超能力者は探偵に憧れる

田中かな

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6.だいたいわかったわ

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出光社長を殺害した容疑者の1人、社長秘書の檜山翔子さんには犯行時に別の場所での目撃証言があった。これで、容疑者は副社長の福留さん、記者の木ノ本さん、そして樹玖子さんの友達で作家の皐月さんの3人に絞られたことになる。
でも、僕達は犯人が誰か知っている。犯人は記者の木ノ本さんだ。僕のサイコメトリーで見ただけだからまだ証拠はないけれど、犯行ができた人物が少なくなったのは大きな前進だと思う。

「これでまた木ノ本さんが犯人である証明に一歩近づきましたね、所長。」

こっそり樹玖子さんに耳打ちする。

「え、ええそうね。」

あれ?なんだか浮かない顔をしている。出鼻をくじかれて調子がくるったのかな。

「とはいえやることは変わらないわ。もう少し話を聞きに行きましょう。」

僕達は調査のため容疑者の話を聞くことにした。まずは皐月さんだ。

「また来たのね樹玖子。どうしたの?なにかわかった?」

皐月さん、さっきまで顔色が悪かったけど少しは回復したみたいだ。

「いいえ、まだ全然よ。」

「そう…力になれなくてごめんね。」

「そんなことないわ。ねえ、もう少し話を聞かせてもらってもいい?」

「ええ、でも。見たことはみんな話をしちゃったけど…」

「なら…事件前の打ち合わせについて教えてもらえる?」

打ち合わせか。そこで皐月さんや木ノ本さんは黄金の万年筆を見ていたから容疑者になったんだ。

「打ち合わせといっても大した話ではなかったよ。当日の流れを確認していたくらい。」

「パーティーでは香織が黄金の万年筆のお披露目を手伝うはずだったのよね?」

「そう。実は今回のパーティーで万年筆を出版社のエントランスに飾ることになる予定だったの。」

「今までずっと門外不出だったのに、なぜかしらね。」

「たぶん、客寄せじゃないかな。来年の受賞パーティーでは私が次の受賞者に引き継ぎ?みたいなことをする予定だったらしいし。」

「大賞受賞者と黄金の万年筆は1年間角山出版社の顔となる予定だったわけね。」

「……うん。そうだと思う。」

皐月さんがどんどん暗くなっていく。なにか思うことがあるんだろうか。

「そういえば…香織、その…代筆を持ちかけられていたというのは本当?」

「すごいね、そんなことも知っていたんだ。本当だよ。もちろん断ったけどね。」

「そう…よかったわ。」

「もしかして、疑ってた?代筆を持ちかけられた動機で犯行に及んだんじゃないかって。」

「探偵として…可能性の1つとしてね。今では違うと確信しているけれど。」

そっか、と皐月さんは呟いて黙ってしまった。友達どうし、通じ合っているなにかがあるんだろうか。

「ありがとう、香織。また1つ前進したわ。」

「ええ。よろしく頼むわね、名探偵さん。」


「ほんと、ゴン君が犯人をみてくれたおかげで助かったわ。友達を疑わなくてすんだもの。」

「でも、それを知っているのは僕達だけ、ですよね…」

「そうね、早く証拠を集めましょう。」

「次は誰の話を聞きましょうか?犯人の木ノ本にももう一度話を聞いてみますか?」

「いいえ、彼が犯人である以上、その証言がどこまで本当かわからないわ。」

たしかに、嘘をついている可能性がある。僕の能力がサイコメトリーだけじゃなくて嘘がわかる能力もあれば便利なのにな。

「それでは他の2人に話を聞きますか?あ、でも檜山さんは機材室にいたっていう証言があるから福留さんのほうがいいでしょうか。」

「機材室…そういえば見たことなかったわね。ゴン君、案内してもらえる?」

「わかりました!」

機材室、僕が警察に電話をするために皐月さんに案内されて行った場所だ。

「ここが機材室ね。たしかに、社長室から少し距離があるから機材室にいた檜山さんには犯行は難しそうね。」

「僕と皐月さんが電話を取りに行った時も、檜山さんは機材室から出てきた直後のようでした。」

なるほどね、と言いながら樹玖子さんは機材室を見て回っている。僕としては未知の機械ばかりの部屋だから、うかつにいじって壊したら大変と思って気が気でない。

「あ、あの樹玖子さん、そんなに近づいて大丈夫ですか?」

「触らなきゃ大丈夫よ。ゴン君もこれからはこういった機械も覚えていかないとね。電子機器の時代なんだから。」

うう、助手も大変だなあ。いつか捜査も機械や化学で捜査があたりまえになるんだろうか。

「…よし、だいたいわかったわ。ねえゴン君、検証してみたいことがあるから社長室に花野刑事と香織と福留さんを呼んできてもらえないかしら?」

「3人に社長室で待っていてもらえばいいんですね、わかりました。」

「よろしくね、3人が社長室に来たらゴン君と檜山さん、木ノ本さんは隣の部屋で待機していてもらえる?私も少ししたら向かうから。」

「わかりました!」

僕は機材室を後にして、花野刑事達を呼びにいく。検証したいこととはなんだろうか。樹玖子さんにはなにかわかっていることがあるに違いない。

「花野刑事、それと皐月さんと福留さん。所長が社長室に来てほしいとのことです。」

檜山さんと木ノ本さんに部屋で待っているように伝えた後、僕達3人はしばらく待つことになった。

樹玖子さん、こないな、すぐに来ると思っていたんだけれど。でもまだ5分も経ってないし、なにか準備とかしているのかな。

しばらく待っているとガチャ、と扉が開く音がしたので振り返る。樹玖子さんかな。

「あれ?花野刑事じゃないですか?どうしてこちらへ?」

「どうして、ってお前のとこの探偵が呼んだんだろ」

皐月さんと福留さんも続けて部屋に入ってきた。
樹玖子さんが呼んだ?先に社長室の方に行ったのかな。

「あら?こっちの部屋にみんないるのね。」

「あれ?樹玖子さん…じゃなかった所長!?」

あれれ?てっきり樹玖子さんが花野刑事達を呼んだとばかり思ってたのに…違うみたいだ。

「おい、あんな放送したら他の参加者達がパニックになるんじゃないかね?」

なにやら福留さんが怒っている。放送?

「大丈夫ですよ。福留副社長。あの放送は社長室にしか流れていませんから。」

「放送があったんですか?こちらには何も聞こえてきませんでしたけど…」

「ああ、さっき放送があったんだよ、隣の部屋に来てくれって放送がな。どうやら社長室だけにみてえだが。」

そうだったのか。どうりで隣の部屋にいた僕達には聞こえなかったわけだ。

「そういえば所長、検証してみたいことってなんですか?」

「ああ、それはね、もういいの。」

「?そうなんですか…?」

いったい樹玖子さんは何がしたかったのだろう。さっきの放送と関係があるのかな。

「さて、ありがとうゴン君。みんなを集めてくれて。」

とはいえ、半分は樹玖子さんが集めたようなものだけど。

「証拠は整った。始めるわよ、ゴン君。」

「本当ですか!所長。」

どうやら樹玖子さんは木ノ本さんが社長を殺害したその背景がわかったみたいだ。こんな場で思ってしまうのは良くないことだけど、憧れの愛上樹玖子探偵の推理が見られることに少し感動してしまう。

「花野刑事!犯人がだれかわかりました。今から推理を発表します。」

「本当か!誰なんだ、教えてくれ!」

樹玖子さんのその言葉に部屋の全員に緊張がはしる。部屋の空気がさっきよりも重い。皆の視線が樹玖子さんに集まる。

「それではまず、はっきりさせておきましょうか。」

樹玖子さんは皆の前に出ていき、人さし指を突きつけながら堂々と言い放った。

「犯人は、この中にいます!」
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