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サツキさんという人②
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【side アオ】
結局眉間に皺を寄せたまま寝たふりをして、目的地でそそくさと電車を降りた。
しかし残念ながらその目的地は同じで。
俺が歩く後ろから、キャッキャ騒ぐ声が聞こえる。
まじでうるせぇ。
心の中で盛大に叫びながら。
足早に駅前に立つタワーマンションへと入った。
エントランスを入るとそこは、一見普通の高級マンションで。一見、普通の人たちが出入りする。
しかし専用のキーをかざすと開く扉の中には、異世界が広がる。
談話室には大きな液晶パネルがあり、『今日の死亡予定者数』『現在の死亡者数』がリアルタイムで更新されている。また、『死神ニュース42』という死神界の情報が流れ続けている。
『死神学研究所では、死の直前にもつ感情で想起する走馬灯の変化についての研究を、進めています』
『今日のおしゃれスタイル、流行りは小型の鎌!大きな鎌はもう古い!?』
真面目なニュースから死神コスチュームのトレンドまで。幅広く情報をこの世界に流してくれる。
談話室を抜けると死神グッズの専門店があって。基本セットは支給されるが、好みに合わせアップデートする死神も多い。
「お前まだ斧なん?」
突然耳元で声がして、「おわっ!!」と飛び跳ねた。
「サツキさん……なんすか!」
いつの間に背後にいたのかサツキさんがすぐ隣にいて、あの派手な口紅の女はいなくなっていた。
「え、女の人は?」
「帰った。今日無理言ったら飛んでったわ」
「へぇ……」
「なぁーだからアオんち行っていい?」
「今日無理なんじゃなかったんすか」
「ええやん」
2人でエレベーターに、乗り込む。
「なぁ、お前もあの流行りの鎌にしたらええやん」
「斧でいいんすよ、恐怖は斧が1番やと思うんすよね」
「あーアオは恐怖型か……」
「研究室もそっちだったんで……」
「あぁ、あの本部の奴もだろ?」
「あーケイ? でもケイは恐怖型がいいとは言ってないっすよ。まぁ、あんまり現場に降りてないからわからんっすけど」
25の数字が表示されて、エレベーターが止まる。当然のように後ろからサツキさんはついてきて、ピッタリと俺の後ろについている。
「本当に来るんすか?」
「ええやろ?」
「……断られる気ぃなさすぎません?」
「アオはそういう奴や」
「意味わからんっすけど」
カードをかざして、キーを開ける。
カチャリと扉を開けて、部屋へ入る。
勝手につく電気。
ガゴンという音を立ててブーツを脱ぎ捨て、部屋に入る。
黒い鞄をドサッとソファに投げた。
後ろからサツキさんも同じように鞄を投げて、ドサリという音とほとんど同時に、俺の視界はくるりと回転した。
部屋の真ん中にある、大きなベッド。
そこに、押し倒されていた。
目の前には、サツキさんの顔。
ジッと見つめられる。
サツキさんの鋭い目。
さっきまで女の子を相手していたヘラヘラした顔じゃない。俺を、突き刺して離さない。
その目はいつも、とんでもなく、哀しい目をしている。
結局眉間に皺を寄せたまま寝たふりをして、目的地でそそくさと電車を降りた。
しかし残念ながらその目的地は同じで。
俺が歩く後ろから、キャッキャ騒ぐ声が聞こえる。
まじでうるせぇ。
心の中で盛大に叫びながら。
足早に駅前に立つタワーマンションへと入った。
エントランスを入るとそこは、一見普通の高級マンションで。一見、普通の人たちが出入りする。
しかし専用のキーをかざすと開く扉の中には、異世界が広がる。
談話室には大きな液晶パネルがあり、『今日の死亡予定者数』『現在の死亡者数』がリアルタイムで更新されている。また、『死神ニュース42』という死神界の情報が流れ続けている。
『死神学研究所では、死の直前にもつ感情で想起する走馬灯の変化についての研究を、進めています』
『今日のおしゃれスタイル、流行りは小型の鎌!大きな鎌はもう古い!?』
真面目なニュースから死神コスチュームのトレンドまで。幅広く情報をこの世界に流してくれる。
談話室を抜けると死神グッズの専門店があって。基本セットは支給されるが、好みに合わせアップデートする死神も多い。
「お前まだ斧なん?」
突然耳元で声がして、「おわっ!!」と飛び跳ねた。
「サツキさん……なんすか!」
いつの間に背後にいたのかサツキさんがすぐ隣にいて、あの派手な口紅の女はいなくなっていた。
「え、女の人は?」
「帰った。今日無理言ったら飛んでったわ」
「へぇ……」
「なぁーだからアオんち行っていい?」
「今日無理なんじゃなかったんすか」
「ええやん」
2人でエレベーターに、乗り込む。
「なぁ、お前もあの流行りの鎌にしたらええやん」
「斧でいいんすよ、恐怖は斧が1番やと思うんすよね」
「あーアオは恐怖型か……」
「研究室もそっちだったんで……」
「あぁ、あの本部の奴もだろ?」
「あーケイ? でもケイは恐怖型がいいとは言ってないっすよ。まぁ、あんまり現場に降りてないからわからんっすけど」
25の数字が表示されて、エレベーターが止まる。当然のように後ろからサツキさんはついてきて、ピッタリと俺の後ろについている。
「本当に来るんすか?」
「ええやろ?」
「……断られる気ぃなさすぎません?」
「アオはそういう奴や」
「意味わからんっすけど」
カードをかざして、キーを開ける。
カチャリと扉を開けて、部屋へ入る。
勝手につく電気。
ガゴンという音を立ててブーツを脱ぎ捨て、部屋に入る。
黒い鞄をドサッとソファに投げた。
後ろからサツキさんも同じように鞄を投げて、ドサリという音とほとんど同時に、俺の視界はくるりと回転した。
部屋の真ん中にある、大きなベッド。
そこに、押し倒されていた。
目の前には、サツキさんの顔。
ジッと見つめられる。
サツキさんの鋭い目。
さっきまで女の子を相手していたヘラヘラした顔じゃない。俺を、突き刺して離さない。
その目はいつも、とんでもなく、哀しい目をしている。
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