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サツキさんという人①
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【side アオ】
死神の移動手段は、ローブを纏い遠くに飛ぶ。
もしくは、ローブを脱いでただの黒づくめの人間のように、街を歩く。
ローブを纏って空を飛べるならそれでも良いが、空は飛べない。遠くに飛ぶしかできない中途半端な力。
着地点を見定めないと、大事故が起きる。
それは物理的な事故もそうだし、人の目に触れる事故も。
空からローブの男が落ちてきたら、それは大事件だ。
暑いし、中途半端なローブの力。
それからこの斧は実は折り畳み式で、人間界で持ち運びしやすいように工夫されている。それをローブに包んで、鞄に押し込む。
こんなものが見つかったら銃刀法違反だ。
とか言って。
実際どんな事故が起こっても、何とかなる死神の世界の力、なんてのがある。いざとなれば何とかなる。
が、報告書の量がやばい。
事故が重大であればあるほど、報告書がエグいことになって。それから、処分を受けることもある。
まぁ、どんな事故が起きたらどんな処分とか、昔学校でやったけど、まぁ忘れた。
真夏の雑踏に紛れて、街を歩く。
この世にどれだけの死神が溢れてるのか。
俺は知らない。
でも今すれ違った黒づくめは、死神。
仕事帰りやろか。
「ようそんなに殺さなあかん人がおるなぁ」
思わず呟いて、周りを見渡す。
人を殺すとか。殺してきたとか。
そんなの聞かれていたらそれもまた事件で。
ピッとICをかざして電車に乗り込む。
前はひと飛びレベルの距離で済んだのに。
最近は担当範囲が広がった。
現場で働く死神が減っているようだと、本部が言っていた。
終電が近い電車。
空いた電車内の、椅子の端に腰掛ける。
疲労と、少しの酔いで、心地よく眠りたい。
電車に揺れに頭がクラクラして、目を瞑った。
どのくらい乗っていたか、意識がふと消え入りそうになった時、「やぁだぁ~」「なんでやぁー!」と男女の大きな声に、その意識を無理やり引き戻された。
最高に心地悪い。
眉間に皺を寄せてうっすら目を開けると、目の前に黒づくめの男女が座っていた。
派手に茶色い髪を巻いて、黒いミニスカートから伸びる細い足もまた、黒いタイツで覆われている。真っ赤な口紅が気持ち悪いほどに浮かび上がる。
その隣にいる、金髪の髪をした黒づくめ。
うっすら開けた目に、その男の切長の奥の瞳が、突き刺さった。予想通りの展開に俺は、眉をひそめながら思わず頬を緩めた。でもそれを悟られまいと、モゴモゴと唇を噛む。
「サツキ先輩本当おもしろーい、ねぇこの後部屋飲みしよ?」
「んや、仕事後は勘弁、このまま帰らしてや」
「えーーーつまんなぁい」
「また今度なぁーマジ年取るとしんどいでぇ?」
デカイ声が、頭にガンガン響く。
これは酒のせいではなくて。
サツキさんのせい。
マジでうるさい。
サツキさんのせい。
死神の移動手段は、ローブを纏い遠くに飛ぶ。
もしくは、ローブを脱いでただの黒づくめの人間のように、街を歩く。
ローブを纏って空を飛べるならそれでも良いが、空は飛べない。遠くに飛ぶしかできない中途半端な力。
着地点を見定めないと、大事故が起きる。
それは物理的な事故もそうだし、人の目に触れる事故も。
空からローブの男が落ちてきたら、それは大事件だ。
暑いし、中途半端なローブの力。
それからこの斧は実は折り畳み式で、人間界で持ち運びしやすいように工夫されている。それをローブに包んで、鞄に押し込む。
こんなものが見つかったら銃刀法違反だ。
とか言って。
実際どんな事故が起こっても、何とかなる死神の世界の力、なんてのがある。いざとなれば何とかなる。
が、報告書の量がやばい。
事故が重大であればあるほど、報告書がエグいことになって。それから、処分を受けることもある。
まぁ、どんな事故が起きたらどんな処分とか、昔学校でやったけど、まぁ忘れた。
真夏の雑踏に紛れて、街を歩く。
この世にどれだけの死神が溢れてるのか。
俺は知らない。
でも今すれ違った黒づくめは、死神。
仕事帰りやろか。
「ようそんなに殺さなあかん人がおるなぁ」
思わず呟いて、周りを見渡す。
人を殺すとか。殺してきたとか。
そんなの聞かれていたらそれもまた事件で。
ピッとICをかざして電車に乗り込む。
前はひと飛びレベルの距離で済んだのに。
最近は担当範囲が広がった。
現場で働く死神が減っているようだと、本部が言っていた。
終電が近い電車。
空いた電車内の、椅子の端に腰掛ける。
疲労と、少しの酔いで、心地よく眠りたい。
電車に揺れに頭がクラクラして、目を瞑った。
どのくらい乗っていたか、意識がふと消え入りそうになった時、「やぁだぁ~」「なんでやぁー!」と男女の大きな声に、その意識を無理やり引き戻された。
最高に心地悪い。
眉間に皺を寄せてうっすら目を開けると、目の前に黒づくめの男女が座っていた。
派手に茶色い髪を巻いて、黒いミニスカートから伸びる細い足もまた、黒いタイツで覆われている。真っ赤な口紅が気持ち悪いほどに浮かび上がる。
その隣にいる、金髪の髪をした黒づくめ。
うっすら開けた目に、その男の切長の奥の瞳が、突き刺さった。予想通りの展開に俺は、眉をひそめながら思わず頬を緩めた。でもそれを悟られまいと、モゴモゴと唇を噛む。
「サツキ先輩本当おもしろーい、ねぇこの後部屋飲みしよ?」
「んや、仕事後は勘弁、このまま帰らしてや」
「えーーーつまんなぁい」
「また今度なぁーマジ年取るとしんどいでぇ?」
デカイ声が、頭にガンガン響く。
これは酒のせいではなくて。
サツキさんのせい。
マジでうるさい。
サツキさんのせい。
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