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隣国の王子は好敵手
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「悪かったよ。寝ぼけていたんだ。そんなに怒らなくたっていいだろう?」
完全に覚醒したリチャードは、昨日のように不機嫌ではなかった。
リチャードに寝ぼけてベッドに引きずり込まれたカレンは頬を膨らませて不機嫌だったが、彼が機嫌を取るように、自分の朝食の中からカレンの好きなカボチャのポタージュを差し出したので、少し機嫌がよくなる。
食べ物につられたようだが、本気で怒ってはいなかったので、まあいいかとスープを受け取った。
リチャードとテーブルを挟んで向かいあって朝食をとりながら、ふとアレクのことを思い出した。
アレクは城に滞在しているらしい。今日から二週間の滞在だと言っていた。朝食は別々でいいのだろうか。
「カイザー王子なら、父上たちが一緒に取っているだろう。気にしなくていいよ」
大切な来賓だと思うのだが、昨夜の一件があってからリチャードのアレクに対する印象は悪いらしい。
ロゼウスによると、今日はカイザー王子と一緒に、ウィストニア国の宝石の加工場に視察に行くことになっているはずだが、大丈夫だろうか?
ウィストニアは鉱山が多く、金や宝石類が多く採掘されることから、宝飾品の加工技術が高く、重要な貿易品となっている。
今日は鉱山ではなく、王都にある有名な加工場への視察なので日帰りの予定だそうだが、リチャードはちゃんとアレクの相手ができるのだろうかと、昨日の子供のように拗ねていたリチャードの顔を思い出して心配になった。
(でも、お仕事だし。きっと大丈夫よね?)
午後からリチャードが帰ってくる夕方まで手があくカレンは、一昨日アレクにもらった絹織物の反物でクッションカバーを作ろうと思っている。
高級品でクッションカバーは少々気が引けたが、反物のまま持っていても仕方がない。リチャードの部屋のソファにはクッションがないので、カバーを作って、ふかふかのクッションを並べたら座り心地もよくなるだろうと考えたのだ。
(クッションカバーならすぐに作れるし、綺麗な絵柄だから映えるわよね)
クッションカバーだけだと反物が余るけれど、残りはまた何か思いついた時に使えばいい。
「君はアクセサリーは欲しがらないんだろうが、なにかいるものがあればついでに買って帰るぞ?」
リチャードがサラダを口に運びながら言う。
リチャードがたくさん揃えてくれているアクセサリーがあるので、カレンはこれ以上の装飾品は必要なかった。
首を振ると、予想通りの答えを返すカレンにリチャードは苦笑して、カレンの皿にブドウをポイポイと投げ入れた。
「君はアクセサリーよりはこっちの方がいいんだろうからな」
一瞬馬鹿にされたような気がしたが、リチャードの声に揶揄はない。ただ面白いおもちゃを見るように目を細めてカレンを見ていた。
カレンはブドウを一つつまむと口に入れる。噛めばみずみずしい果汁が口いっぱいに広がって、その甘さにふにゃりと頬を緩めた。
「ほら、嬉しそうだ」
リチャードは満足そうに頷いて、自らもブドウを一つ口に運ぶ。
「視察、気をつけて行ってきてくださいね」
ロゼウスもそばにいるし、何事もないだろうが、カレンがそう言えばリチャードは「ありがとう」と顔をほころばせた。
完全に覚醒したリチャードは、昨日のように不機嫌ではなかった。
リチャードに寝ぼけてベッドに引きずり込まれたカレンは頬を膨らませて不機嫌だったが、彼が機嫌を取るように、自分の朝食の中からカレンの好きなカボチャのポタージュを差し出したので、少し機嫌がよくなる。
食べ物につられたようだが、本気で怒ってはいなかったので、まあいいかとスープを受け取った。
リチャードとテーブルを挟んで向かいあって朝食をとりながら、ふとアレクのことを思い出した。
アレクは城に滞在しているらしい。今日から二週間の滞在だと言っていた。朝食は別々でいいのだろうか。
「カイザー王子なら、父上たちが一緒に取っているだろう。気にしなくていいよ」
大切な来賓だと思うのだが、昨夜の一件があってからリチャードのアレクに対する印象は悪いらしい。
ロゼウスによると、今日はカイザー王子と一緒に、ウィストニア国の宝石の加工場に視察に行くことになっているはずだが、大丈夫だろうか?
ウィストニアは鉱山が多く、金や宝石類が多く採掘されることから、宝飾品の加工技術が高く、重要な貿易品となっている。
今日は鉱山ではなく、王都にある有名な加工場への視察なので日帰りの予定だそうだが、リチャードはちゃんとアレクの相手ができるのだろうかと、昨日の子供のように拗ねていたリチャードの顔を思い出して心配になった。
(でも、お仕事だし。きっと大丈夫よね?)
午後からリチャードが帰ってくる夕方まで手があくカレンは、一昨日アレクにもらった絹織物の反物でクッションカバーを作ろうと思っている。
高級品でクッションカバーは少々気が引けたが、反物のまま持っていても仕方がない。リチャードの部屋のソファにはクッションがないので、カバーを作って、ふかふかのクッションを並べたら座り心地もよくなるだろうと考えたのだ。
(クッションカバーならすぐに作れるし、綺麗な絵柄だから映えるわよね)
クッションカバーだけだと反物が余るけれど、残りはまた何か思いついた時に使えばいい。
「君はアクセサリーは欲しがらないんだろうが、なにかいるものがあればついでに買って帰るぞ?」
リチャードがサラダを口に運びながら言う。
リチャードがたくさん揃えてくれているアクセサリーがあるので、カレンはこれ以上の装飾品は必要なかった。
首を振ると、予想通りの答えを返すカレンにリチャードは苦笑して、カレンの皿にブドウをポイポイと投げ入れた。
「君はアクセサリーよりはこっちの方がいいんだろうからな」
一瞬馬鹿にされたような気がしたが、リチャードの声に揶揄はない。ただ面白いおもちゃを見るように目を細めてカレンを見ていた。
カレンはブドウを一つつまむと口に入れる。噛めばみずみずしい果汁が口いっぱいに広がって、その甘さにふにゃりと頬を緩めた。
「ほら、嬉しそうだ」
リチャードは満足そうに頷いて、自らもブドウを一つ口に運ぶ。
「視察、気をつけて行ってきてくださいね」
ロゼウスもそばにいるし、何事もないだろうが、カレンがそう言えばリチャードは「ありがとう」と顔をほころばせた。
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