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兵革の五月[May of Struggle]
Mission19 反撃完了①
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──乾いた音が峠道に響く。
闇夜を切り裂く銃火は回っていたタイヤを貫く。
「!ぬぅ……!?」
バイクは走行することを遮られ、勢いよく転がる。
それと同時に男の躯体も宙に放り出される。
「……ふぅ」
助手席に座る彼女は一息つく。
「流石だ、文香」
柚はそんな彼女を称賛すると道路に叩きつけられた男の近くに車を停める。
そして全員が車から降りると倒れた男の元へ歩み寄る。
「ぐ……っ、ここまでか……」
非常識とも言える凄まじい速度で走っていたバイクから勢いよく叩きつけられた男だが辛うじて意識を保っていた。
破落戸とはいえ、組織の領袖だ。受け身の訓練でも受けていて、咄嗟に受け身でも取ったのだろう。肉体へのダメージを最小限に済ませるために。
「ええ。その通りよ。両家の和平を台無しにしてくれた罪……償ってもらうわ」
文香は拳銃を取り出すとボスである男のこめかみへと狙いを定める。
その指はトリガーにかけられている。あとは引けばこの男の命を奪うことができる。
しかし「待て」と制止する人間がいた。湖城柚だ。
「……この男にはウタってもらう予定だっただろう。それに拳銃では一発で楽にしてしまう。こいつにはそんな死は許されない」
彼女の言葉に文香は「それもそうね」と言って拳銃を下げた。
柚は男の顔の近くにしゃがむと問うた。
「貴様には知っている情報を全て吐いてもらう」
「ふっ……まぁ、当然だろうな。いいだろう。それでなにを知りたい?」
男はそう余裕のある風を装い、言った。
(こいつ……この余裕はなんだ?なにか隠している……?)
全身をコンクリートに打ち付け、先ほどまで痛がっていて呼吸も荒かったのに落ち着くのがやけに早いと不審に思いつつも柚は彼に問うた。
「貴様らに襲撃を依頼した人物とは誰だ?」
「……“ゼロ”」
「ゼロだと……?」
恐らく、というか確実に実名ではない暗号名だろう。
「おっと、俺に聞かれてもゼロという人物についてはなにも知らない……」
「はぁ?知らないわけがない……拷問でもなんでもして無理やり吐かせるか──」
仕込み刀である杖を取り出す環だが柚が手で制止する。
「──いや、こいつは嘘を吐いていない。拷問をしても無駄だろう」
「ああ……本当にゼロに関してはなにも知らない。性別も年齢も国籍も……全てな」
「情報がない……まさに“ゼロ”ね」
柚の後ろで文香がそう言った。
この男を捕らえれば破落戸たちに両家襲撃を依頼した人物が判ると思っていた皆は思わず落胆してしまう。
「……ゼロは俺たちマフィアと両家に不満を持っていた人間たちで連合を組ませ、襲撃する様に言ってきた。俺たちの引き受けてきた依頼の中でも報酬の金の額は最も多かった」
「両家に不満……」
その言葉に男を除くその場にいる全員の胸がちくりとした。
町民の不和にまで発展してしまった両家の二世紀に及ぶ不和、その当事者たちである彼らには耳の痛い話だ。
「奴は大量の銃器まで用意してくれた……そのお陰であんな感じにチンピラ風情の連中でも銃を持つことができたというわけだ」
「なるほどな……」
「これで知りたいことは全て話したか?じゃあ、俺は──逝かせてもらう」
男はにやりと不敵な笑みを浮かべる。
「逝かせて……?……まさか!」
文香はこれから男がしようとしていることに気付き、彼の胸倉を掴む。
しかし時すでに遅し、男は奥歯に仕込んだものを噛んだ。
「あ……が……ッ」
それと同時に男は苦しみ出す。
全身が痙攣し、呼吸を確保するために両手を喉元へとやる。
「ど、どうしたの……っ!?」
「……毒よ。奥歯に仕込んでたみたい。ワタシたちに捕まることを恐れて自決したのね……」
文香は胸倉を掴む手を緩め、そのまま立ち上がる。
男はしばらくの間苦しみ、やがて燻る炎の様に静かになった。
「死んだ……」
「……大した情報も得られなかったな。それにこんな幕切れというのは不愉快だな……」
柚は男の亡骸を見下ろし、そう呟いた。
「とりあえず色々としなくてはいけないことができてしまったな。私と文香はここに残る。父さんたちは警察なりイージスなり呼んでくれ。あと……蒼と環」
「「?」」
「あとのことは大人に任せてくれ。もう日付も変わった。家でゆっくり休んでいてくれ」
「……判った」「了解」
二人はそう短く答えると車に乗り込み、基綱の運転する車でそれぞれの家に戻った。
闇夜を切り裂く銃火は回っていたタイヤを貫く。
「!ぬぅ……!?」
バイクは走行することを遮られ、勢いよく転がる。
それと同時に男の躯体も宙に放り出される。
「……ふぅ」
助手席に座る彼女は一息つく。
「流石だ、文香」
柚はそんな彼女を称賛すると道路に叩きつけられた男の近くに車を停める。
そして全員が車から降りると倒れた男の元へ歩み寄る。
「ぐ……っ、ここまでか……」
非常識とも言える凄まじい速度で走っていたバイクから勢いよく叩きつけられた男だが辛うじて意識を保っていた。
破落戸とはいえ、組織の領袖だ。受け身の訓練でも受けていて、咄嗟に受け身でも取ったのだろう。肉体へのダメージを最小限に済ませるために。
「ええ。その通りよ。両家の和平を台無しにしてくれた罪……償ってもらうわ」
文香は拳銃を取り出すとボスである男のこめかみへと狙いを定める。
その指はトリガーにかけられている。あとは引けばこの男の命を奪うことができる。
しかし「待て」と制止する人間がいた。湖城柚だ。
「……この男にはウタってもらう予定だっただろう。それに拳銃では一発で楽にしてしまう。こいつにはそんな死は許されない」
彼女の言葉に文香は「それもそうね」と言って拳銃を下げた。
柚は男の顔の近くにしゃがむと問うた。
「貴様には知っている情報を全て吐いてもらう」
「ふっ……まぁ、当然だろうな。いいだろう。それでなにを知りたい?」
男はそう余裕のある風を装い、言った。
(こいつ……この余裕はなんだ?なにか隠している……?)
全身をコンクリートに打ち付け、先ほどまで痛がっていて呼吸も荒かったのに落ち着くのがやけに早いと不審に思いつつも柚は彼に問うた。
「貴様らに襲撃を依頼した人物とは誰だ?」
「……“ゼロ”」
「ゼロだと……?」
恐らく、というか確実に実名ではない暗号名だろう。
「おっと、俺に聞かれてもゼロという人物についてはなにも知らない……」
「はぁ?知らないわけがない……拷問でもなんでもして無理やり吐かせるか──」
仕込み刀である杖を取り出す環だが柚が手で制止する。
「──いや、こいつは嘘を吐いていない。拷問をしても無駄だろう」
「ああ……本当にゼロに関してはなにも知らない。性別も年齢も国籍も……全てな」
「情報がない……まさに“ゼロ”ね」
柚の後ろで文香がそう言った。
この男を捕らえれば破落戸たちに両家襲撃を依頼した人物が判ると思っていた皆は思わず落胆してしまう。
「……ゼロは俺たちマフィアと両家に不満を持っていた人間たちで連合を組ませ、襲撃する様に言ってきた。俺たちの引き受けてきた依頼の中でも報酬の金の額は最も多かった」
「両家に不満……」
その言葉に男を除くその場にいる全員の胸がちくりとした。
町民の不和にまで発展してしまった両家の二世紀に及ぶ不和、その当事者たちである彼らには耳の痛い話だ。
「奴は大量の銃器まで用意してくれた……そのお陰であんな感じにチンピラ風情の連中でも銃を持つことができたというわけだ」
「なるほどな……」
「これで知りたいことは全て話したか?じゃあ、俺は──逝かせてもらう」
男はにやりと不敵な笑みを浮かべる。
「逝かせて……?……まさか!」
文香はこれから男がしようとしていることに気付き、彼の胸倉を掴む。
しかし時すでに遅し、男は奥歯に仕込んだものを噛んだ。
「あ……が……ッ」
それと同時に男は苦しみ出す。
全身が痙攣し、呼吸を確保するために両手を喉元へとやる。
「ど、どうしたの……っ!?」
「……毒よ。奥歯に仕込んでたみたい。ワタシたちに捕まることを恐れて自決したのね……」
文香は胸倉を掴む手を緩め、そのまま立ち上がる。
男はしばらくの間苦しみ、やがて燻る炎の様に静かになった。
「死んだ……」
「……大した情報も得られなかったな。それにこんな幕切れというのは不愉快だな……」
柚は男の亡骸を見下ろし、そう呟いた。
「とりあえず色々としなくてはいけないことができてしまったな。私と文香はここに残る。父さんたちは警察なりイージスなり呼んでくれ。あと……蒼と環」
「「?」」
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