守りたい、君のこと

第7話「ユズホの盾」

放課後の渡り廊下は、
夕日でオレンジ色に染まっていた。
その温かい光が校舎の壁に反射し、
影を長く落としている。
俺は少し離れたところから、
ユズホの方を見ていた。
休み時間が終わり、
他の生徒たちは教室に戻っていく。
ユズホは一人、少し肩をすくめて立っている。

――あれ？なんで一人なんだ。

直感的に嫌な予感が胸をよぎる。
その瞬間、廊下の端から
二人の男子が近づいてくるのが見えた。
A組の佐藤と山内。
面白い噂を聞いたらすぐネタにする二人だ。

「おっ、噂の加西さんじゃないですか～」
「あれ、放課後まで一人でいるなんて珍しいな」

俺はすぐにユズホと彼らの間に立った。
「やめろ、加西に触れるな」
冷静に声を出しながら、
ユズホとの距離をさりげなく保つ。
ユズホは目を大きく開き、少し怯えている。

――守らなきゃ。

すると、アオイがすっと隣に立ち、
ケンジも続いた。二人の視線は鋭く、
男子たちを射抜くようだ。

「おい、佐藤と山内。何をしてるんだ」

アオイの声には、
軽く怒りを含んだ強さがある。

「加西に軽く手を出すとか、何考えてんだお前ら！」

ケンジも続ける。

男子たちは最初は強気だったが、
三人の圧に徐々に押されて後ずさる。

「いや、ちょっと冗談のつもりで…」

「ふざけるな、ノリで加西に触れるんじゃない」

俺は声を強めず、
でも毅然とした態度で言い放つ。

ユズホは最初こそ驚いていたが、
ケンジが堂々と守ってくれるのを見て、
少しずつ表情が和らいでいく。

休み時間が終わりに近づき、
男子たちが「ちっ」と舌打ちしながら
自分の教室へ戻っていく。
残されたのはユズホと、
盾のように前に立っていた
ユアト・ケンジ・アオイの3人。

ユズホはまだ顔を伏せたまま、
震えそうな声で――

ユズホ「……ありがと、3人とも」

少し間を置いて顔を上げる。
そこにはいつもと違う表情。
怯えと安心の混じったような、
涙をこらえた笑顔だった。

ケンジは頭をかきながら照れ隠し。

ケンジ「……ったくよ、
見てらんねぇだけだっての」

アオイは優しく肩を叩き、

アオイ「加西さんは私たちの仲間だから。
そんな顔する必要ないよ」

ユアトは冷静な表情を崩さず、
だけどほんの少しだけ柔らかい声で。

ユアト「気にするな。……俺たちがいる」

その一言に、ユズホの心は大きく揺さぶられる。

チャイムが鳴り、
何事もなかったかのようにみんな席へ。
だけど、ユズホの胸の奥には――
（あれだけ嫌だったケンジも、
優しいアオイも、そして……ユアトも。
みんな、本当に……守ってくれたんだ）

小さな決意の芽が、
ユズホの心の中に静かに芽吹いていた。

そしてユズホは、
笑顔で「ありがとう」と言った。
それだけで、
すべてが報われた気がした。

夕日の校舎を後にしながら、
俺は心の中で誓った。
――どんな噂も、
どんな危険も、俺たち三人で守る。
ユズホ、ユアト、アオイ、ケンジは、
4人で仲良く笑いながら下校した。

俺は決めた。
ユズホが安心して笑えるその瞬間まで、
絶対に。