入れ替わる女

廣瀬純七

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彼女の男子トイレ探検記

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私、佐藤彩花(さとうあやか)は、ひとつ秘密がある。触れるだけで他人と体を入れ替えることができるという能力だ。

最初は事故だった。中学生の頃、友達にふざけて肩を叩いた瞬間、目の前の景色がぐるりと変わり、次の瞬間、私は友達の体の中にいた。元に戻るには、もう一度触れ合わなければならないことを知ったのは、その後のことだ。それ以来、この能力を使うことは避けてきた。けれど、今日はどうしても、その力を使わなければならない理由があった。

「男子トイレに行きたい」

理由は簡単だ。男子トイレがどうなっているのか、ただ知りたい。それだけだった。女子トイレに入る男子なんてよく聞くが、逆は少ない。好奇心が勝ったのだ。

私の目に止まったのは、学校の廊下を歩く田中翔太(たなかしょうた)。特に目立つ男子ではないが、クラスでは比較的おとなしいタイプ。彼なら多少の冒険も乗り越えられるだろう、という勝手な理由でターゲットに決めた。

授業が終わった昼休み、私はさりげなく翔太に近づき、肩を軽く叩いた。

「お、彩花、どうした?」

瞬間、視界が一変する。目の前には私自身、つまり佐藤彩花の姿が立っていた。よし、成功だ。翔太の体に入った私は、すぐに口を開けた。

「えーと、ちょっとトイレ行ってくる」

彩花(中身は翔太)も疑問顔で頷くだけだった。翔太としてトイレに行くことは、特に疑われることもなく、私は悠々と男子トイレに足を踏み入れることができた。

---

男子トイレに入った瞬間、まず鼻をつくのは、独特の匂いだった。うん、ちょっと女子トイレとは違うかもしれない。

「ふーん、これが男子トイレか…」

興味津々で中を見回した。壁に並ぶ便器たち。女子トイレには絶対にないスタイルだ。正直、どう使うのかすらわからなかったけれど、それはそれで面白い。

でも、何か物足りなさも感じる。男子トイレがもっと汚れていたり、散らかっているのを想像していたけれど、意外ときれいだ。特に不思議なものはない。

「なーんだ、普通じゃん」

がっかりしながらも、もう少し奥へと進む。その時、背後から声が聞こえた。

「おい、翔太!」

振り向くと、クラスメイトの山口が入ってきた。まずい、ばれるかも。翔太の口調や仕草なんて、全然知らない。

「お、山口…なんだっけ?」

「あれ?お前、ちょっと変だな。まぁいいや。今日のサッカー、どこでやるか聞いたか?」

「あ、ああ、聞いてないな…」

適当に話を合わせながら、心臓はバクバク。早く出なければ。そう思ってトイレの扉を押した瞬間、背中にドンッと軽い衝撃が走った。山口がふざけて肩を叩いたのだ。

「うわっ!」

次の瞬間、視界がまた変わり、私は山口の体に入ってしまった。完全に予想外の事態だ。どうしよう、戻るためにはもう一度翔太に触れなければならない。でも、翔太の体はトイレの中に残っている。

「おい、翔太、変な顔すんなよ」と言われ、気づいた。山口の体で翔太に話しかけられている。つまり、山口の体に入った私は、今度は翔太に戻る手立てを探さないといけない。

「まずいな、これは…」

心の中で頭を抱えたが、事態はすぐには好転しない。男子トイレでの探検は、私の想像以上に大きな波乱を巻き起こしてしまったのだった。

---

### 結局

その後、なんとか山口の体から翔太に戻り、最終的には自分自身に戻れたものの、男子トイレへの探検は一度きりで十分だと感じた。好奇心は満たされたが、次はもっと安全な場所でこの能力を使おうと、心に決めた。
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