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第8章 将軍への道程編
47.義秀の正体
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一方、墨山国では国輝と国時の二人が何やら会話を始めていた。
国時
「先の戦は我らの勝利で志太家は外河家の強さが良く分かったことにございましょうな。」
国時は墨山の戦いに外河軍が勝利した事に対して誇らしげな表情をしていた。
すると国輝が心配した様子で言う。
国輝
「うむ、確かにそうではあるがな。じゃが一つ、大きな問題がこれから起きることになるやもしれぬ…」
国時
「問題、にございますか?そう言えば、あの時に国輝様が申されておりましたな。」
国輝は、先の戦いにおいて何やら気にかかる部分があるようだ。
やがて国輝が深刻な表情をして口を開く。
国輝
「国時よ、儂が思うに…頼隆の奴は死んではおらぬ。生きておるぞ…」
国時
「何ですと?頼隆はあの時、我らが始末したはずではございませぬか?」
頼隆は現在も生きているのでは無いか。
国輝のその発言に対して国時は驚いた様子を見せていた。
それもそのはず、頼隆は国輝らの策略によって始末をしたはずだからである。
険しい山の崖に追い詰められた頼隆は、そこから国輝らの手によって突き落とされた。
崖の下には激しい濁流が渦巻く滝壺があり、頼隆はそこに飲み込まれるように落下していった。
国輝
「じゃがあの時、頼隆の屍を直接に確認しておらなかったじゃろう?それ故、奴が生きておってもおかしくは無かろう。」
国輝らは頼隆を崖から突き落とした直後にその場を立ち去った為、頼隆の死亡確認を行っていなかったのだ。
それ故に、頼隆は死なずに一命をとりとめていた可能性も無いとは言い切れないであろう。
そして国輝が続けて言う。
国輝
「我らの反撃に遭った志太軍を退却へと導いておった将がおったじゃろう。その時の将が、あやつらしき姿をしておったのを儂は確かに見たのじゃ。」
国輝は、志太軍との戦いで軍勢の中にいた義秀(頼隆)を見かけていた。
義秀(頼隆)の姿に国輝は、何とも言えぬ既視感を感じていた。
そしてその既視感は、後に明らかなものとなった。
退却時のどさくさで義秀(頼隆)の顔を覆っていた頭巾が一瞬ではあったが外れてしまい、素顔を晒してしまったのである。
その一瞬を見逃す事なく見つけた国輝は、義秀が頼隆である事をこの時に認識したという。
国時
「志太軍を退却に導いた将…大村義秀、にございましょうか?何でもその者は、祐藤と義道らの遠縁であるとの噂にございますが。」
外河家では墨山の戦いの後に義秀が大村家の人間であるという情報が広まっていており、国輝の耳にも入っていたようである。
しかし国輝は、国時のその言葉に対して否定して言う。
国輝
「大村家でかような者が今になって将として現れるというのも変な話と思わぬか?そもそも義秀と申す者は真におったのかさえも怪しいでな。」
大村家は代々が農家を営むいわば平々凡々な家系である。
そのような家系に生まれた者が志太家のような大名家に家臣として新たに召し抱えられ、さらにその後すぐに外河家との戦いに出陣させている。
それも、志太家の今後の運命を左右すると言っても良いほどの重大な戦の場に採用されて間もない者を抜擢するというのであるから、義秀はよほどの実力の持ち主なのであろうか。
最も祐藤や義道のような天性の抜きん出た才能の持ち主であれば話は別ではあるが、基本的には平々凡々な人間ばかりと思われる大村家にそのような人物が多くいる事など有り得るのであろうか、と国輝は考えていたようである。
国輝
「それに奴はこの墨山の地で手際良く混乱した軍勢を見事に退却へと導いておる。墨山の地を良く知り尽くしておる者で無ければここまでは上手く退却はできまい。」
墨山国の地形は非常に入り組んでおり、この地に住む者でさえも道に迷う事もしばしばあるという。
他国の者がそのような地に足を踏み入れたとなれば道に迷うはなおさらの事であろう。
しかし、義秀という男は迷う事無く志太軍の兵たちを導いて墨山の国からの退却に成功している。
国輝は、この出来事を見て義秀が頼隆である事を確信したと言う。
この話を聞いた国時は納得した様子で深く頷いた後に口を開く。
国時
「ふむ、確かにいわれてみればその通りにございますな…国輝様、如何なされましょうか?」
国輝
「だとすれば、早めに儂らが手を打っておかねばなるまいな…まぁ、遅かれ早かれやらねばならぬことではござるがな。」
国輝は腕を組みながら真剣な表情をしてそう言っていた。
国時
「先の戦は我らの勝利で志太家は外河家の強さが良く分かったことにございましょうな。」
国時は墨山の戦いに外河軍が勝利した事に対して誇らしげな表情をしていた。
すると国輝が心配した様子で言う。
国輝
「うむ、確かにそうではあるがな。じゃが一つ、大きな問題がこれから起きることになるやもしれぬ…」
国時
「問題、にございますか?そう言えば、あの時に国輝様が申されておりましたな。」
国輝は、先の戦いにおいて何やら気にかかる部分があるようだ。
やがて国輝が深刻な表情をして口を開く。
国輝
「国時よ、儂が思うに…頼隆の奴は死んではおらぬ。生きておるぞ…」
国時
「何ですと?頼隆はあの時、我らが始末したはずではございませぬか?」
頼隆は現在も生きているのでは無いか。
国輝のその発言に対して国時は驚いた様子を見せていた。
それもそのはず、頼隆は国輝らの策略によって始末をしたはずだからである。
険しい山の崖に追い詰められた頼隆は、そこから国輝らの手によって突き落とされた。
崖の下には激しい濁流が渦巻く滝壺があり、頼隆はそこに飲み込まれるように落下していった。
国輝
「じゃがあの時、頼隆の屍を直接に確認しておらなかったじゃろう?それ故、奴が生きておってもおかしくは無かろう。」
国輝らは頼隆を崖から突き落とした直後にその場を立ち去った為、頼隆の死亡確認を行っていなかったのだ。
それ故に、頼隆は死なずに一命をとりとめていた可能性も無いとは言い切れないであろう。
そして国輝が続けて言う。
国輝
「我らの反撃に遭った志太軍を退却へと導いておった将がおったじゃろう。その時の将が、あやつらしき姿をしておったのを儂は確かに見たのじゃ。」
国輝は、志太軍との戦いで軍勢の中にいた義秀(頼隆)を見かけていた。
義秀(頼隆)の姿に国輝は、何とも言えぬ既視感を感じていた。
そしてその既視感は、後に明らかなものとなった。
退却時のどさくさで義秀(頼隆)の顔を覆っていた頭巾が一瞬ではあったが外れてしまい、素顔を晒してしまったのである。
その一瞬を見逃す事なく見つけた国輝は、義秀が頼隆である事をこの時に認識したという。
国時
「志太軍を退却に導いた将…大村義秀、にございましょうか?何でもその者は、祐藤と義道らの遠縁であるとの噂にございますが。」
外河家では墨山の戦いの後に義秀が大村家の人間であるという情報が広まっていており、国輝の耳にも入っていたようである。
しかし国輝は、国時のその言葉に対して否定して言う。
国輝
「大村家でかような者が今になって将として現れるというのも変な話と思わぬか?そもそも義秀と申す者は真におったのかさえも怪しいでな。」
大村家は代々が農家を営むいわば平々凡々な家系である。
そのような家系に生まれた者が志太家のような大名家に家臣として新たに召し抱えられ、さらにその後すぐに外河家との戦いに出陣させている。
それも、志太家の今後の運命を左右すると言っても良いほどの重大な戦の場に採用されて間もない者を抜擢するというのであるから、義秀はよほどの実力の持ち主なのであろうか。
最も祐藤や義道のような天性の抜きん出た才能の持ち主であれば話は別ではあるが、基本的には平々凡々な人間ばかりと思われる大村家にそのような人物が多くいる事など有り得るのであろうか、と国輝は考えていたようである。
国輝
「それに奴はこの墨山の地で手際良く混乱した軍勢を見事に退却へと導いておる。墨山の地を良く知り尽くしておる者で無ければここまでは上手く退却はできまい。」
墨山国の地形は非常に入り組んでおり、この地に住む者でさえも道に迷う事もしばしばあるという。
他国の者がそのような地に足を踏み入れたとなれば道に迷うはなおさらの事であろう。
しかし、義秀という男は迷う事無く志太軍の兵たちを導いて墨山の国からの退却に成功している。
国輝は、この出来事を見て義秀が頼隆である事を確信したと言う。
この話を聞いた国時は納得した様子で深く頷いた後に口を開く。
国時
「ふむ、確かにいわれてみればその通りにございますな…国輝様、如何なされましょうか?」
国輝
「だとすれば、早めに儂らが手を打っておかねばなるまいな…まぁ、遅かれ早かれやらねばならぬことではござるがな。」
国輝は腕を組みながら真剣な表情をしてそう言っていた。
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