魔王陛下の押し掛け女房~姉に押し付けられた縁談ですが、頑張って祖国を再興しようと思います~

狭山ひびき

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 旧グリモアーナ国。

 それは、四方を高く険しい山脈に覆われた、十五年前に滅びた王国の名前だ。

 もっと言えば、二百年前まで世界で唯一魔族と人間が共存していた国であり、国王と魔王の二国主制がとられていたちょっと変わった国だった。

 それが二百年前。当時の国王だった男が娘可愛さに魔王以下魔族たちを一斉に封印し、人間だけの国を築き上げる。

 王子の国王が魔王の報復も恐れずそのような暴挙に出たのは、ひとえに一人娘の王女可愛さのせいだった。

 二国主制を敷いていた旧グリモアーナ国は、人間と魔族との関係維持のため、新しい魔王が立てば、その時代の王女を嫁がせていたのである。当時の国王は溺愛する王女を魔王に嫁がせることを拒み、魔王を封印してしまうという強硬手段に出たのだ。

 それからおよそ二百年。魔王の封印は一度も解けることなく、平和な時がすぎていた。だがーー

 十五年前。セシリアが二歳の時のことだ。

 何が原因なのか、突如として魔王を封印していた魔法陣が破壊されて、二百年の歳月を経て、魔王が復活を遂げた。

 そして、魔王の封印が解けた際の膨大なエネルギーのせいで城が大爆発。たまたま王妃の母国であるレバニエル国に遊びに来ていた王妃と当時二歳だったセシリア、そしてセシリアより三歳年上の姉プリシラは生き残ったが、父や兄たちは爆発に巻き込まれて命を落とした。

 以来、旧グリモアーナ国の地は魔王と彼の配下である魔族たちだけが住む『魔王国』となり、人間は誰一人として近づけない暗黒の地になっている、らしい。

 らしいというのは、四方を高い山脈に囲まれている上に、恐ろしい魔王が暮らす地である旧グリモアーナ国、現『魔王国』に、誰一人として入国しようとしないからだ。つまるところ、言い換えれば、旧グリモアーナ国が今どのような状況になっているのか、誰一人として知らないのである。
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