純七

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雰囲気が違う健太

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登校中、角を曲がったところで結衣とばったり会った。  

「おはよう、健太!」  

「おう、おはよう」  

昨日のパラレルワールドの件をまだ整理しきれていない俺だったが、結衣の顔を見ると少しホッとした。  

しかし、結衣はじっと俺を見つめたあと、首を傾げながら言った。  

「やっぱり今日の健太は、昨日の健太とはちょっと違うね」  

「……どういう意味だ?」  

「なんていうか……昨日の健太は、確かに健太なんだけど、雰囲気が微妙に違ったのよね」  

俺はハッとして、思わず足を止める。  

「え? 昨日の俺って……美紀のはずだよな?」  

「うん、だから変だなって思ったの。昨日の健太は、普段の健太みたいだったんだけど、ちょっといつもと違う感じで……でも、女の子っぽい感じもなかったのよね」  

俺は混乱した。  

(昨日の俺は美紀の体だった。ってことは、昨日こっちにいた健太は、本来なら美紀が入ってるはずだよな……?)  

でも、結衣の話を聞く限り、昨日の「健太」は普段の俺と大きく変わらない様子だったらしい。  

(じゃあ、昨日の美紀の中身は……誰だったんだ?)  

「結衣、それってつまり……昨日の俺は美紀だったはずなのに、こっちの健太の中身は美紀っぽくなかったってことか?」  

「うん……私も不思議だったんだけど、昨日の健太は普通に男子っぽくて、美紀っぽさが全然なかったのよね」  

「……そんなことがあるのか?」  

入れ替わっていたはずの美紀が、昨日の俺と同じような違和感を覚えずに過ごしていた……?  

(まさか……別の何かが関わってる?)  

ますます、この現象の正体がわからなくなってきた。

### **もう一人の「俺」**  

昼休み、弁当を広げながら俺は今朝の結衣との会話を思い返していた。  

(昨日の俺は美紀になっていた……なら、こっちにいた「健太」は美紀のはずだった……でも、結衣の話だと、昨日の俺は普段の俺みたいだったって……)  

どう考えてもおかしい。  

「……待てよ」  

ふと、昨日の世界のことを思い出す。  

(あの世界では俺は美紀で、そして……俺には双子の兄の俺がいた……!)  

思い出した途端、全身に鳥肌が立った。  

(そうか……昨日の世界では、美紀の兄として俺が存在してたんだ。じゃあ、昨日のこっちの俺は——)  

「……双子の兄の俺だったんじゃないか?」  

そう考えると、全てが繋がる。  

昨日の美紀の世界で「俺」は美紀として過ごしていた。  
一方、こちらの世界で「俺」として存在していたのは、あの世界の「兄の俺」だったんじゃないか?  

(だから、結衣は「昨日の健太は雰囲気がちょっと違った」って言ったんだ……!)  

俺とそっくりな「兄の俺」がこっちに来ていたとすれば、確かに健太の体ではあるけど、微妙に違和感があったはずだ。  

「……まじかよ……」  

俺は弁当の箸を持つ手を止めて、唾を飲み込んだ。  

(入れ替わっていたのは俺と美紀だけじゃなくて、もう一人……双子の兄の俺も関わっていたってことか……?)  

この現象、一体どこまで広がっているんだ……?
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