魔女の復讐は容赦なし?~みなさま覚悟なさいませ?~

狭山ひびき

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金色の蛇は退屈している

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 高位な妖精の祝福がないと妖精の国には入れない――というか、入っただけで迷って死ぬのが落ちらしく、メリーエルたちはその「高位な妖精」に会いに行っている途中だった。

 ユリウス曰く、人間界にも意外と多くの妖精が暮らしているそうだが、高位の妖精はほとんどいないらしい。

 頭を悩ませたところへ、ビオラが春の女王の知り合いで、人間界で暮らしている高位の妖精がいると思い出したのだ。

 メリーエルたちは、その彼に会いに、彼が住んでいるという迷いの森に足を踏み入れたのである。

「ねえ、ビオラ。その妖精さんはいったいどこに住んでるのよ」

「この森の中のどこかよ」

 ビオラが答えると、メリーエルはぴたりと足を止めた。

「は? ちょっと待ちなさいよ! この森、どんだけ広いと思ってんのよ! 何考えてるの、この、計画なし!」

「なんですって? わたしのおかげで妖精の国に行く手立てが見つかったんじゃないの!」

「はあ? もとはと言えばあんたが面倒ごとを持ち込んだんじゃない!」

「なによ! 報酬に目がくらんで引き受けたのはあんたの方でしょ!」

「あっそーう? じゃあ、あんた一人でウィンラルドとかいうやつのところに乗り込んできなさいよ! あんた妖精だから妖精の国にだって自由に出入りできるでしょ!」

「ひっどーい! わたしがウィンラルド様に八つ裂きにされてもいいって言うの」

 ぎゃーぎゃーと言い合いをはじめたメリーエルとビオラに、ユリウスが額をおさえてため息をつく。

「お前たち、いい加減にしろ。頭が痛くなってくる……」

「だってユリウスぅ、もとはと言えばこいつが!」

「そうだとしても引き受けたのはお前だ。……場所はともかく、方向なら、感じる気配でなんとなくわかっている。むやみに歩いているわけじゃないから、そう騒ぐな」

「ほんと?」

「ああ、このまままっすぐ北の方向だ。半日もすればつくだろう」

「げ。半日?」

「このペースで歩けばな」

 ユリウスがこともなげに言うが、メリーエルはうんざりと肩を落とした。

 ユリウスが龍になってくれれば早いんだけどなとも思うが、こんな鬱蒼とした森の中では図体が大きすぎて不可能だろう。

「せめてさ、途中で休憩をとろうよー。半日も歩き通しなんて嫌だよぉ」

 それでなくとも、飛び出た根や枝、落ち葉のせいで足場が悪くて歩きにくいのだ。こんな中を半日も突き進むのは勘弁してほしい。

 値を上げるメリーエルに、ユリウスは仕方がないなと肩をすくませた。

「もう少しすれば、湖がありそうな気配がする。いったんそこで休むか」

「うん!」

 よくわからないが、ユリウスには万能なセンサーが搭載されているようだ。

 メリーエルはうんうんと何度も頷いて、うきうきと足を踏み出す。

 まるで目前にニンジンをぶら下げられた馬のようだ――、とユリウスは心の中で嘆息したのだった。
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