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兵革の五月[May of Struggle]
Mission8 模擬試合
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俺たちは互いに互いの間合いへと迫る。
「はああっ!」
先に刃を振るったのは蒼だった。
彼女は威勢のよい声と共に薙刀の先で俺の脇差を握る手へと鋭い刺突をする。
咄嗟に刃の側面でそれを受け止め、彼女の刺突を流す。
「おっと……」
いきなり自身の攻撃を流された彼女はその場で体勢を崩しかけるが勢いよく身体を引いて体勢を整える。
しかし体勢を崩したことで生まれた僅かな隙を見逃さずに俺はまだ体勢を完全を整え切れていない彼女へと水平に刃を振るう。
「くっ……」
振るわれた刃が自身へと到達する前に彼女は薙刀の柄で受け止める。
そして俺の刃を押し返し、体勢を完全に整えた彼女は自身の持つ得物を上から下へと勢いよく振り下ろした。
「はっ!」
(重い……っ!)
柄を握る右手とは別に左手で鞘の先を握り、彼女の一撃を受け止める。
その一撃は少女のものとは思えないほどに洗練されていて鋭い。受け止めた瞬間に両腕が麻痺しそうなくらいの衝撃が走る。
俺はバックステップで彼女の一撃から逃れる。このまま受け止めていては俺の掌から力が抜けてしまう。それくらいに重たく、且つ鋭く洗練された一撃だった。
「逃がさないっ!」
後ろに退いた俺へと流れる様に刺突する。
どうやら彼女は刺突が得意な様で目で捉えるのは困難なくらいの速さでそれは繰り出される。
脇差を構え、再び彼女の突きを流す。
「……っと」
(貰ったっ!)
薙刀による突きを流された彼女は体勢を崩す。
俺は彼女に一撃を与える絶好の機会だと思い、脇差を彼女の懐へと滑り込ませる。
けれど──
「甘いっ!」
「なっ……」
彼女は咄嗟に体勢を立て直し、振るった脇差を半身を傾けて回避する。
そして俺の首筋へと薙刀の刃を触れさせる。
「はぁ……はぁ……あたしの勝ち、だね」
肩で息を整えながら彼女は構えを解く。
俺は薙刀の触れた自身の首筋へと手を伸ばした。
木のひんやりとした感触が肌に残っている。
もし彼女の刃が本物だったならば今俺はこの場に立っていないだろう。
「ああ……手加減はしないで挑んだんだけどな……」
「そうしてくれたならありがたいよ。手加減は義を欠く行為だから」
確かに相手に手加減をするというのは失礼な行為だろう。
彼女はどうやら武人の如き考えを持っているらしい。
父さんに武道を叩き込まれた俺としても彼女の考え方は頷けるものがある。
「ところで……2回体勢を崩したけど2回目は演技だったの?」
「うん。まさか引っかかるなんてね……もう少し警戒しないと」
「うっ……」
窘められ、自省した。
確かに2回も体勢を崩すなんて同じミスをするとは思えない。
後になってから冷静に考えるとあの時もう少し警戒するべきだった、と反省点が次々と出てくる。
「でも久々に強い相手と戦えて楽しかった」
「そうなの?」
「うん。お姉ちゃんは普段紙越町に行ってるし、七菜ちゃんは近距離の戦いはできないし、お婆ちゃんは薙刀を振れるって言っても戦えるほどじゃないし、お母さんは薙刀に興味がないみたいだから……あまり他の人と戦う機会がないんだ」
そうだったのか。俺は端に置かれた打ち込み台をちらりと見る。
色褪せ、ほつれ、汚れが目立ち、金属部分は錆びており、紐は切れかけている。
それを見るだけで彼女が普段から1人でどれだけ練習をしているのかが判った。
「お陰でいい練習になったよ。もう1回……お願いできるかな」
「俺でよければ」
──もう1回と言いつつも何回も彼女の稽古に付き合わされ、俺が解放されたのは3時間後だった。
普段一人稽古をしていたので相手と戦えることが嬉しかったのだろう。
トイレに行くだけだったはずがまさか3時間も稽古に付き合うことになるとは思いもしなかった。全身の筋肉が悲鳴を上げ、身体が鉛を引きずっているかの様に重い。
けれど最初は無愛想だった彼女の表情が徐々に柔らかくなっていったことを考えるとそんな疲弊も良いものだと思えた。
「ふぅ~……疲れた……」
俺は部屋まで重い身体を引きずって辿り着く。
障子を開けると部屋にいた全員の視線が俺に集中する。
それもそうだろう。トイレに行くと言って3時間も帰ってこなかったのだから。
「あれ、ヤマト。随分遅かったね」
「ああうん。トイレの後にちょっと蒼と模擬試合をしてたんだ」
俺は3時間帰ってこなかった理由を話す。
「蒼?あら、呼び捨て?仲良くなったの」
「まあね」
「えー、ズルい!あたしもアオと仲良くしーたーいー!」
レイはそう言うが彼女ならば(無理やり)仲良くなれるだろう。蒼は彼女の右隣にいる渚と「人と群れない」という雰囲気は似ているのだから。
俺たちはその後夕食の準備が出来上がると食卓へと向かった。
「はああっ!」
先に刃を振るったのは蒼だった。
彼女は威勢のよい声と共に薙刀の先で俺の脇差を握る手へと鋭い刺突をする。
咄嗟に刃の側面でそれを受け止め、彼女の刺突を流す。
「おっと……」
いきなり自身の攻撃を流された彼女はその場で体勢を崩しかけるが勢いよく身体を引いて体勢を整える。
しかし体勢を崩したことで生まれた僅かな隙を見逃さずに俺はまだ体勢を完全を整え切れていない彼女へと水平に刃を振るう。
「くっ……」
振るわれた刃が自身へと到達する前に彼女は薙刀の柄で受け止める。
そして俺の刃を押し返し、体勢を完全に整えた彼女は自身の持つ得物を上から下へと勢いよく振り下ろした。
「はっ!」
(重い……っ!)
柄を握る右手とは別に左手で鞘の先を握り、彼女の一撃を受け止める。
その一撃は少女のものとは思えないほどに洗練されていて鋭い。受け止めた瞬間に両腕が麻痺しそうなくらいの衝撃が走る。
俺はバックステップで彼女の一撃から逃れる。このまま受け止めていては俺の掌から力が抜けてしまう。それくらいに重たく、且つ鋭く洗練された一撃だった。
「逃がさないっ!」
後ろに退いた俺へと流れる様に刺突する。
どうやら彼女は刺突が得意な様で目で捉えるのは困難なくらいの速さでそれは繰り出される。
脇差を構え、再び彼女の突きを流す。
「……っと」
(貰ったっ!)
薙刀による突きを流された彼女は体勢を崩す。
俺は彼女に一撃を与える絶好の機会だと思い、脇差を彼女の懐へと滑り込ませる。
けれど──
「甘いっ!」
「なっ……」
彼女は咄嗟に体勢を立て直し、振るった脇差を半身を傾けて回避する。
そして俺の首筋へと薙刀の刃を触れさせる。
「はぁ……はぁ……あたしの勝ち、だね」
肩で息を整えながら彼女は構えを解く。
俺は薙刀の触れた自身の首筋へと手を伸ばした。
木のひんやりとした感触が肌に残っている。
もし彼女の刃が本物だったならば今俺はこの場に立っていないだろう。
「ああ……手加減はしないで挑んだんだけどな……」
「そうしてくれたならありがたいよ。手加減は義を欠く行為だから」
確かに相手に手加減をするというのは失礼な行為だろう。
彼女はどうやら武人の如き考えを持っているらしい。
父さんに武道を叩き込まれた俺としても彼女の考え方は頷けるものがある。
「ところで……2回体勢を崩したけど2回目は演技だったの?」
「うん。まさか引っかかるなんてね……もう少し警戒しないと」
「うっ……」
窘められ、自省した。
確かに2回も体勢を崩すなんて同じミスをするとは思えない。
後になってから冷静に考えるとあの時もう少し警戒するべきだった、と反省点が次々と出てくる。
「でも久々に強い相手と戦えて楽しかった」
「そうなの?」
「うん。お姉ちゃんは普段紙越町に行ってるし、七菜ちゃんは近距離の戦いはできないし、お婆ちゃんは薙刀を振れるって言っても戦えるほどじゃないし、お母さんは薙刀に興味がないみたいだから……あまり他の人と戦う機会がないんだ」
そうだったのか。俺は端に置かれた打ち込み台をちらりと見る。
色褪せ、ほつれ、汚れが目立ち、金属部分は錆びており、紐は切れかけている。
それを見るだけで彼女が普段から1人でどれだけ練習をしているのかが判った。
「お陰でいい練習になったよ。もう1回……お願いできるかな」
「俺でよければ」
──もう1回と言いつつも何回も彼女の稽古に付き合わされ、俺が解放されたのは3時間後だった。
普段一人稽古をしていたので相手と戦えることが嬉しかったのだろう。
トイレに行くだけだったはずがまさか3時間も稽古に付き合うことになるとは思いもしなかった。全身の筋肉が悲鳴を上げ、身体が鉛を引きずっているかの様に重い。
けれど最初は無愛想だった彼女の表情が徐々に柔らかくなっていったことを考えるとそんな疲弊も良いものだと思えた。
「ふぅ~……疲れた……」
俺は部屋まで重い身体を引きずって辿り着く。
障子を開けると部屋にいた全員の視線が俺に集中する。
それもそうだろう。トイレに行くと言って3時間も帰ってこなかったのだから。
「あれ、ヤマト。随分遅かったね」
「ああうん。トイレの後にちょっと蒼と模擬試合をしてたんだ」
俺は3時間帰ってこなかった理由を話す。
「蒼?あら、呼び捨て?仲良くなったの」
「まあね」
「えー、ズルい!あたしもアオと仲良くしーたーいー!」
レイはそう言うが彼女ならば(無理やり)仲良くなれるだろう。蒼は彼女の右隣にいる渚と「人と群れない」という雰囲気は似ているのだから。
俺たちはその後夕食の準備が出来上がると食卓へと向かった。
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