入れ替わる女

廣瀬純七

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男子トイレで目覚めた私

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朝の光が差し込む教室で、私は机に突っ伏していた。もうすぐ授業が始まるというのに、まったくやる気が起きない。私、真希(まき)は、普通じゃない体質の持ち主だった。誰かと体が触れると、その相手と体が入れ替わる能力を持っていたのだ。

この能力、めちゃくちゃ厄介だ。人ごみを歩けば、ふとした瞬間に体が入れ替わることなんて日常茶飯事だし、一度は電車の中でサラリーマンのおじさんと入れ替わって、途方に暮れたこともある。だから、私は常に人との接触を避けて生きている。

でも、今日はやらかした。

――

「おっと、ごめん!」

廊下で友達の佐藤君が急に曲がってきて、私は避けきれずにぶつかってしまった。その瞬間、世界がぐるりと回転し、次に目が覚めたときには、見知らぬ場所に立っていた。

「ここ…どこ?」

頭が混乱している。目の前には、壁に取り付けられた大きな鏡。そして、足元にはタイル張りの床。

そして、決定的に違和感を感じたのは…鏡に映る姿。

「嘘でしょ…」

鏡に映っていたのは、佐藤君の顔だった。どうやら、また入れ替わってしまったらしい。

――

とりあえず、冷静に状況を確認するために周囲を見回す。壁には小さなドアが並んでいて、その先には小便器がずらりと並んでいることに気づいた。

「……え、男子トイレ!?」

パニックになりそうだった。自分が男子トイレにいる、しかも佐藤君の体で。

「まずい!誰かが入ってきたらどうしよう!」

焦りながらも、逃げ道を探すが、タイミングが悪かった。ドアが開く音がして、数人の男子生徒が入ってきた。

「おい、佐藤!お前、何してんだよ?」

どうやら、佐藤君の友達らしい男子が話しかけてきた。内心パニックになりながらも、私はなんとか自然に振る舞おうと努力した。

「え、ああ…なんでもない。ただ、ちょっとボーっとしてただけ。」

声が思ったよりも低く響いて、自分が佐藤君の体にいることを再認識する。友達は不審そうに首をかしげたが、特に疑問は持たずに用を足し始めた。

「早く出ないと…」

私はその場から逃げ出したくてたまらなかったが、ここで急に走り出したらかえって怪しまれる。仕方なく、冷静を装いながら一緒にトイレを出た。

――

教室に戻ると、佐藤君の体を使って日常をこなすしかなかった。心の中では常に、「どうやって戻るか?」という考えがぐるぐると回っていた。

しかし、授業が終わる頃には、私はひとつ気づいたことがあった。佐藤君の友達や周りの男子たちは、驚くほど自然体で、誰も細かいことにこだわらない。男子トイレでの出来事もそうだし、クラスでも彼らは雑談を楽しんでいて、私のことなど特に気にしていない。

「男子って、案外楽かも…?」

そんなことを考えている自分に気づいて、思わず苦笑いを浮かべた。だが、やっぱり元に戻りたいという思いが強い。どうにかして佐藤君とまた入れ替わる方法を考えないといけない。

そして、そのチャンスは意外とすぐに訪れた。昼休み、佐藤君がこっそり私に近づいてきたのだ。どうやら、彼も異変に気づいていたようだ。

「真希、これ…お前のせいだろ?」

私は黙って頷いた。すると、佐藤君は小さくため息をついた。

「まあ、いいさ。早く戻ってくれよ。」

佐藤君が手を差し出す。私は少し躊躇ったが、仕方なくその手を握った。そして、また世界がぐるりと回転し、私は自分の体に戻っていた。

――

「はぁ…男子トイレ、二度とごめんだ。」

元に戻った私は、心の底からそう思った。だが、佐藤君はニヤリと笑って言った。

「でも、男子の世界もちょっと面白かっただろ?」

そう言われて、私は苦笑いを浮かべた。それは否定できない。
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