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文化祭のメイド喫茶
しおりを挟む「結衣、次の実行委員会の議題だけど、メイド喫茶のメイド役が足りないんだって。」
放課後の教室で、愛人がカバンを整理しながら話しかけてきた。結衣は少しだけ気まずさを感じた。
「それがどうしたの?僕に何か関係があるの?」
結衣は面倒くさそうに答えたが、愛人はニヤリと笑った。
「あるある!実行委員が『結衣がメイド服似合いそう』って言ってたよ。」
「えっ…メイドの服?」
結衣は思わず立ち上がった。彼女の反応を楽しむように愛人は微笑みながら続けた。
「まあ、結衣はメイド服が似合いそうだから、悪くないんじゃない?」
「僕は男だよ!」
「確かにちょっと前まではそうだったけど、外見はもう完全に女の子だよね。」
結衣は黙り込んだ。鏡に映る自分は確かに女性そのものだ。二学期が始まって以来、周囲の認識も完全に変わっていた。男子からの視線が増えたことも、トイレで困ったことも、すべてこの体のせいだ。
---
### 相談
翌日、二人は放課後の公園でベンチに座っていた。結衣が珍しく愛人を呼び出したのだ。
「なあ…」
結衣がポツリと言うと、愛人はアイスを食べながら相槌を打った。
「どうしたの?」
「その…文化祭のメイド喫茶のことなんだけどさ。」
「お、メイド服着る決心がついたの?」
「バカ言うな!」
結衣は顔を真っ赤にして否定したが、すぐに肩を落とした。
「でも、逃げられそうにないんだよ。俺、どうすればいいんだ?」
愛人はしばらく考える素振りを見せた後、真剣な表情になった。
「じゃあ、まずは楽しむことを考えようよ。どうせやるなら、恥ずかしがってるより思い切りやった方が絶対にいいって。」
「楽しむって…そんな簡単に言うけどさ。」
「結衣だって、もともと几帳面だし、人を楽しませるの好きだったでしょ?メイド喫茶なら接客がメインだし、結衣のそういうところが活きると思うよ。」
「でも、俺は…男だったんだぞ。」
結衣が視線を落とすと、愛人は優しく肩に手を置いた。
「私だってそうだったよ。でもね、性別が変わったからって、自分の中身まで変わるわけじゃない。結衣が結衣でいる限り、みんなも受け入れてくれるはずだよ。」
その言葉に、結衣は少しだけ気が楽になった。
「愛人は…本当にすごいな。」
「何言ってんの。私たちはお互い様でしょ?」
二人は顔を見合わせて笑い合った。
---
### メイド喫茶当日
文化祭の日、結衣はフリルのついたメイド服を身にまとい、鏡の前に立っていた。普段なら絶対に着ない服装だが、愛人が選んでくれたこの衣装は不思議と心地よかった。
「どう、似合ってる?」
結衣が恥ずかしながら愛人に尋ねる。
「結衣が楽しそうで何よりだよ。」
結衣は少し照れながらも笑顔を見せた。
メイド喫茶は大盛況で、結衣は次第に接客を楽しめるようになっていった。そして何より、愛人と一緒に過ごした時間が、性別が変わってしまったことへの不安を少しだけ忘れさせてくれた。
「こういうのも悪くないかもな。」
結衣は小さくつぶやきながら、次のお客さんを迎える準備をした。
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