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突然の同居 3

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「あー……逃げられた」

 オーレリアが部屋から飛び出していくと、ラルフはぽりぽりと頬を掻いた。

 クリスから提示された期限は一か月。この一か月の間に、何としてもオーレリアにラルフを意識させなければと思ったのだが、さすがに距離をつめすぎたようだ。

「あと三センチだったのに……」

 オーレリアの飲みかけのグラスにそっと触れる。中身はほとんど減っていなかったが、アルコールの入ったオーレリアの頬はピンク色に上気して、心なしか目がとろんとしていて、めちゃくちゃ可愛かった。

 ウイスキーで濡れた唇が何ともなまめかしくて、キスしたくなったラルフは悪くない。だって考えても見てほしい。好きな女がトロンとした顔で隣に座っていたら、その唇を奪いたくなっても仕方がないだろう?

(あいつ、無防備すぎるんだよ)

 一応、ラルフのことを意識して、多少なりとも警戒しているような気がするが、ラルフから言わせればまだまだ無防備だ。

 ウサギのぬいぐるみを抱きしめてくれと頼めば素直に抱きしめるし、あの可愛さはどうしたらいいのだろう。

 いっそ誰にも見られないように、大切に大切に閉じ込めてしまいたい。

(やっぱでかいぬいぐるみ、買おう……)

 クリスから白い目を向けられようと、オーレリアにはぬいぐるみが似合う。

 明るくて可愛いオーレリア。ずっとずっと好きだったオーレリア。彼女は誰にも渡したくない。

 忍耐力には自信がある。けれど、我慢して人に奪われるのなら話は別だ。

 少なくともオーレリアはラルフのことを意識している。ならば、この一か月で、オーレリアの頭の中をラルフでいっぱいにしたい。そうすれば求婚を受け入れてくれるはずだ。

 ラルフはグラスの中のウイスキーを一気にあおって立ち上がった。

 まだ髪が半乾きだが面倒くさいのでもういいやと、ベッドにもぐりこむ。

 寝るには少し早いが、さっきの可愛いオーレリアの姿が瞼の裏に焼き付いている間に眠れば、幸せな夢が見られる気がした。

 枕をオーレリアに見立ててぎゅっと抱きしめたラルフは、そのまま幸せな眠りの中に落ちて行ったのだった。
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