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第3章
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「ちょ、ちょい待ちいな。そない警戒せんでええよ。君の主人に何かするつもりはあらへん」
先ほど襲い掛かかられたのを思い出したのか、ガロンは両手を上げたままソファーに背を付けた。リィに向けていた視線を康泰へ戻す。
「もちろん、兄さんを詮索するつもりもあらへんよ。どうせ今後の付き合いで色々と分かるやろうし、折角の祈誓を無駄にはしとうないしな」
楽しそうなガロンを眺めながら、康泰は胸中で息を吐き出した。現状、害は無いが将来的に何かしらの障害に成り兼ねない。
(…ま、いっか)
ほんの一瞬だけ不安は過ぎったが、既に祈誓は結ばれてしまっている。強制的に解除する事も出来るのだろうが、今の康泰には難しい事は明白だ。それも踏まえて、祈誓をしても良いとガロンは笑ったのだろう。
「リィ」
名を呼べば、足元の獅子は小さなおこじょに戻り、立ち上がる康泰の肩に駆け上った。
「そんじゃ、俺の用事は終わったから帰る。お酒、ご馳走様」
「なんや、もう帰るんか」
ぱちくりとまばたいたガロンに、康泰はもちろんと頷く。
「寝てる時間とは言え、ミオンさん達に黙って来てるし、そもそもノディの件で苦情を伝えに来ただけだから」
ああ、それと。
「今夜、此処に来た事がバレる訳にはいかないから、ミオンさんが根負けして取り次いでくれるまで頑張って」
たまには遊びに来るよと手を振り、康泰はその姿をふわりと空気に溶かした。
「兄さん…それは無いわー…」
執務の合間で遊びに行こうと思っていたのに。
悪戯が成功したような笑顔に容赦なく打ち砕かれたガロンは、ソファーに沈み込むのだった。
***
踵を鳴らして着地したのは、居館の屋根の上。きしりと音を立てて雪を踏み締める。
体を飛ばされそうなほどに強い風に髪や服を遊ばせ、康泰は空を見上げた。月の存在は見えないが、闇に包まれている事は分かるほどに空は暗い。
深く息を吐き出せば、白く濁り、氷の粒子を散らして風に攫われる。
「『渦』、ね…」
ガロンが言うには、自身の魔力は混沌として読めないと言っていた。
あながち間違っていないのかも知れないと腕を組んだ。
本質は『混沌』。総じて『渦』。それなら、メリディアとガロンの『誘惑』が効きにくいのも何となく納得できる。
「これは思った以上にヤバいか?…何にせよ、真面目に魔力の勉強しないとダメって事か…」
そして、その『渦』はリィにも何かしらの影響を与えている可能性は大きいと考える。ヴィヴィアンの付加装飾具である程度整い始めている体内を巡る魔力は、恐らくこれ以上整う事は無いだろうとも。完全に整える為には、自身で学び、鍛えるしか無いだろう。
「たぶん、手っ取り早いのはあの人だよな」
自身の肩に陣取るリィに問えば、同意するようにきゅきゅいと可愛らしい声を上げた。
ふと、吹雪の一部の雪の動きがおかしい事に気が付いた。首を傾げながら、その一点を見つめていると、不可解な動きはその範囲を広げぞろりと蠢いてある姿を造り出す。否、吹雪を裂いて『それ等』は姿を現す。
「天使…?」
康泰の呟きを拾い上げた『それ等』は、聞き取れない言語を使用して意思疎通を図ると、康泰に向かって飛翔する。
「あらららら…」
陶器で作られたそうにつるりとした女性の頭部に翼が生えた歪な姿。その顔の上半分は仮面を着けているように見える。翼は耳があるはずの箇所から生えているようだ。
「困ったなー…」
感情を読み取ることのできない陶器の顔だが、それ等が纏う空気は康泰にとって敵意そのもの。自身の魔力が何であるか理解していない状況で交戦したく無いなと頬を掻いた時。
「相変わらず、躾のなっていない方々だ」
冷たい声だと思った。
こつりと踵を鳴らして康泰の隣に立ったのは、眠っていると思っていたミオンだった。人差し指が示したのはこちらに飛んで来る天使。
「風槍」
人差し指をほんの少しだけ振り上げた瞬間、吹雪の狂風が歪み、凄まじい勢いで陶器の顔にバキンッと破壊音を響かせて突き刺さり、次々と砕け散る天使達の残骸はざらりと風に浚われる。
周囲に漂うミオンの魔力の濃密さに、康泰は口角がつり上がるのを止められない。魔皇の魔力で満たされているはずの城外であるにも関わらず、今感じられるのはミオンの魔力のみ。
―カーン…カラーン……
康泰がにんまりと頬を緩めていると、突如鳴り響いた鐘の音。そして、じわりじわりとのし掛かる天使の気配に康泰の表情も訝しげに歪む。
「これはまた、面倒な…シュノア、コータ様をお願いします」
シュノアは付近にいない。康泰が疑問に思う前に、ミオンが指をパチンと鳴らした。
浮遊感の後、どさりと落ちたのは知らぬ部屋のソファーの上。
「お、おう…?」
困惑に首を傾げていると、部屋の扉が開かれた。顔を出したのはシュノアだった。
先ほど襲い掛かかられたのを思い出したのか、ガロンは両手を上げたままソファーに背を付けた。リィに向けていた視線を康泰へ戻す。
「もちろん、兄さんを詮索するつもりもあらへんよ。どうせ今後の付き合いで色々と分かるやろうし、折角の祈誓を無駄にはしとうないしな」
楽しそうなガロンを眺めながら、康泰は胸中で息を吐き出した。現状、害は無いが将来的に何かしらの障害に成り兼ねない。
(…ま、いっか)
ほんの一瞬だけ不安は過ぎったが、既に祈誓は結ばれてしまっている。強制的に解除する事も出来るのだろうが、今の康泰には難しい事は明白だ。それも踏まえて、祈誓をしても良いとガロンは笑ったのだろう。
「リィ」
名を呼べば、足元の獅子は小さなおこじょに戻り、立ち上がる康泰の肩に駆け上った。
「そんじゃ、俺の用事は終わったから帰る。お酒、ご馳走様」
「なんや、もう帰るんか」
ぱちくりとまばたいたガロンに、康泰はもちろんと頷く。
「寝てる時間とは言え、ミオンさん達に黙って来てるし、そもそもノディの件で苦情を伝えに来ただけだから」
ああ、それと。
「今夜、此処に来た事がバレる訳にはいかないから、ミオンさんが根負けして取り次いでくれるまで頑張って」
たまには遊びに来るよと手を振り、康泰はその姿をふわりと空気に溶かした。
「兄さん…それは無いわー…」
執務の合間で遊びに行こうと思っていたのに。
悪戯が成功したような笑顔に容赦なく打ち砕かれたガロンは、ソファーに沈み込むのだった。
***
踵を鳴らして着地したのは、居館の屋根の上。きしりと音を立てて雪を踏み締める。
体を飛ばされそうなほどに強い風に髪や服を遊ばせ、康泰は空を見上げた。月の存在は見えないが、闇に包まれている事は分かるほどに空は暗い。
深く息を吐き出せば、白く濁り、氷の粒子を散らして風に攫われる。
「『渦』、ね…」
ガロンが言うには、自身の魔力は混沌として読めないと言っていた。
あながち間違っていないのかも知れないと腕を組んだ。
本質は『混沌』。総じて『渦』。それなら、メリディアとガロンの『誘惑』が効きにくいのも何となく納得できる。
「これは思った以上にヤバいか?…何にせよ、真面目に魔力の勉強しないとダメって事か…」
そして、その『渦』はリィにも何かしらの影響を与えている可能性は大きいと考える。ヴィヴィアンの付加装飾具である程度整い始めている体内を巡る魔力は、恐らくこれ以上整う事は無いだろうとも。完全に整える為には、自身で学び、鍛えるしか無いだろう。
「たぶん、手っ取り早いのはあの人だよな」
自身の肩に陣取るリィに問えば、同意するようにきゅきゅいと可愛らしい声を上げた。
ふと、吹雪の一部の雪の動きがおかしい事に気が付いた。首を傾げながら、その一点を見つめていると、不可解な動きはその範囲を広げぞろりと蠢いてある姿を造り出す。否、吹雪を裂いて『それ等』は姿を現す。
「天使…?」
康泰の呟きを拾い上げた『それ等』は、聞き取れない言語を使用して意思疎通を図ると、康泰に向かって飛翔する。
「あらららら…」
陶器で作られたそうにつるりとした女性の頭部に翼が生えた歪な姿。その顔の上半分は仮面を着けているように見える。翼は耳があるはずの箇所から生えているようだ。
「困ったなー…」
感情を読み取ることのできない陶器の顔だが、それ等が纏う空気は康泰にとって敵意そのもの。自身の魔力が何であるか理解していない状況で交戦したく無いなと頬を掻いた時。
「相変わらず、躾のなっていない方々だ」
冷たい声だと思った。
こつりと踵を鳴らして康泰の隣に立ったのは、眠っていると思っていたミオンだった。人差し指が示したのはこちらに飛んで来る天使。
「風槍」
人差し指をほんの少しだけ振り上げた瞬間、吹雪の狂風が歪み、凄まじい勢いで陶器の顔にバキンッと破壊音を響かせて突き刺さり、次々と砕け散る天使達の残骸はざらりと風に浚われる。
周囲に漂うミオンの魔力の濃密さに、康泰は口角がつり上がるのを止められない。魔皇の魔力で満たされているはずの城外であるにも関わらず、今感じられるのはミオンの魔力のみ。
―カーン…カラーン……
康泰がにんまりと頬を緩めていると、突如鳴り響いた鐘の音。そして、じわりじわりとのし掛かる天使の気配に康泰の表情も訝しげに歪む。
「これはまた、面倒な…シュノア、コータ様をお願いします」
シュノアは付近にいない。康泰が疑問に思う前に、ミオンが指をパチンと鳴らした。
浮遊感の後、どさりと落ちたのは知らぬ部屋のソファーの上。
「お、おう…?」
困惑に首を傾げていると、部屋の扉が開かれた。顔を出したのはシュノアだった。
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⭐︎⭐︎⭐︎
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コメント、エール、いいねお待ちしております♡
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