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6.家族
「あ、あのっ、これ……母のものなんです」
ここまでして人違いだったらどうしようと思いながらロケットペンダントを開き、中の小さな肖像画をソニアさんとウォルトさんに見せる。
「……この人で間違いないですか?」
覗き込んだ二人に恐る恐る問い掛けるとソニアさんが目を細めてそっとペンダントを撫でた。
「間違いないわ、クレアよ。彼女は今どこに?」
「……七年前に、亡くなりました」
「そうだったの……」
「ふざけるな!」
突然ウォルトさんが怒鳴り声を上げ、私の肩をがしりと掴んで睨み付けてきた。
「突然クレアを拐っておいて死なせただ!?クレアを殺したのはお前達貴族だろう!あの男の子供が今更俺達に何の用だ!クレアを奪ったくせにまた何か奪いにきたのか!」
「ち、違っ……私は……」
こんな感情をぶつけられるとは思っていなかった。
ここまで強い恨みの感情をぶつけられたのは初めてだ。
「……っ……」
突然の恐怖に堪えようと歯を食い縛ってみたがぼろっと目から涙が落ちる。
「……あ」
「ウォルト!」
ウォルトさんの力が緩むと同時にソニアさんの鋭い声が飛び、ぱんっと乾いた音が響いた。
ソニアさんがウォルトさんの頬を思い切り叩いたようだ。
ウォルトさんの頬に真っ赤な手の痕がついている。
「スザンナさんを怒鳴り付けるのは間違いだと言うことくらいあなたにもわかるでしょう!」
先程の優しい姿が嘘のようにソニアさんは鋭い声でウォルトさんを叱ると、ウォルトさんを私から引き剥がす。
「すまない……けど、どうしてもあの男だけは許せない!あの男の子供というだけであんたは悪くないと、頭では分かってはいるんだ……だがっ……」
ウォルトさんは誤解しているのだ。
私が母と公爵の娘だと。
私は袖で乱暴に涙を拭うと真っ直ぐにウォルトさんを見上げる。
「私は母を誘拐した公爵とは、血が繋がっていません」
「……は?」
「どういうこと?」
ソニアさんとウォルトさんは同じ顔でこちらを見つめてくる。
私は深呼吸をして二人に知ってる事を話した。
母が公爵に無理矢理連れていかれた時にお腹には既に私がいた事や、母が公爵から暴力を受けていた事。
母の事を知って公爵家を捨てて出て来た事、母の故郷を目指していた途中で男達に追われ川に落ちた事。
全て打ち明けた。
母の事を知った経緯はリエナに伝えた時と同様、母の日記を見た事にした。
「つまり……あんたは、クレアと俺の……」
「娘、と言うことになります」
わなわなと震えだしたウォルトさんにこくりと頷いて見せる。
「つまり私の孫になるのかしら?」
「あ……はい」
ウォルトさんが母の恋人で私の父ならばソニアさんは私の祖母になる。
急に孫や娘を名乗る人間が現れたとして、すんなり受け入れられる人間はどれだけいるだろう。
見知らぬ人間を家族と紹介されて戸惑う気持ちは私にはよく分かる。
マリーナを公爵に紹介された時がそうだったから。
黙り混んでしまったウォルトさんと首を傾げているソニアさんを前に、居心地が悪くなる。
私はここに来てはいけなかったのだろうか。
母の故郷には本当の父がいて喜んで私を出迎えてくれる、一緒に暮らしてくれると思っていたが甘かった。
改めて考えてみればロケットペンダントを持ってるだけでは母とウォルトさんの娘だと証明はできない。
どうしようとぐるぐる悩んでいるとソニアさんが口を開いた。
「どうりで似ているはずだわ。スザンナさんを助けた時、クレアそっくりだって驚いたの。でも似てる人は世界に三人はいるというでしょう?きっと他人の空似なんだと思ったの……本当にクレアの娘に……私の孫に会えるなんて夢みたいだわ」
「……信じてくれるんですか?」
思わず尋ねると優しい笑顔が返ってきた。
「もちろん。だってあなたはクレアそっくりだもの、だけど口元はウォルトに似てるわね。それにほら、ウォルトと同じように首元に黒子があるわ」
ソニアさんが指摘した場所には確かに黒子がある。
微動だにしないウォルトさんを見上げると確かに首元に黒子があった。
「ねぇ、スザンナさん。公爵家と比べたら贅沢は出来ないけれどけれど、私達と一緒に暮らさない?折角こうして会えたのだもの」
「っ……はい!」
元々本当の家族に会いたくて、本当の家族と暮らしたくて公爵家を出て来た私には願ったり叶ったりだ。
ここにいれば前世の記憶で見た乙女ゲームには巻き込まれないだろう。
マリーナの殺害を企てる事になどなるはずもない。
しかしソニアさんの提案を即答で受け入れた私に待ったの声がかかった。
「待ってくれ!急に娘だと言われても……それが事実だとしても、俺はそんなすぐに受け入れられない」
ウォルトさんが俯いてそう呟く。
「ウォルト……彼女は確かにクレアの忘れ形見だわ」
「だとしても!クレアが死んでいたことすら受け止めきれないんだ!自分の子供と言われても……っ……くそっ」
「ウォルト!待ちなさい!」
ソニアさんの制止も聞かずにウォルトさんは出ていってしまった。
ここまでして人違いだったらどうしようと思いながらロケットペンダントを開き、中の小さな肖像画をソニアさんとウォルトさんに見せる。
「……この人で間違いないですか?」
覗き込んだ二人に恐る恐る問い掛けるとソニアさんが目を細めてそっとペンダントを撫でた。
「間違いないわ、クレアよ。彼女は今どこに?」
「……七年前に、亡くなりました」
「そうだったの……」
「ふざけるな!」
突然ウォルトさんが怒鳴り声を上げ、私の肩をがしりと掴んで睨み付けてきた。
「突然クレアを拐っておいて死なせただ!?クレアを殺したのはお前達貴族だろう!あの男の子供が今更俺達に何の用だ!クレアを奪ったくせにまた何か奪いにきたのか!」
「ち、違っ……私は……」
こんな感情をぶつけられるとは思っていなかった。
ここまで強い恨みの感情をぶつけられたのは初めてだ。
「……っ……」
突然の恐怖に堪えようと歯を食い縛ってみたがぼろっと目から涙が落ちる。
「……あ」
「ウォルト!」
ウォルトさんの力が緩むと同時にソニアさんの鋭い声が飛び、ぱんっと乾いた音が響いた。
ソニアさんがウォルトさんの頬を思い切り叩いたようだ。
ウォルトさんの頬に真っ赤な手の痕がついている。
「スザンナさんを怒鳴り付けるのは間違いだと言うことくらいあなたにもわかるでしょう!」
先程の優しい姿が嘘のようにソニアさんは鋭い声でウォルトさんを叱ると、ウォルトさんを私から引き剥がす。
「すまない……けど、どうしてもあの男だけは許せない!あの男の子供というだけであんたは悪くないと、頭では分かってはいるんだ……だがっ……」
ウォルトさんは誤解しているのだ。
私が母と公爵の娘だと。
私は袖で乱暴に涙を拭うと真っ直ぐにウォルトさんを見上げる。
「私は母を誘拐した公爵とは、血が繋がっていません」
「……は?」
「どういうこと?」
ソニアさんとウォルトさんは同じ顔でこちらを見つめてくる。
私は深呼吸をして二人に知ってる事を話した。
母が公爵に無理矢理連れていかれた時にお腹には既に私がいた事や、母が公爵から暴力を受けていた事。
母の事を知って公爵家を捨てて出て来た事、母の故郷を目指していた途中で男達に追われ川に落ちた事。
全て打ち明けた。
母の事を知った経緯はリエナに伝えた時と同様、母の日記を見た事にした。
「つまり……あんたは、クレアと俺の……」
「娘、と言うことになります」
わなわなと震えだしたウォルトさんにこくりと頷いて見せる。
「つまり私の孫になるのかしら?」
「あ……はい」
ウォルトさんが母の恋人で私の父ならばソニアさんは私の祖母になる。
急に孫や娘を名乗る人間が現れたとして、すんなり受け入れられる人間はどれだけいるだろう。
見知らぬ人間を家族と紹介されて戸惑う気持ちは私にはよく分かる。
マリーナを公爵に紹介された時がそうだったから。
黙り混んでしまったウォルトさんと首を傾げているソニアさんを前に、居心地が悪くなる。
私はここに来てはいけなかったのだろうか。
母の故郷には本当の父がいて喜んで私を出迎えてくれる、一緒に暮らしてくれると思っていたが甘かった。
改めて考えてみればロケットペンダントを持ってるだけでは母とウォルトさんの娘だと証明はできない。
どうしようとぐるぐる悩んでいるとソニアさんが口を開いた。
「どうりで似ているはずだわ。スザンナさんを助けた時、クレアそっくりだって驚いたの。でも似てる人は世界に三人はいるというでしょう?きっと他人の空似なんだと思ったの……本当にクレアの娘に……私の孫に会えるなんて夢みたいだわ」
「……信じてくれるんですか?」
思わず尋ねると優しい笑顔が返ってきた。
「もちろん。だってあなたはクレアそっくりだもの、だけど口元はウォルトに似てるわね。それにほら、ウォルトと同じように首元に黒子があるわ」
ソニアさんが指摘した場所には確かに黒子がある。
微動だにしないウォルトさんを見上げると確かに首元に黒子があった。
「ねぇ、スザンナさん。公爵家と比べたら贅沢は出来ないけれどけれど、私達と一緒に暮らさない?折角こうして会えたのだもの」
「っ……はい!」
元々本当の家族に会いたくて、本当の家族と暮らしたくて公爵家を出て来た私には願ったり叶ったりだ。
ここにいれば前世の記憶で見た乙女ゲームには巻き込まれないだろう。
マリーナの殺害を企てる事になどなるはずもない。
しかしソニアさんの提案を即答で受け入れた私に待ったの声がかかった。
「待ってくれ!急に娘だと言われても……それが事実だとしても、俺はそんなすぐに受け入れられない」
ウォルトさんが俯いてそう呟く。
「ウォルト……彼女は確かにクレアの忘れ形見だわ」
「だとしても!クレアが死んでいたことすら受け止めきれないんだ!自分の子供と言われても……っ……くそっ」
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ソニアさんの制止も聞かずにウォルトさんは出ていってしまった。
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