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番外編第4話 変わらない人
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「あの……先輩。」
声をかけるとき、指先が震えていた。
視線を合わせるのが、怖かった。
だけど、少しでもちゃんと
顔を見なきゃいけない気がした。
ずっと逃げてばかりだったから。
先輩は、私のほうを振り返った。
変わらない表情で、
いつも通りの優しい目をしていた。
……少しだけ、ほっとした。
「この前……私、
ちゃんとお返事できなくて、ごめんなさい。」
言葉にするたび、胸の奥がつかえる。
あの夏休みも、休みが終わってからも、
毎日思っていた。
「もうちゃんと伝えなきゃ」って。
でも、いざ目の前に立つと、
全部消えてしまう。
「……でも、あのとき、すごく嬉しかったです。」
小さな声でやっと伝えた。
先輩は驚いたみたいに目を丸くして、
すぐに、少し照れたように笑った。
「そっか。……ありがとう。」
その言い方が、なんだか懐かしかった。
体育祭のときも、ダンスの練習のときも、
私が言葉に詰まるたびに、
こうやって優しく笑ってくれた。
「私……まだ全部答えられる勇気がないです。
でも……これからも、
話してもらえたら嬉しいです。」
言えた。
ほんの少し、心の中の重たいものが
剥がれ落ちるような感覚がした。
先輩は少し俯いて、
それからゆっくり私を見た。
「……ずっと待ってるから。」
その言葉が、どんなにあたたかかったか。
きっとこれからも、
何度も思い出すと思う。
胸がいっぱいになって、
何も言えなくなった。
でも、泣きそうになっても、
今度は目をそらさなかった。
ちゃんと先輩の目を見ていた。
こんなにまっすぐに自分を大事にしてくれる人は、
他にいない気がした。
もしもいつか、
この人を好きだとちゃんと認められたら。
そのときは――
今度こそ、はっきり伝えたい。
「私も、ずっと……」って。
だけど今日は、
まだその先の言葉は胸の中にとっておく。
少しずつでいいと思った。
焦らなくていいって、
教えてもらえたから。
一歩ずつでも、
いつか同じ気持ちで隣に立てたらいい。
そう思いながら、
ゆっくりお辞儀をした。
あの日、怖くて言えなかった「ありがとう」を、
今度は心の中で繰り返しながら。
私は、今日、初めて恋をしました。
声をかけるとき、指先が震えていた。
視線を合わせるのが、怖かった。
だけど、少しでもちゃんと
顔を見なきゃいけない気がした。
ずっと逃げてばかりだったから。
先輩は、私のほうを振り返った。
変わらない表情で、
いつも通りの優しい目をしていた。
……少しだけ、ほっとした。
「この前……私、
ちゃんとお返事できなくて、ごめんなさい。」
言葉にするたび、胸の奥がつかえる。
あの夏休みも、休みが終わってからも、
毎日思っていた。
「もうちゃんと伝えなきゃ」って。
でも、いざ目の前に立つと、
全部消えてしまう。
「……でも、あのとき、すごく嬉しかったです。」
小さな声でやっと伝えた。
先輩は驚いたみたいに目を丸くして、
すぐに、少し照れたように笑った。
「そっか。……ありがとう。」
その言い方が、なんだか懐かしかった。
体育祭のときも、ダンスの練習のときも、
私が言葉に詰まるたびに、
こうやって優しく笑ってくれた。
「私……まだ全部答えられる勇気がないです。
でも……これからも、
話してもらえたら嬉しいです。」
言えた。
ほんの少し、心の中の重たいものが
剥がれ落ちるような感覚がした。
先輩は少し俯いて、
それからゆっくり私を見た。
「……ずっと待ってるから。」
その言葉が、どんなにあたたかかったか。
きっとこれからも、
何度も思い出すと思う。
胸がいっぱいになって、
何も言えなくなった。
でも、泣きそうになっても、
今度は目をそらさなかった。
ちゃんと先輩の目を見ていた。
こんなにまっすぐに自分を大事にしてくれる人は、
他にいない気がした。
もしもいつか、
この人を好きだとちゃんと認められたら。
そのときは――
今度こそ、はっきり伝えたい。
「私も、ずっと……」って。
だけど今日は、
まだその先の言葉は胸の中にとっておく。
少しずつでいいと思った。
焦らなくていいって、
教えてもらえたから。
一歩ずつでも、
いつか同じ気持ちで隣に立てたらいい。
そう思いながら、
ゆっくりお辞儀をした。
あの日、怖くて言えなかった「ありがとう」を、
今度は心の中で繰り返しながら。
私は、今日、初めて恋をしました。
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