ヴァイオレント・ノクターン

乃寅

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兵革の五月[May of Struggle]

Mission18 反撃開始⑦

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それは凛華だった。
彼女は震える手でサーベルを握ると切っ先を二人に向ける。

「……随分とボロボロだけれど、そんな状態で僕たちとり合うつもりかい?」
「無理だろうよ──」

速水沙々は俺たち同様に満身創痍である凛華に対して思わず構えを解いてしまった。
相手は戦えるほどの体力はなく、いつでも倒せる……そう思っていたのだろう。
しかしそれは彼女にとって大きな誤算だった。

「!」

凛華は目の前に立ち塞がる志熊を無視して、素早く地を蹴ると手に持ったサーベルで油断しきっていた彼女を刺突した。
その素早さに思わず瞬間移動でもしたのかと勘違いしてしまいそうになった。

「お前……っ!」

油断していた速水沙々はマチェットで受け止めるがその表情には余裕がない。
辛うじて受け止められたといった感じだ。

(こいつ……奇妙な服にダメージを吸収されたとはいえ、オレの一撃を喰らってここまで動けるなんて……!)

しかもサイボーグ化されていて常人以上の膂力を持つ彼女を僅かながら押している。
それもサーベルの先端で、だ。

(こんなボロボロで沙々ちゃんの攻撃を受け止めるなんて……まさか──)
「君が……“神殺しの少女”なのか!」

志熊は速水沙々に加勢する様に素早く駆けると手に持った剣を凛華へと向けて振るった。
彼女はサーベルで速水沙々を押し切ってバランスを崩させると志熊の剣を受け止めた。
押し切ってから受け止めるまでの動作は僅か0.7秒、その素早い動作に俺たちは思わず感心してしまった。

(普通の女の子と変わらないくらいに細い腕なのに彼女の一撃を刺突で受け止めるなんて……とても人間業じゃない)
「神殺しの少女だァ?まさかこんなところで戦えるなんてな!チップ持ちと戦いたくはあったけど……チカラを使えないンじゃあ仕方ねえ」

体勢を整えると速水沙々はマチェットを構え直し、凛華の目へと向ける。

神殺しの少女オマエを殺してから他の連中を皆殺しにしてやるよ!」
「まずいわね……いくら彼女が強くても隊長格の戦闘員二人を相手にできるわけが……」
「ああ……判ってる……!」

俺は攻撃を喰らって痛む身体を無理やり動かそうとする。
けれど──

「──ぁああッ……!」

やられた際に思っている以上にダメージを負ったらしく立ち上がろうとしただけでも激痛が全身に電流の如く流れた。
立ち上がろうとした俺はそれに耐えきれずにその場に崩れる。

〈東条君!大丈夫か!?〉
「……いや、結構キツい……」

けど、と続ける。

「ここで立ち上がらないわけにはいかないからね……っ!」

動かす度にギシギシという軋む様な音が聞こえてきそうな身体を無理やり動かし、俺は立ち上がる。

「おっ?立ち上がったか、まぁそう簡単に死ぬ奴じゃねえとは思ってたけどな」

速水沙々は凛華と刃を交えながら立ち上がった俺の方を見る。
彼女は凛華の隙を狙って彼女との剣戟を中断すると俺の方へと駆けてくる。

「ほら、武器を取って戦い合おうぜ!」
「言われ……なくても……!」

無理にでも動かしたら折れそうな腕を上げて、脇差を握る。
そして彼女の一撃を受け止める。

「ぐ……っ」

思わず腕が痛む。
けれど彼女の膂力が神速とも言える速度で強化されたその一撃は受け止めずにまともに喰らったらどうなるか想像に難くない。
痛んだとしても受け止める他ないのだ。

「ほらほら、こんなもんで倒れンなよっ?」

速水沙々は遠慮なく第二の攻撃を俺へと振るう。
俺は腕を動かして脇差で受け止める。

「っ……!」

最初の一撃に比べて威力は落ちているがそれでも受け止めた衝撃が腕に激痛となって襲う。
あまりの痛さにこの場で意識を手放して楽になりたいくらいだったがそういうわけにもいかない。
俺は受け止めた直後に脇差を彼女へと振るった。

「はぁっ!」
「へぇ、お前まだ動けるのか」

大したもんだぜ、とひらりと回避し、そう称賛した。
そして直後に彼女は得物を大きく振るった。

「──っと……!」

しかしそれは遠方から放たれた一発の銃弾によって遮られた。
七菜さんだ。彼女が狙撃で彼女の攻撃を止めさせたのだ。
彼女のお陰で数瞬の隙が生まれた。

(チャンス──!)

俺はその僅かな好機へと狼の如く食らい付き、脇差を振るった。
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