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服の中の痛み②
しおりを挟む【side 蓮】
「いってぇぇええっ!!!」
「誰のせいですか!!」
「俺のせいや無いやろ!」
「おまえのせいやろぉぉお! アホかっ!」
膿が溜まってそうな場所に、少しだけメスを入れた。ほんの少し、皮膚を開いただけ。
どんだけ痛みに弱いんだ。
暴れすぎだし、叫びすぎだし。
「麻酔あるって言うたやん!」
「あれは縫合の時ですよ! これは切開排膿! ちょっとしか切っとらんし、麻酔の方が痛いっすよ」
本当はいろんな麻酔の種類もなくはないけれど。
家でやるならまぁいいだろう。麻酔なしでも許されるレベルの、排膿。
ほら、出た。
白い膿が、どろりと出てきた。
「気持ち悪っ」
「アンタのやからね?」
ゆっくりと、排膿して、ガーゼでそれを丁寧に吸い取る。
「あんたさ……」
「蓮」
「は?」
「田中蓮です。蓮」
「蓮……さぁ、医者?」
「はい、まだ新人ですけどね」
「へぇ……」
「アンタは……あー、アオ?」
「うん、アオ……」
「アオ……」
特に言いたいことも聞きたいこともなくて、というか目の前の処置に集中していて、アオ、という名を呟いて、黙った。
まだ赤みはあるが、排膿して少し、腫脹は引いた。それでもまだ赤いし腫れてはいるし痛そうで。
「アオ、これ相当痛かったやろ」
「……まぁ」
「……ズボンも脱いで?」
「また?」
「足も怪我しとったやん」
少し躊躇うアオに、「別に襲わへんで?」なんて冷たく言い放って、「なんやねん……ったく」と言い返されて。
また真っ黒のズボンを脱ぐのを待った。
スルリと肌とズボンが擦れる音がして、ゴクリと、唾液を飲み込んだ。
ずるい。
なんか、ずるい。
綺麗なんだ、アオの白く透き通る肌が。
なんて、変な感情を押し込めて患部である足を見て、俺は目を、疑った。
「アオ……?……これ、……どうしたん?」
「え?」
「こないだ……こんなんなかったやん……」
1週間くらい前。
同じようにズボンを脱いだアオの足は、真っ白な肌にザザーッと擦ったような擦過傷が右大腿から膝にかけてあっただけだった。
今、アオの足には。
治りかけの擦過傷。
大腿に無数の斑点のような内出血。
「アオ……なにがあったん……」
思わず黒いシャツを捲った。
白いカラダにあったのは、1週間前にはなかったはずの、内出血と、何かで引っ掻かれたような傷だった。
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