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第8章 将軍への道程編

44.墨山の戦い(12)

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殿を務める義道の軍勢による反撃を受けた外河軍。
これには外河軍の軍勢は混乱したがすぐに収まり、総攻撃が始まろうとしていた。

国輝
「義道め!儂らをこけにしたことを後悔するが良い!行けっ、お前たちよ!」

そう言うと国輝は全軍に対して総攻撃の合図を出した。
軍勢は束となり、義道らの兵を取り囲み始めていた。

義道の軍勢の兵数はおおよそ数千に対し、国輝と国時らの軍勢の兵数は数万。
これほどの大差がある両軍が衝突したとなれば外河軍が圧倒的に有利な事は言うまでも無い。
大軍に囲まれた義道の軍勢は、先程の勢いを次第に失っていく事となった。

やがて一人の兵が義道の前に駆け寄り、必死な表情で訴えかける。
それは、今まさに前線で外河軍と生死を分けた戦いを繰り広げている義道の軍勢の兵であった。


「申し上げます。義道様!我が兵たちが次々と討たれております!このままでは我ら軍勢は壊滅いたしますぞ!」

義道の軍勢は外河軍による猛攻を受け続け、兵たちが一人、また一人と討たれていた。
この兵の切羽詰まった報告を聞いた義道が眉間に皺を寄せながら重々しい口調で言う。

義道
「くっ…やはりこの兵力差では無理があったか…」

こうなる事は薄々は分かってはいた。
だが、たとえそうではあったとしても誰かが犠牲とならねば志太軍は全軍壊滅するであろう。
志太軍の殿として、盾として外河軍の脅威から祐宗らを守る事に意味があるのだ。
決して我らは捨て石などではない。
義道はそう言いたげな様子であった。

そうして毅然とした態度をして義道が声を上げる。

義道
「一人でも多くの者たちを御所へと帰すのが儂らの使命ぞ…皆の者よ、諦めるな!諦めるでない!我らは最後まで殿としての任務を全うするのじゃ!良いな?」

自らが犠牲となり、志太軍の被害を最小限に食い止める事。
それが自身たちにとっての最後の任務である。
その義道の力強い口調に兵たちも引き締まった表情をして声を上げる。


「ははっ!仰せのままに!我らも全力を尽くしまする!」

どうやら兵たちも覚悟を決めた様子であった。
すると国輝が声を上げる。

国輝
「よし、仕上げじゃ!義道らは最早袋の鼠ぞ!一気に押せ!押すのじゃ!」

外河軍は総攻撃を開始。
これに対して義道らの軍勢も、かつてない程の必死の抵抗を見せていた。
たちまち周囲は再び両軍入り乱れての混戦となったが、外河軍が有利である事には変わりは無かった。
それ故、外河軍によって義道らの軍勢を完全に取り囲むまでにはそう時間はかからなかったようである。

国時
「義道殿よ、お主らの軍勢は我が軍が完全に包囲いたした。観念なされよ!」

義道に対してそう声をかけた国時は、義道を目掛けて一気に走り出す。
そうして国時は義道に接近するやいなや素早く取り押さえて捕縛し、大声を上げる。

国時
「志太軍武将 大村義道、沖国時が捕らえたり!」

義道
「ぐっ…不覚なり…」

義道は悔しげな表情を浮かべていた。

国輝
「国時よ、よくやった!この戦、我が外河軍の勝ちにござる!」

国時の報告を耳にした国輝は、早々と勝利宣言をしていた。
そして捕縛され、自由を奪われた義道を下目にしながら国輝が口を開く。

国輝
「さぁ大村義道殿よ、観念いたすが良い。」

すると義道は覚悟を決めた表情をし、国輝らに対して淡々と述べ始める。

義道
「最早これまでか…早う斬るが良い。じゃがこれだけは覚えておかれよ。お主らは必ずや志太家の名の下によって成敗されるということをな。」

義道の言葉を聞いた国輝は鼻で笑いながら答える。

国輝
「言いたいことはそれだけにござるか?ふっ、戦に敗れた者の声なぞただの戯言にしか過ぎぬわ。おい国時よ、お望み通りに義道を斬って捨てよ。」

国時
「はっ。では義道殿、御免いたす!」

国時は義道の首を目掛けて勢い良く刀を振り下ろした。
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