あの日、好きになったのは君でした

SNOW❄️

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第4章 たった数秒の奇跡

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6月の終わり、空気にどこか
湿気が混じり始めた昼休み。
翌日は期末テスト。
教室の空気は、
少しだけピリついていた。

俺は、勉強に集中してるフリをしながら、
心は別のところにいた。

――また、会えない。

体育祭のあの日から、
もう何日が経った?
実習でも授業でも、
どこかで会えるはずって
期待してたのに、
一度も視界に入らなかった。

「もう、忘れられたのかな……」

そんな不安が胸を締めつける中、
俺はなんとなく、
理由もなく、廊下の方を見た。

その瞬間だった。

廊下の向こう側。
数人の友達と並んで歩く、
一人の女子生徒。

――鈴本…ハルカ。

「……っ!」

心臓が跳ねた。
手が震えるほど、嬉しかった。

目が合った、ような気がした。
いや、きっと合ってない。
でも、それでも良かった。

その一瞬で、
俺の心は溢れそうだった。

「久しぶりに見た」
「元気そうだった」
「笑ってた…ような気がした」

――ただ、それだけで嬉しかった。
廊下を過ぎ去っていく彼女の後ろ姿が、
小さくなっていくのを見ながら、
俺は思った。

「……もっと、早く気づいてくれたら……
少しでも、近づけたのに」

嬉しさと、切なさと、悔しさが
全部一緒に押し寄せてきた。

教室に戻って、机に座る。
誰にも気づかれないように、
そっとため息をついた。

見れただけで、こんなに嬉しいのに。
見れただけで、こんなに苦しいのに。

ハルカは気づいていない――
俺が、あの日のダンスのことを、
今でも心に抱えていることを。

だけど、それでも今日は少しだけ…
“前に進んだ気がした”。

「明日からテストか……でも、
今日の記憶だけで、頑張れそうだな」

窓の外では、夏の風がそっと吹いていた。
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