パラレルワールド

廣瀬純七

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俺はどこへ向かうのか?

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授業中、ノートを開いてはいたが、ほとんど内容が頭に入ってこなかった。  

(俺は最終的にどうなるんだ……?)  

ふと、昨日までの出来事を振り返る。  

最初は美紀になった。  
次は美紀と双子の兄妹という世界に行った。  
そして今日は、元の世界に戻ったと思ったら、昨日の「俺」は俺じゃなかった……。  

まるで、俺という存在が不安定になっているような感覚があった。  

(このまま俺は美紀になってしまうのか……? それとも、あの世界の俺の兄になってしまうのか? それとも……)  

考えれば考えるほど、ゴールが見えない。  

ネットで調べた情報では、「一週間から二週間で収まるか、もしくは別のパラレルワールドに行く可能性がある」とあった。  

(もし、元の俺に戻れなかったら……?)  

自分が自分でなくなる恐怖が、背筋を冷たくした。  

(美紀として生きる未来……兄の俺として生きる未来……いや、それとも、まだ見ぬ別の世界に行く可能性もある……?)  

答えはない。  

ただ、確実に言えることは——俺の「存在」は、今も揺れ続けているということだった。

### **どの俺でも、よろしくな**  

放課後、結衣と並んで歩きながら、俺はずっと考えていた。  

(俺は最終的にどうなるんだろう……)  

美紀として生きるのか?  
美紀の兄として生きるのか?  
それとも、俺のままでいられるのか?  

だけど、どの世界に行っても、変わらないものがある。  

それは——結衣の存在だった。  

美紀の世界でも、兄がいる世界でも、結衣は結衣のままだった。  
結衣だけは、どの世界でも変わらず、俺のそばにいた。  

だから、俺は笑いながら言った。  

「なあ、結衣」  

「ん? なに?」  

「最終的に俺の中身が誰になっても……俺のこと、よろしく頼むな!」  

結衣は一瞬ポカンとした顔をしたが、すぐにクスッと笑った。  

「なにそれ、変なの!」  

「いや、マジで頼むぞ?」  

「ふふっ、健太は健太でしょ?」  

「……かもな。でも、もし俺が美紀になったとしても、兄になったとしても……結衣がいてくれるなら、まあいいかなって思う」  

「……それって、結局どの世界でも私と一緒にいたいってこと?」  

「お、おい! そういう意味じゃねーよ!」  

「ふふっ、冗談だよ。でも、どの健太でも、私の幼馴染には変わりないからね!」  

結衣はそう言って、いつものように笑った。  

——きっと、どの世界に行っても、俺は結衣に救われるんだろうな。  

俺はそう思いながら、結衣と並んで帰り道を歩いていった。
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