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31.もう一人の転生者
リエナは自分には前世の記憶があると語った。
その中にはマリーナを主人公とした乙女ゲームをやりこんだ記憶もあり、身分は低いと言えど貴族でありながら裕福な生活を送れない事に不満を抱いていたリエナはその記憶を有効活用しようと考えた。
彼女は前世の記憶を取り戻してからずっとマリーナがジークさんのルートに入るように誘導して二人を結婚させ、自分はマリーナの専属侍女として厚待遇の職場と地位を得られるように何年も動いてきたと語る。
幼い私に優しかったのも、飼い慣らして思い通りに操るためだったそうだ。
「ジーク様の事だって、本当に殺す気は無かったのよ?近くにいて何かあれば助けるつもりだったし。まさかこんな風になるなんてね」
些細な失敗のように軽く話しているが、王弟の命を狙ったのだ。
軽く済ませていい話ではないし、死刑になるほどの罪になる。
それなのに彼女は飄々としていた。
「リエナ……あなた自分が何をしたかわかってるの?」
軽々しいその態度に思わずそう告げれば彼女はにっこりと微笑みを浮かべた。
「もちろんよ、分かってるわ。自分が無罪放免にならないこともね。良くて一生牢屋生活、悪くて死刑ってところかしら?」
「だったらどうして」
そんな態度でいられるのか、という私の言葉は彼女の笑い声にかき消された。
「ふふふ、ははっ!何それ、自分のやったことを反省しろってお説教?それとも死刑になりたくなかったら態度を改めろっていいたいのかしら?悪いけど私は自分のしたことを後悔してないわ。楽々勝てるゲームだと思って仕掛けたら自分の作戦不足で負けたってだけの話よ」
リエナはひとしきり笑った後、私の方をまっすぐ見つめた。
「この人生ではもう詰んじゃったから諦めるしかないけど、次の人生ではもっとうまくやる。それだけのことだわ」
どうやら彼女はまた自分が転生すると思っているらしい。
狂っているとしか思えない。
どこからその自信がくるのか分からないけれどもう話は済んだ。
私が信じていた、大好きだったリエナは最初から居なかった、それだけの話だ。
もうここにいる意味もない。
私はリエナに背を向けジークさんと共に牢屋を出た。
しばらく冷たく狭い牢屋にいたせいか、外の空気が暖かく感じる。
「……スザンナ」
不意に声をかけられ振り返るとジークさんがこちらを見つめていた。
「その……大丈夫か?」
一瞬なんのことかと首をかしげたがリエナの事を言っているのだろう。
以前、ジークさんには私が公爵家にいた時の話をした。
その時に世話をしてくれたリエナのことも話していたから私が傷付いているのではないかと心配してくれているのだと思う。
「大丈夫です」
だから笑って答えた。
ショックじゃないと言えば嘘になるが我慢できないほどじゃないし、泣くほどでもない。
そう思っているのにジークさんがそっと私の手を握る。
「そうか……」
顔を見上げるとジークさんの方が苦しそうに見えた。
そんな顔しなくていいのに。
私は本当に大丈夫なのに。
そう思いながらも言葉に出せないのは、自分が傷ついていることを認められないくらい私の心が弱いからかもしれない。
(参ったなぁ……)
こういう優しさは勘弁して欲しい。
うっかりすがり付きたくなってしまうから。
「帰りましょうか」
「あぁ」
ジークさんへの燻る想いに気がつかない振りをしながらジークさんと迎えの馬車まで歩く。
握られた手は馬車に乗るまで離されることはなかった。
その中にはマリーナを主人公とした乙女ゲームをやりこんだ記憶もあり、身分は低いと言えど貴族でありながら裕福な生活を送れない事に不満を抱いていたリエナはその記憶を有効活用しようと考えた。
彼女は前世の記憶を取り戻してからずっとマリーナがジークさんのルートに入るように誘導して二人を結婚させ、自分はマリーナの専属侍女として厚待遇の職場と地位を得られるように何年も動いてきたと語る。
幼い私に優しかったのも、飼い慣らして思い通りに操るためだったそうだ。
「ジーク様の事だって、本当に殺す気は無かったのよ?近くにいて何かあれば助けるつもりだったし。まさかこんな風になるなんてね」
些細な失敗のように軽く話しているが、王弟の命を狙ったのだ。
軽く済ませていい話ではないし、死刑になるほどの罪になる。
それなのに彼女は飄々としていた。
「リエナ……あなた自分が何をしたかわかってるの?」
軽々しいその態度に思わずそう告げれば彼女はにっこりと微笑みを浮かべた。
「もちろんよ、分かってるわ。自分が無罪放免にならないこともね。良くて一生牢屋生活、悪くて死刑ってところかしら?」
「だったらどうして」
そんな態度でいられるのか、という私の言葉は彼女の笑い声にかき消された。
「ふふふ、ははっ!何それ、自分のやったことを反省しろってお説教?それとも死刑になりたくなかったら態度を改めろっていいたいのかしら?悪いけど私は自分のしたことを後悔してないわ。楽々勝てるゲームだと思って仕掛けたら自分の作戦不足で負けたってだけの話よ」
リエナはひとしきり笑った後、私の方をまっすぐ見つめた。
「この人生ではもう詰んじゃったから諦めるしかないけど、次の人生ではもっとうまくやる。それだけのことだわ」
どうやら彼女はまた自分が転生すると思っているらしい。
狂っているとしか思えない。
どこからその自信がくるのか分からないけれどもう話は済んだ。
私が信じていた、大好きだったリエナは最初から居なかった、それだけの話だ。
もうここにいる意味もない。
私はリエナに背を向けジークさんと共に牢屋を出た。
しばらく冷たく狭い牢屋にいたせいか、外の空気が暖かく感じる。
「……スザンナ」
不意に声をかけられ振り返るとジークさんがこちらを見つめていた。
「その……大丈夫か?」
一瞬なんのことかと首をかしげたがリエナの事を言っているのだろう。
以前、ジークさんには私が公爵家にいた時の話をした。
その時に世話をしてくれたリエナのことも話していたから私が傷付いているのではないかと心配してくれているのだと思う。
「大丈夫です」
だから笑って答えた。
ショックじゃないと言えば嘘になるが我慢できないほどじゃないし、泣くほどでもない。
そう思っているのにジークさんがそっと私の手を握る。
「そうか……」
顔を見上げるとジークさんの方が苦しそうに見えた。
そんな顔しなくていいのに。
私は本当に大丈夫なのに。
そう思いながらも言葉に出せないのは、自分が傷ついていることを認められないくらい私の心が弱いからかもしれない。
(参ったなぁ……)
こういう優しさは勘弁して欲しい。
うっかりすがり付きたくなってしまうから。
「帰りましょうか」
「あぁ」
ジークさんへの燻る想いに気がつかない振りをしながらジークさんと迎えの馬車まで歩く。
握られた手は馬車に乗るまで離されることはなかった。
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