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第8章 将軍への道程編
31.外河家攻略軍議
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それから数日後、志太家では八光御所において外河家攻略の軍議が開かれていた。
家臣たちが集まる中、祐宗が口を開く。
祐宗
「皆に集ってもらったのは他でもない。外河家との戦についてじゃが…」
その祐宗の言葉に家臣たちは皆が頷いていた。
そして続けて祐宗が言う。
祐宗
「忍びによる情報じゃと、何やら外河家が不穏な動きを見せておると聞く。」
すると崇冬が祐宗に対して聞き返す。
崇冬
「むっ、不穏な動き…にございますか?」
祐宗
「うむ、松永国輝が我ら志太家の名を騙って大名の外河頼隆を討ったそうじゃ。どうやら奴の策略で我ら志太家を陥れようとしておる。」
先日の忍びからの報告でもあったように外河頼隆は、志太家を名乗る刺客によって殺害されたという。
しかしこれは国輝が仕組んだ策略であり、志太家からは刺客は送り込んでいない。
家臣たちも皆が祐宗の言葉に嘘偽りが無いという事は百も承知の様子であった。
一息ついた後に、崇冬が肩を震わせながら言う。
崇冬
「松永国輝…真に卑劣な男にございますな…我が志太軍の名誉にかけてでも徹底的に潰さねばなりませぬな。」
国輝による卑怯な策略に対して崇冬は怒り心頭の様子であった。
そうしていると祐宗は次に玄名へ声をかける。
祐宗
「玄名殿、こたびの戦に出てはくれぬか?墨山の者たちを救う為にもお主の力が必要にござる故。」
どうやら玄名によって墨山国の人間を何としてでも説得させようと祐宗は考えていたようだ。
過去の志太家による戦いにおいても玄名は柳家の者たちを説得し、無力化に成功している。
こうした実績からも、今回の外河家との戦いでも兵や領民たちの心を掌握させる事を期待しての出陣依頼である。
玄名
「ははっ、説得によって平和的に墨山の者たちを正しき道へとお導きするのが仏に仕えし私の使命にございます故、その役目を喜んで引き受けましょう。」
玄名は、きりりとした表情をしていた。
そして祐宗は、義秀(頼隆)に向けて言葉をかける。
祐宗
「それから、義秀殿も出陣をお願い申す。何でも、義秀殿は幾度か墨山の地を訪れたことがあるとか?」
頼隆
「はっ、過去に放浪していた際に立ち寄ったことがございます故、多少のご案内ならば出来るかと。」
祐宗
「うむ、そうか。ではよろしく頼んだぞ。」
大村義秀は過去に墨山を訪れた事があり、国の情勢をある程度知っている、といったような設定を祐宗は作り出していた。
義秀が頼隆であるという事を知る者は祐宗と貞広以外にいないのである。
もし、それが他の者たちにも発覚する事で家中の混乱を招きかねないと祐宗は考えていた。
その為にも祐宗は頼隆に対し、自然な形で志太軍に墨山へと案内させるといった役割を与えたのであった。
祐宗
「これにて軍議を終了致す。出陣は三日後、それまで皆の者は外河家との戦に備えておくように。良いな?」
祐宗のその一声により家臣たちは解散した。
頼隆はその場に留まり、やがて祐宗と二人のみになった。
祐宗が頼隆に対して静かに声をかける。
祐宗
「頼隆殿よ、真にこれでよろしいのでござるか?」
祐宗は、今回の外河家との戦いにおいて頼隆を参戦させる事に対して戸惑っている様子である。
頼隆と頼信という実の親子との争いを避ける事が出来なかった事に対し、申し訳無さそうな表情を浮かべていた。
すると頼隆は、しっかりとした声で答える。
頼隆
「祐宗様、覚悟はとうに決めております。身内同士が戦うことなど乱世の常ではございませぬか。最早こうなった以上は遠慮は無用にござる。」
頼隆は全てが吹っ切れたような様子であった。
祐宗
「そうか…苦労をかけて済まぬな…」
祐宗は、残念そうな表情を浮かべてそう言っていた。
家臣たちが集まる中、祐宗が口を開く。
祐宗
「皆に集ってもらったのは他でもない。外河家との戦についてじゃが…」
その祐宗の言葉に家臣たちは皆が頷いていた。
そして続けて祐宗が言う。
祐宗
「忍びによる情報じゃと、何やら外河家が不穏な動きを見せておると聞く。」
すると崇冬が祐宗に対して聞き返す。
崇冬
「むっ、不穏な動き…にございますか?」
祐宗
「うむ、松永国輝が我ら志太家の名を騙って大名の外河頼隆を討ったそうじゃ。どうやら奴の策略で我ら志太家を陥れようとしておる。」
先日の忍びからの報告でもあったように外河頼隆は、志太家を名乗る刺客によって殺害されたという。
しかしこれは国輝が仕組んだ策略であり、志太家からは刺客は送り込んでいない。
家臣たちも皆が祐宗の言葉に嘘偽りが無いという事は百も承知の様子であった。
一息ついた後に、崇冬が肩を震わせながら言う。
崇冬
「松永国輝…真に卑劣な男にございますな…我が志太軍の名誉にかけてでも徹底的に潰さねばなりませぬな。」
国輝による卑怯な策略に対して崇冬は怒り心頭の様子であった。
そうしていると祐宗は次に玄名へ声をかける。
祐宗
「玄名殿、こたびの戦に出てはくれぬか?墨山の者たちを救う為にもお主の力が必要にござる故。」
どうやら玄名によって墨山国の人間を何としてでも説得させようと祐宗は考えていたようだ。
過去の志太家による戦いにおいても玄名は柳家の者たちを説得し、無力化に成功している。
こうした実績からも、今回の外河家との戦いでも兵や領民たちの心を掌握させる事を期待しての出陣依頼である。
玄名
「ははっ、説得によって平和的に墨山の者たちを正しき道へとお導きするのが仏に仕えし私の使命にございます故、その役目を喜んで引き受けましょう。」
玄名は、きりりとした表情をしていた。
そして祐宗は、義秀(頼隆)に向けて言葉をかける。
祐宗
「それから、義秀殿も出陣をお願い申す。何でも、義秀殿は幾度か墨山の地を訪れたことがあるとか?」
頼隆
「はっ、過去に放浪していた際に立ち寄ったことがございます故、多少のご案内ならば出来るかと。」
祐宗
「うむ、そうか。ではよろしく頼んだぞ。」
大村義秀は過去に墨山を訪れた事があり、国の情勢をある程度知っている、といったような設定を祐宗は作り出していた。
義秀が頼隆であるという事を知る者は祐宗と貞広以外にいないのである。
もし、それが他の者たちにも発覚する事で家中の混乱を招きかねないと祐宗は考えていた。
その為にも祐宗は頼隆に対し、自然な形で志太軍に墨山へと案内させるといった役割を与えたのであった。
祐宗
「これにて軍議を終了致す。出陣は三日後、それまで皆の者は外河家との戦に備えておくように。良いな?」
祐宗のその一声により家臣たちは解散した。
頼隆はその場に留まり、やがて祐宗と二人のみになった。
祐宗が頼隆に対して静かに声をかける。
祐宗
「頼隆殿よ、真にこれでよろしいのでござるか?」
祐宗は、今回の外河家との戦いにおいて頼隆を参戦させる事に対して戸惑っている様子である。
頼隆と頼信という実の親子との争いを避ける事が出来なかった事に対し、申し訳無さそうな表情を浮かべていた。
すると頼隆は、しっかりとした声で答える。
頼隆
「祐宗様、覚悟はとうに決めております。身内同士が戦うことなど乱世の常ではございませぬか。最早こうなった以上は遠慮は無用にござる。」
頼隆は全てが吹っ切れたような様子であった。
祐宗
「そうか…苦労をかけて済まぬな…」
祐宗は、残念そうな表情を浮かべてそう言っていた。
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