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3.必殺戦隊ナナクサ1

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時を経て2年。
わたくしは私立の小学校、慎一と優二は公立の小学校へあがりました。
勿論今でも仲良しですわよ!先週の日曜日には水族館へ行きましたわ!

二人とも小学校でもモテモテな様でランドセルから少女達の思いが詰まったラブレターがドサドサと出てきましたわ!
ずっと漫画でしか見たことなかったのですけど、まさしく滝の様に。あの時の一瞬だけ沈んだ空気感は忘れられませんわ。

というかいいわねラブレター!
文武両道、聡明でかわいい完璧令嬢のはずなのに一通も貰えないのは何故なのかしら!?
シャイだわ!まだ小学生だからみんなラブレターなんて恥ずかしいと思うシャイなのね!

などと憤っていた所、優二に「怒るところはそこなのか」と笑われてしまったのは新しい記憶ですわね。


時に、東鳳音家では社会貢献活動として、様々な福祉施設や学校に支援活動を行っております。
社会貢献は良家の当然の勤めであり、その貢献先に不幸が起これば勿論手を差し伸べるのは当たり前の事ですわ。

「と、言うことですのよ!お父様!!」

沢山の本が縦に延びた本棚に綺麗に並べられている父様の書斎では、少し困ったように笑う父様と、無い胸を張り後ろに並ぶ子供達を先導するように立ち塞がるわたくしがおりました。

「理屈は理解できたよ。麗香はまだ7歳なのに賢くて他人想いでお父様も誇らしいな」

文机に肘をついて、組み合わせた手の上に顎をのせる仕草をする父様は気品がにじみ出ててナイスイケおじです。
でも今は惚れ惚れしている場合ではないのですわ!

「理屈の理解ではなく了承を頂きたいんですの、お父様。」
「ううん、そうは言ってもねぇ…身元不明の孤児院の子供を麗香の私兵として東鳳音で育てる、っていうのはねぇ…。お父様は心配だなぁ」

わたくしを宥めかけるようにへにゃりとした笑みを見せる。
今、わたくしは東鳳音家の当主たる父様に拾った子供達を手元で育て上げ、私兵にしたいと打診した。

始まりは一本の電話でしたの。
土地を管理していた部署から孤児院の院長が支援金を横領し孤児院から消えていたことが判明したと。
その孤児院を訪れたところ責任者はおらず、近くの教会の神父が子供達の様子を伺っている。そんな現状だったのです。

父様が神父様とお話している間にわたくしは子供達ひとりひとりに声をかけてお話していましたが、みんなやはり身寄りが無いらしくここが潰れると行く宛も無いのだと言います。
新しい孤児院に預けるのが正当な筋道ではありますが、わたくしには野望があったのです。

中性の貴族が昔持っていた、家ではなく自分に仕え、秘密裏に動かせる私兵。つまり秘密兵器が欲しかったのです。
わたくしが例えばの話で提案してみたところ、7人の子供達がわたくしについていきたいと答えてくれたのです。

「この子達はもう身寄りが無いのです。東鳳音が衣食住を与える代わりに東鳳音の大事な娘を守る兵になるには良い条件ではございませんこと?何かが起きてもほかの家に面倒をかけることもございませんわ」
「不祥事が起きた時、誰が責任を持つと言うんだい?」
「わたくしが持ちますわ。何かありましたら、わたくしが責任持って対処いたします。お父様の言う事も是非問わず従いますわ」

憧れだけではない、家の名を背負う者の責任を果たせる試みでもある。
自分以外の他人の命であり人生を背負う事になる。固まった意思を視線に込めた。

父様は小さく嘆息し、わたくしの後ろに並ぶ子供達から緊張が漂う。

「……わかった。いいよ。ただし育成は僕に任せること。いいかな?」
「~!父様ありがとう!大好きよ!」

嬉しさ余って父様の胸に飛び込むと、父様もぎゅうと抱き返してくれた。わたくしの覚悟が伝わった様ですわ。

子供達からもホッとした安堵の声が細々と聞こえる。
父様はわたくしの頭を撫でる手を止めず、さて、と言いながら子供達の方に向き合った。

「この東鳳音の人間になると言うことは一流の教育を受けて貰わないといけないね。それに君たちは7人もいるから役割分担しよう。ベースの教育から適正の能力も伸ばさないと。
…3日後から君たちの教育を始めよう。それと今までの名前は捨ててもらう。いいかな?」

ピリッとした緊張が走る。
もう、ここには孤児院出の哀れな子供達と、お金持ちのお嬢様とお父様じゃない。
生まれたてでも仕える者と主人がそこにいた。

子どもたちはビシリと背筋を正すと、真っ直ぐ父様に向き合って声をそろえて「はい」と返事した。

わたくしは勿論異論はない。3日後とは随分と早いけれど、きっと子供達はそれでも遅いと思うのかもしれない。
父様の言葉はいつでもわたくしを奮い立たせてくれる。カリスマというものなのかしら。

「さて、名前だけど…それは麗香が決める事だ。」
「わたくしでいいの?」
「麗香が拾ってきたんだ、君が主人だろう?」

まあまあ!わたくしでいいのね!どうしようかしら。
子どもたちからは期待のこもった眼差しが向けられて安易に決められない事がわかる。
せ、責任重大だわ…!早速発生したわ、責任問題!
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