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イケニエになりました!?
旦那様は魔王様!? 2
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ぴちゃん、と、どこかで水が落ちるような音がする。
抱えた膝に額をつけて、沙良はその音を数えていた。
松明が消えかかり、地下牢の中はほとんど闇に包まれている。
もともと寒かったが、灯りが乏しくなると余計に気温が下がったように感じられ、沙良は小さく震えていた。
ぴちゃん、と数えはじめてから二百五十九回目の水音がする。
金髪の美女が言った通り、誰も来る気配がない。
本当にこのままここで干からびて死んでしまうのだろうか。
シヴァに連れて来られた昨日は、死ぬのもあんまり怖くないかもと思った。
それなのに、わずか一日で、死ぬのが怖くなっている。
それはきっと、この一日で、たくさんの優しさをもらったからだろう。
無自覚なうちに、沙良の心の中には、このまま、もっともっと優しくしてもらいたいという願望が産まれてしまっていた。
人間は欲張りだ。
知らなかった幸せを知ったら、もっとほしくなる。
ぴちゃん、と二百六十回目の音がした。
もっと、ミリーとお話ししたかった。
もっと、アスヴィルにたくさんお菓子作りを教えてもらいたかった。
もっと――
(シヴァ様と、お話し、してみたかった、かも……?)
そこだけ疑問形なのは、まだ「怖い」という気持ちが大半を占めているからだ。
けれど、このまま誰にも見つけてもらえなかったら、それも叶わないだろう。
ぴちゃん――
二百六十一回目の水音を数えたとき、ギイィと蝶番が軋むような音がして、沙良はぼんやりと顔を上げた。
カツンカツン、と足音がする。
やがて、薄暗い闇の中に、背の高い黒い影があらわれて、沙良は息を呑んだ。
「シヴァ様……」
仏頂面のシヴァが、鉄格子を挟んで目の前に立っていた。
抱えた膝に額をつけて、沙良はその音を数えていた。
松明が消えかかり、地下牢の中はほとんど闇に包まれている。
もともと寒かったが、灯りが乏しくなると余計に気温が下がったように感じられ、沙良は小さく震えていた。
ぴちゃん、と数えはじめてから二百五十九回目の水音がする。
金髪の美女が言った通り、誰も来る気配がない。
本当にこのままここで干からびて死んでしまうのだろうか。
シヴァに連れて来られた昨日は、死ぬのもあんまり怖くないかもと思った。
それなのに、わずか一日で、死ぬのが怖くなっている。
それはきっと、この一日で、たくさんの優しさをもらったからだろう。
無自覚なうちに、沙良の心の中には、このまま、もっともっと優しくしてもらいたいという願望が産まれてしまっていた。
人間は欲張りだ。
知らなかった幸せを知ったら、もっとほしくなる。
ぴちゃん、と二百六十回目の音がした。
もっと、ミリーとお話ししたかった。
もっと、アスヴィルにたくさんお菓子作りを教えてもらいたかった。
もっと――
(シヴァ様と、お話し、してみたかった、かも……?)
そこだけ疑問形なのは、まだ「怖い」という気持ちが大半を占めているからだ。
けれど、このまま誰にも見つけてもらえなかったら、それも叶わないだろう。
ぴちゃん――
二百六十一回目の水音を数えたとき、ギイィと蝶番が軋むような音がして、沙良はぼんやりと顔を上げた。
カツンカツン、と足音がする。
やがて、薄暗い闇の中に、背の高い黒い影があらわれて、沙良は息を呑んだ。
「シヴァ様……」
仏頂面のシヴァが、鉄格子を挟んで目の前に立っていた。
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