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旦那様は魔王様≪最終話≫
エピローグ
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光に透ける純白のドレスの裾がふわっと広がる。
少し大人になった沙良は、シヴァの腕の中でくすくすと楽しそうに笑っていた。
精緻な彫刻とステンドグラスが美しい荘厳な建物の中。シヴァとともに祭壇の前に立つ。
――汝……
祭壇を挟んで反対側に立つ男が口を開いたその時――、沙良は、ぱちりと目を覚ました。
「夢……?」
目を覚ますと、あたりはまだ真っ暗だった。
隣では、シヴァが静かな寝息を立てている。
(なぁんだ……、夢かぁ……)
今日、シヴァに祭壇の前でプロポーズされてキスをされた。一日中、雲の上を歩いているかのようにふわふわしている気分で、気がつけば夜になっていて、シヴァの部屋で、沙良はこうして一緒に眠りについた。
きっと、嬉しくてうれしくて――、待ちきれなくて、夢にまで見てしまったのだろう。
夢の内容ははっきりと覚えていないが、結婚式をあげる夢だった気がする。すごう幸せな夢。早くその時が来ればいいのにと、今日プロポーズされたばかりなのに待ち遠しくて仕方がない。
(結婚式……。シヴァ様の……、お嫁さん)
正確にはすでに嫁扱いになっているのだが、やはり結婚式をしないと「お嫁さん」感がない。
(どうしよう……、眠れなくなっちゃった……)
興奮しすぎて眠気が吹き飛んでしまった沙良は、ベッドの中でむーっと眉を寄せた。
ごそごそしすぎてシヴァを起こしてしまうわけにもいかないが、このまま眠れないままじっとしておくのも、なかなか苦痛だ。
沙良は目を閉じて、無理やり眠りにつこうとがんばった。
(羊が一匹ぃ、羊が二匹ぃ、羊が三匹ぃ……)
そうして、羊を五十九匹まで数えてみたが、全然眠くならない。
(眠れない、眠れないよぅーっ)
沙良はちらりと隣で眠るシヴァを見やった。
「……、起こさなければ、いいよね?」
沙良はシヴァにぴたっとくっついてみる。体温が伝わってきて安心する。
シヴァにくっついていれば眠れるかもしれない――、沙良がそう思って目を閉じたとき。
「……沙良?」
シヴァの声がして、沙良はしゅんとした。
「シヴァ様……、ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「いや……、どうした、眠れないのか?」
シヴァが横向きになって、沙良の髪を梳くように頭を撫でる。
「目が覚めちゃって……」
「そうか。それなら……」
シヴァは沙良を腕の中に抱き込むと、ぽんぽんと背中を叩いた。
「こうしていれば、眠くならないか?」
まるで子供のような扱いだが、確かに、規則正しく背中を叩かれていると、だんだんと瞼が重くなる。
沙良がうとうとしはじめると、シヴァは沙良を腕に抱き込んだまま目を閉じる。
「……おやすみ」
シヴァの優しいささやきを聞きながら、沙良が再び見た夢は、純白のドレス姿でシヴァにキスをされる、幸せな夢だった――
少し大人になった沙良は、シヴァの腕の中でくすくすと楽しそうに笑っていた。
精緻な彫刻とステンドグラスが美しい荘厳な建物の中。シヴァとともに祭壇の前に立つ。
――汝……
祭壇を挟んで反対側に立つ男が口を開いたその時――、沙良は、ぱちりと目を覚ました。
「夢……?」
目を覚ますと、あたりはまだ真っ暗だった。
隣では、シヴァが静かな寝息を立てている。
(なぁんだ……、夢かぁ……)
今日、シヴァに祭壇の前でプロポーズされてキスをされた。一日中、雲の上を歩いているかのようにふわふわしている気分で、気がつけば夜になっていて、シヴァの部屋で、沙良はこうして一緒に眠りについた。
きっと、嬉しくてうれしくて――、待ちきれなくて、夢にまで見てしまったのだろう。
夢の内容ははっきりと覚えていないが、結婚式をあげる夢だった気がする。すごう幸せな夢。早くその時が来ればいいのにと、今日プロポーズされたばかりなのに待ち遠しくて仕方がない。
(結婚式……。シヴァ様の……、お嫁さん)
正確にはすでに嫁扱いになっているのだが、やはり結婚式をしないと「お嫁さん」感がない。
(どうしよう……、眠れなくなっちゃった……)
興奮しすぎて眠気が吹き飛んでしまった沙良は、ベッドの中でむーっと眉を寄せた。
ごそごそしすぎてシヴァを起こしてしまうわけにもいかないが、このまま眠れないままじっとしておくのも、なかなか苦痛だ。
沙良は目を閉じて、無理やり眠りにつこうとがんばった。
(羊が一匹ぃ、羊が二匹ぃ、羊が三匹ぃ……)
そうして、羊を五十九匹まで数えてみたが、全然眠くならない。
(眠れない、眠れないよぅーっ)
沙良はちらりと隣で眠るシヴァを見やった。
「……、起こさなければ、いいよね?」
沙良はシヴァにぴたっとくっついてみる。体温が伝わってきて安心する。
シヴァにくっついていれば眠れるかもしれない――、沙良がそう思って目を閉じたとき。
「……沙良?」
シヴァの声がして、沙良はしゅんとした。
「シヴァ様……、ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「いや……、どうした、眠れないのか?」
シヴァが横向きになって、沙良の髪を梳くように頭を撫でる。
「目が覚めちゃって……」
「そうか。それなら……」
シヴァは沙良を腕の中に抱き込むと、ぽんぽんと背中を叩いた。
「こうしていれば、眠くならないか?」
まるで子供のような扱いだが、確かに、規則正しく背中を叩かれていると、だんだんと瞼が重くなる。
沙良がうとうとしはじめると、シヴァは沙良を腕に抱き込んだまま目を閉じる。
「……おやすみ」
シヴァの優しいささやきを聞きながら、沙良が再び見た夢は、純白のドレス姿でシヴァにキスをされる、幸せな夢だった――
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みんなの感想(19件)
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完結おめでとうございます。
終わっちゃって淋しいですが…、続編期待しています!
沙良ちゃん戻ってきてくれてよかったぁ(泣)
感想ありがとうございます!
このお話もあと少しで完結します。今まで、閲覧ありがとうございました!
そして、もう少しだけお付き合いくださるとうれしいです。
よろしくお願いします。
この作品はとても大好きで、読み始めてから一気に読んでしまいました。
最近はシヴァが切なくて、とてもつらいです。でも、沙良のシヴァへの愛を信じて
続きを楽しみにしています。更新は大変だと思いますが
頑張ってください。応援しています。
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけて嬉しいです!