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翌朝のことだった。
カリカリと山小屋の扉が音を立てて、セシリアはぼんやりと瞼を上げた。
小さな窓から、朝の白い光が注ぎ込んでいる。
カリカリカリカリ
何かをひっかくような音が、山小屋の入り口から聞こえていた。
セシリアが首をひねりながら木戸をあければ、そこには銀色の毛並みとくるんと丸い目をした昨日の子狐がちょこんと座っていた。
「狐ちゃん、まだいたの?」
大きな目で見上げてくる様が可愛すぎる。そして、子狐の足元には、真っ赤に熟れた木の実が小さな山を作っていた。
セシリアはぱちぱちと目をしばたたいた。
「狐ちゃんがとってきたの?」
訊ねれば、子狐が返事をするように「こん」と鳴く。
(……かわいい!)
この木の実は昨日のクッキーのお礼のつもりなのだろうか。セシリアが子狐の足元の木の実を拾い上げて山小屋の中に入ると、子狐はそのあとをちょこちょこついてくる。
セシリアは切り株の椅子に座って子狐を抱き上げると膝の上に乗せた。
「狐ちゃん、でももうクッキーはないの。パンとジャーキーならあるけど、食べる?」
子狐が「こん!」と鳴いたので、セシリアは荷物の中からパンとジャーキーを取り出してテーブルの上におくと、子狐がセシリアの膝からテーブルの上に飛び乗った。
セシリアは子狐がとってきた木の実を口入れると、子狐もパンにかぶりつく。ふさふさの尻尾が機嫌よさげに左右に揺れていた。
子狐の採ってきた木の実はみずみずしくて甘酸っぱくてとてもおいしかったが、さすがにこれだけでは腹は膨れないので、ジャーキーを一つ口に入れる。
子狐はパンとジャーキーを平らげて満足そうにテーブルの上で丸くなった。
セシリアが出発の準備を整えている間にもそこからいなくなる様子はなく、荷物をまとめて小屋を出ようとすると、ぴくりと耳を動かしてテーブルから飛び降り、あとをついてくる。もしかしなくても、野生の狐を餌付けしてしまったのだろうか。セシリアはこのまま連れて行っていいのだろうかと逡巡したが、いつまでも後ろをついてくるのであきらめた。
「狐ちゃん、おいで」
止まって呼びかけると、子狐がぱたぱたと駆けてセシリアのそばまで走ってくる。セシリアが歩き出すと、ぴったりと隣について歩き出した。
(……ま、一人旅は淋しかったし、これはこれでいいかな? 国までくっついてきたら、魔王陛下に飼っていいか訊いてみようっと)
いくら魔王でも、子狐を取って食べたりはしないだろう。たぶん。
予定では、あと一日も歩けばトンネルが見えてくるはずだ。旧グリモアーナ国まではあと二日もあればたどり着く。国に入ったあとでどうやって魔王のもとまでたどり着くかが問題だが、それはその時に考えればいいだろう。魔族が人間を食べるという話は聞かないので、国には行ったところで狩られることはないはずだ。
「今日の目標はトンネル手前のところにあるらしい、昔使ってた見張り小屋だよ! 急がないと野宿になるから、頑張ろうね、狐ちゃん!」
「こーん!」
セシリアが言えば子狐が元気よく返事をする。
思わぬ同行者が増えたが、これはこれでにぎやかで楽しいのかもしれない。
セシリアは「サルのお尻みたい」だと姉に揶揄される赤毛を揺らしながら、記憶に残っていない祖国に向かって、歩く速度を速めたのだった。
カリカリと山小屋の扉が音を立てて、セシリアはぼんやりと瞼を上げた。
小さな窓から、朝の白い光が注ぎ込んでいる。
カリカリカリカリ
何かをひっかくような音が、山小屋の入り口から聞こえていた。
セシリアが首をひねりながら木戸をあければ、そこには銀色の毛並みとくるんと丸い目をした昨日の子狐がちょこんと座っていた。
「狐ちゃん、まだいたの?」
大きな目で見上げてくる様が可愛すぎる。そして、子狐の足元には、真っ赤に熟れた木の実が小さな山を作っていた。
セシリアはぱちぱちと目をしばたたいた。
「狐ちゃんがとってきたの?」
訊ねれば、子狐が返事をするように「こん」と鳴く。
(……かわいい!)
この木の実は昨日のクッキーのお礼のつもりなのだろうか。セシリアが子狐の足元の木の実を拾い上げて山小屋の中に入ると、子狐はそのあとをちょこちょこついてくる。
セシリアは切り株の椅子に座って子狐を抱き上げると膝の上に乗せた。
「狐ちゃん、でももうクッキーはないの。パンとジャーキーならあるけど、食べる?」
子狐が「こん!」と鳴いたので、セシリアは荷物の中からパンとジャーキーを取り出してテーブルの上におくと、子狐がセシリアの膝からテーブルの上に飛び乗った。
セシリアは子狐がとってきた木の実を口入れると、子狐もパンにかぶりつく。ふさふさの尻尾が機嫌よさげに左右に揺れていた。
子狐の採ってきた木の実はみずみずしくて甘酸っぱくてとてもおいしかったが、さすがにこれだけでは腹は膨れないので、ジャーキーを一つ口に入れる。
子狐はパンとジャーキーを平らげて満足そうにテーブルの上で丸くなった。
セシリアが出発の準備を整えている間にもそこからいなくなる様子はなく、荷物をまとめて小屋を出ようとすると、ぴくりと耳を動かしてテーブルから飛び降り、あとをついてくる。もしかしなくても、野生の狐を餌付けしてしまったのだろうか。セシリアはこのまま連れて行っていいのだろうかと逡巡したが、いつまでも後ろをついてくるのであきらめた。
「狐ちゃん、おいで」
止まって呼びかけると、子狐がぱたぱたと駆けてセシリアのそばまで走ってくる。セシリアが歩き出すと、ぴったりと隣について歩き出した。
(……ま、一人旅は淋しかったし、これはこれでいいかな? 国までくっついてきたら、魔王陛下に飼っていいか訊いてみようっと)
いくら魔王でも、子狐を取って食べたりはしないだろう。たぶん。
予定では、あと一日も歩けばトンネルが見えてくるはずだ。旧グリモアーナ国まではあと二日もあればたどり着く。国に入ったあとでどうやって魔王のもとまでたどり着くかが問題だが、それはその時に考えればいいだろう。魔族が人間を食べるという話は聞かないので、国には行ったところで狩られることはないはずだ。
「今日の目標はトンネル手前のところにあるらしい、昔使ってた見張り小屋だよ! 急がないと野宿になるから、頑張ろうね、狐ちゃん!」
「こーん!」
セシリアが言えば子狐が元気よく返事をする。
思わぬ同行者が増えたが、これはこれでにぎやかで楽しいのかもしれない。
セシリアは「サルのお尻みたい」だと姉に揶揄される赤毛を揺らしながら、記憶に残っていない祖国に向かって、歩く速度を速めたのだった。
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